大人になってからも健康な歯を維持し続けるために大切なこと【新潟市西区 なかじま歯科医院】

歯医者さんが好きという子どもはそう多くない。ましてや一度「痛い、怖い」というイメージを抱いてしまうと、継続的な通院はおろか、検診に行くことさえ嫌がってしまうかもしれない。しかし、将来的に長く歯の健康を維持していくためには、子どものときから定期的に歯科検診を受け、口の中の状態をチェックしていくことが大切だ。そのために、保護者は何をすべきなのか? また、歯科医師側の取り組みにはどんなことがあるだろうか? 新潟市で小児歯科に力を入れつつ、地域の頼れる歯科医院として親しまれている「なかじま歯科医院」の中島院長に話を聞いた。
乳歯の段階でむし歯にならないようしっかり管理
先生は一般歯科のみならず、小児歯科にも大変注力されていると伺いました
当院の周辺はいわゆる新興住宅地です。ファミリー層がたくさん住んでいらっしゃるので、家族で来院されるケースが多く、小児歯科のニーズも高いのです。実際に、お母さんとお子さんで一緒に通ってくださったりすることは多いですね。 小さいときから歯医者を身近に感じていれば、大人になってから歯やお口の健康に敏感になってもらえるでしょうし、そういった意識が歯の健康維持のモチベーションにつながってくれたら、歯科医師としてもうれしいことだと思っています。

来院する子どもさんの年齢層についてはいかがですか?
当院の場合、小学生が多い印象です。むし歯治療で来ることが多く、親御さんからはフッ素塗布をしてほしい、歯並びが気になるので矯正したいという希望も多いですね。
歯医者さんが大好きという子どもさんはあまりいないと思いますが、先生はどう思われますか?
子どもにとって、歯医者は「何をされるかわからない場所」といった感覚があるのではないでしょうか。世の中の情報としても、「歯医者は怖い、痛い」というイメージで刷り込まれていることもあるでしょう。 子どもが歯医者にそういった先入観を抱いてしまうと、それを取り除くのはなかなか大変です。最初から「歯医者さんは怖いところではないよ」という雰囲気づくりをすることは重要だと思います。当院でも「最初は練習」というように、「少しずつ歯医者に慣れていく」ことを重視しています。
親御さんの中には、「どうせ乳歯だから」と、歯医者さんに行くことに積極的でない方もいらっしゃいますか?
少なからずいらっしゃいますね。でも、乳歯の段階でむし歯になってしまうと、永久歯に生え変わっても、むし歯が多くなるというデータがあります。「どうせ生え変わってしまうから」という考え方は非常に危険です。逆にいうと、子どもの頃からむし歯にならないようにしていれば、大人になってからむし歯になるリスクを減らせるということです。幼少期に歯や口腔内の衛生状態をいかによい状態で管理できるかは、将来的に大きな影響を及ぼします。
子どもの歯の健康で、一番気を使うべき時期はいつ頃ですか?
乳歯の生え始めですね。一番むし歯になりやすいのはこの時期です。この頃の歯は石灰化がまだ不十分で硬くなっていないので、細菌に蝕まれやすいのです。 また、生後6歳前後で乳歯の奥に生えてくる永久歯「6歳臼歯」という歯も、非常に虫歯になりやすいとされています。この歯が出てきたら注意が必要ですし、歯医者さんで診てもらうタイミングとしてもよいと思います。
子どもの治療を行なう上で、先生が特に意識されていることは何でしょう?
まず、「泣いたら絶対に治療行為には入らない」ということです。ほとんどの子どもにとって歯医者さんは未知の世界です。見たこともない機械がたくさん並んでいるし、マスクをした知らない人が周りにいる……。彼らから見たら怖くないはずないですよね。 それに、一度恐怖心を抱いてしまったら、それが落ち着くのには相当の時間がかかります。できれば最初から怖くないようにするのがベストですが、医療機器をなくすことはできませんからね(笑)。 私は、ときには機械をわざと見せたり触らせたりして、「慣れてもらう」ということを最優先しています。

ひとりの人間として、子どもの気持ちを尊重しているわけですね
そうですね。本人が治療を受け入れる状況をつくるのはとても大切です。 ただ、一方で「自分の嫌なことは絶対にしない」というのも、子どもにとっては常識なのです。ですから、本当に急を要するようなときには、保護者の方に了承をいただき、多少我慢してもらうこともないわけではありません。
子どものむし歯や、歯並びの悪さを未然に防ぐために

マウスピースのメリットやデメリットについてはいかがですか?
メリットは、顎の成長を利用した治療ができるということで、反対吻合(上の前歯よりも下の前歯が前にある咬み合わせ)にも対応できますし、痛みがさほど出ない、抜歯リスクが下がるといった特徴もあります。また治療費が比較的抑えられるのもよい点でしょう。 反対にデメリットとしては、マウスピース方式なので装着が必須だという点、適齢期が5~8歳に限定される点、顎の拡大が難しいケースもあるといったところでしょうか。
一般的なワイヤー式の矯正装置についてはどうでしょう?
ワイヤー矯正は、ブラケットという小さな装置を歯の表面に装着してワイヤーを通し、1本1本の歯を動かしていきます。ワイヤー矯正は確実性こそ高いのですが、見た目の悪さが大きなデメリットです。 ワイヤーやブラケットを白いものにする方法もありますが、それでもやや目立つことは避けられません。また食事や歯磨きがしにくい、痛みのリスクがあるなどの短所もあります。それに対して、マウスピース方式はそれほど目立ちませんし、多くのメリットがあります。
定期検診の過程で、矯正が必要かどうか判断されることはありますか?
定期検診のなかで矯正をおすすめすることはあります。 なお、矯正の適正タイミングには個人差がありますが、早めにご相談いただくのがよいでしょう。当院では、初回の矯正相談で3,080円(税込)の費用がかかりますが、以降は何度ご相談いただいても追加料金はかかりません。
小児矯正の治療期間の目安と費用について教えてください
平均的な治療期間は3~4年で、36~55回程度の通院が必要になります。費用は44~55万円(税込)が目安です。
ちなみに、先生のお考えは「子どもにこそフッ素コーティング」なのだそうですね
はい。乳歯や生えたばかりの永久歯はまだやわらかく、むし歯になりやすい状態です。そこで、フッ素を歯の表面に塗ることで再石灰化を促進し、酸に溶けにくい強い歯質にすることができます。また、子どもの奥歯は大人と比べて溝が細かく複雑な形状をしているので、ここに「シーラント」というコーティング剤で埋めることで、むし歯を予防するのも有効です。 日頃の歯磨きも大切ですが、正しい磨き方で行なわないと効果も半減してしまいます。特に子どもの場合は、歯の表面にコーティング剤を塗布するほうが、結果的にむし歯予防の効果は高くなるともいえるでしょう。

効果の大きい1日2回のフッ素コーティング

小さな患者さんをお迎えする上で、貴院にはどのような設備がありますか?
診療室及びカウンセリング室は半個室になっており、患者さんのプライバシーに配慮しています。キッズコーナーには、おもちゃや絵本のほかガチャガチャもあり、子どもが飽きないように工夫しています。 医療機器としては、デジタルマイクロスコープ、口腔内CCDカメラ、歯科用CTスキャン、3D光学スキャナーなどをそろえているほか、水で冷却しながら痛みを抑えてむし歯を削る「エルビウムレーザー」や、注射時の痛みがとても少ない「電動麻酔器」も導入しています。 なお、麻酔の際は表面麻酔剤を塗布してから極細の針で注射するので、可能な限り痛みを減らした麻酔導入が可能です。
貴院での治療の流れについて教えてください
まず、カウンセリングで悩みを伺います。次に、その悩みや問題を解決するためには何が必要かを明確に示すための検査診断を行ない、患者さんと治療方針をしっかり共有した上で、実際の治療に進んでいきます。治療の過程では、日常生活の注意点や歯磨き指導なども行なっています。
子どもが健康な歯を維持するために、保護者ができることはありますか?
あくまでも私の意見ですが、歯磨きよりもフッ素コーティングを日常の習慣にすることが大切だと考えています。 実は、正しい歯磨きは大人でも案外できていないものです。しかし、フッ素溶液を歯の表面に塗ることはとても簡単で、子どもでも自主的にできるものなのです。乱暴な歯磨きをするくらいなら、1日に2回のフッ素コーティングのほうが効果は大きいと思います。

ほとんどの子どもは甘いものが好きですが、糖分とむし歯との因果関係はどうでしょう?
近年の考え方では、糖分の量よりも「摂取する回数」が、むし歯の発生に影響しているといわれています。つまり間食で甘いお菓子を頻繁に食べるというのは要注意ということになります。
先生が小児歯科に取り組む上で、いちばん注意していることは何でしょうか? また読者へのメッセージをお願いします
泣いたら絶対に治療に入らないことは大前提として、子ども自身にも「今、歯がこうなってるから、そこをこうして治そうね」というように、しっかり説明するようにしています。これは相手が小さな子どもであっても、本人の気持ちは尊重しながら、できるだけ前向きに治療と向き合ってもらえたらという想いからです。 むし歯は「防げるもの」です。歯や口の中をよい状態に保つために、保護者の方ができることもあれば、お子さん自身ができることもあります。大切なのは、それを知って実践するかどうかです。小さい頃から、歯やお口の健康に対するリテラシーを高めてもらい、歯医者さんを身近な存在にしていただければと思っています。
編集部まとめ
ファミリー層が多い地域で開業し、家族で通う患者さんも多いという「なかじま歯科医院」。「小さなお子さんであっても、ひとりの人間であることは変わらない」という考えから、治療説明はしっかり行なうという中島院長。多くの患者さんと向き合ってきた経験を生かし、患者さんの悩みに寄り添う姿勢はとても印象的でした。将来的にむし歯のリスクを減らすためにも、幼少期からの意識づくりが大切であることがよくわかるインタビューでした。




