目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. ドクターインタビュー
  3. 地域のかかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療【兵庫県宝塚市 とがわ歯科クリニック】

地域のかかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療【兵庫県宝塚市 とがわ歯科クリニック】

 公開日:2025/09/30

地域のかかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療
地域のかかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療

インプラント入れ歯やブリッジよりも機能性が高く、治療後の仕上がりも自然。欠損歯治療でもっとも優れたアプローチとされているが、一方で費用が高額、外科手術を必要とするなど、治療をためらわせてしまう要素もある。治療に至るまでのハードルの高さは未だにインプラントのネックになっているが、宝塚市の「とがわ歯科クリニック」は、地域のかかりつけ医というスタンスからインプラント治療にも積極的に取り組んでいる。「常に患者さんの生活に密着した歯科医療を実践したい」と語る同院の十川弘海院長に話をうかがった。

Doctor’s Profile
十川 弘海(とがわ ひろみ)
とがわ歯科クリニック 院長

大阪大学歯学部卒。同大学歯学部附属病院での臨床研修に進み、天王寺の小室歯科ステーションにて8年間勤務。副院長まで務めた後、「とがわ歯科クリニック」を開業。現在は、日本補綴歯科学会などに参加し、インプラントなどの専門医療とともに、歯科医療全般に幅広く取り組んでいる。
「小さい頃は獣医になりたかった」という十川医師は、普段は3人の子どもと触れ合うのが大好きなマイホームパパ。そのため、小児歯科に対する想いも強い。

目次 -INDEX-

歯を失った場合の有効な治療法ともいえるインプラント治療

インプラント治療を行う歯医者さんが増えていますが、治療の質といった点で、歯科医院によるバラツキなどはありませんか?

正直なところ、ないわけではありません。というのも当院に来られる患者さんで、インプラント治療をしたけれど仕上がりに納得できなかったという方も一定数いらっしゃいます。
ただし、これは治療技術の善し悪しよりも、ドクターとの相性というか、カウンセリングなどで患者さんの要望をドクターが共有できなかったといったケースもあるのかなと思います。インプラント専門という歯科医院は近年増えていますが、当院はあくまでも一般歯科の流れのなかで、必要な場合にインプラントを選択してもらうといったスタンスです。

歯を失った場合の有効な治療法ともいえるインプラント治療

地域のかかりつけ医という立場で、必要に応じてインプラント治療に取り組んでいるということですね?

おっしゃる通りです。私自身、一般歯科から小児歯科、歯周病などあらゆる口腔トラブルに向き合っていますし、本来の歯科医療は、問題のあるところだけを解決すればよいというわけではありません。根本的な原因に寄り添い、総合的にお口や全身の健康に関わるべきだと考えています。インプラントに関しても、「手術して、はい終わり」ではなく、術後をどう管理していくかという点を重視しています。

改めて、欠損歯の治療としてインプラントが優れている点をおうかがいしたいと思います

入れ歯やブリッジは隣の歯を削ったりする過程が必要ですが、インプラント治療はそれがありません。健康な歯が温存できるのは大きなメリットといえます。また、審美性についても見た目はほぼ天然歯と変わらない仕上がりが期待でき、治療後の満足感は高いと思います。もちろん、噛み心地の面では天然歯にかなり近いものがあり、トータルとして欠損歯治療における有効なアプローチという見方ができるのではないかと思います。

なるほど。ただインプラントが抜けてしまうトラブルがあると聞きました

インプラントは非常に強固な部材でできたパーツを顎の骨に直接埋め込むので、それが抜けてしまうといったことはほぼありません。
ただし、歯の代わりとなる上部構造の部分が欠けたり、外れたりするトラブルはまれにあります。欠損歯の治療としては入れ歯やブリッジに比べて強度の高いインプラントですが、それでも天然歯とまったく同じというわけにはいきません。堅いものを無理やり噛んだりすれば、トラブルが発生することもあります。ただ、一般的な使い方においては、それらのトラブルが発生する頻度は決して高くありません。

インプラント周囲炎というトラブルが起きることもあるそうですが、それはどういうものですか?

治療後に、顎の骨に定着したインプラントの周囲に炎症が起こることがあり、これが「インプラント周囲炎」です。いわば、インプラントの歯周病のようなものですね。炎症を放置していると、原因菌が血流へ侵入して全身に回ってしまうこともあるので注意が必要です。
ただし、インプラント周囲炎のリスクは、適切なメンテナンスで管理すれば高い確率で防げますし、以前に比べると現在の発生率はかなり低くなっています。

自費診療で高額な治療は、未だにインプラント治療のネックになってはいませんか?

治療費を心配される患者さんは多くいらっしゃいます。ただ、これは考え方次第です。入れ歯やブリッジを選択した結果、その後に不満が出たりして結局インプラントで治療し直すといった患者さんも多く、「最初からインプラントにしておけばコスパがよかった」という声もあります。
どのような治療を選択するにせよ、信頼できる歯科医師としっかりカウンセリングを行い、希望や目標値を共有することが大切になるでしょう。

手術に対して不安を感じる方もいらっしゃるようですが?

患者さんにとって、確かに外科手術は心理的な負担が小さくないと認識しています。しかし、近年インプラントを埋め込む際のデジタルシミュレーション技術が飛躍的に進化しているため、治療そのものは極めて精度の高い手術が可能になっています。術中の痛みもほとんどないので、さほど心配されなくても大丈夫だと思います。

歯を失った場合の有効な治療法ともいえるインプラント治療

インプラントを受け止める顎の骨が「薄い、細い、弱い」といったとき、先生はどのように対応されるのでしょうか?

歯周病で歯を失ってしまったケースなどでは、ダメージが骨まで至っていることがあり、状態によってはインプラント治療が困難ということもあります。このような場合、私はインプラント治療をおすすめしていません。
単に顎の骨が小さい、細いといった症例では、骨を造成する治療もあります、ただし、これは治療期間が長くなり一定のリスクも捨てきれません。ですから、当院は軽度の場合のみ対応し、重度の症例は大学病院などへ紹介するというスタンスです。

インプラント治療の前に、お口のトラブル改善を優先

インプラント治療の前に、お口のトラブル改善を優先

糖尿病の人はインプラント治療が難しいということを聞いたことがあります

糖尿病と歯周病には因果関係があり、インプラント治療においても無視できる疾患ではありません。しっかり病状を管理コントロールできていれば治療そのものは可能ですが、当院では、まず歯周病などをよい状態にすることを先に考えますので、いきなりインプラントというのはおすすめしていません。

それでは、貴院でのインプラント治療の流れを教えてください

最初にカウンセリングを行うとともに、インプラント治療ができるかどうかの審査をします。その時点で歯周病などが見つかれば、それをケアすることが先決となります。問題がない場合、早ければ2回目の来院でCT画像を撮って、最短だと3回目で手術という流れになります。
しかし、実際にインプラントを検討される患者さんが、お口の中に何も問題がないというのはまれで、ほとんどの場合、むし歯や歯周病などのトラブルを抱えているものです。ですから、まずはそれらを改善させるのが大切で、ときにはインプラント手術まで半年かかるというケースもあります。これは治療のリスクを最小化するプロセスなので、患者さんにはご理解をお願いしています。

貴院での手術の際の麻酔について教えてください

麻酔そのものは通常のものを使用しますが、術中に痛みを感じるということはまずありません。どちらかといえば、親知らずの抜歯のほうが大変なくらいです。
また、麻酔注射は電動麻酔器を使って薬剤が一定のスピードで注入されるようにしているので、注射時の痛みも抑えられています。

上顎と下顎ではどちらが大変ですか?

下顎のほうが血管神経に関わるリスクが多少ありますが、どちらが難しいということではないと思います。ただし、上下同時の手術は患者さんの負担がかなり大きくなるので、基本的には別々に治療しています。

1回の手術でインプラントは何本まで治療可能なのでしょうか?

当院では1回の手術でインプラントを4本入れるという症例がありました。実際にやろうと思えば、もっと多くの歯を一度にということもできるのですが、患者さんへの侵襲度もありますし、決して無理しないようにしています。

治療直後に患者さんが気をつけなくてはいけないことは何かありますか?

当日は強いうがいは避けていただき、お風呂はシャワーで、運動も控えていただきます。また、抜歯までは歯ブラシを当てないようにしていただきます。食事については通常と同じように食べられますが、堅いものを噛むことは避けてください。お仕事や学校を休む必要はありません。

治療完了までの過程とメンテナンスについてはいかがでしょうか?

通常は1週間後に洗浄と消毒、2週間後に抜糸、2~3カ月後に歯ぐきからパーツが顔を出して、さらに2~3カ月で上部構造の型取りを行います。
なお、当院では手術は2回に分けて行います。1回目はインプラントの土台を顎の骨に埋めたら歯ぐきを縫合して閉じ、2回目でそれを開けて土台が顔を出すようにするため、完成までに半年くらい要します。
その後のメンテナンスは、インプラント治療部位のみならず、お口の中をトータルに見させていただいて、常によい状態を保てるような管理を心がけています。

喫煙者は治療を受けられるのですか?

当院では、喫煙される方については一定のリスクがあるので推奨はしていません。ご希望される患者さんについては、手術の前後は禁煙していただくことを条件としています。

インプラント治療は何歳から可能ですか?

基本的には永久歯にしっかりと生え変わっていれば実施できるのですが、当院では20歳後半をひとつの目安にしています。上限は、健康状態さえよければ高齢の方でも十分可能です。ただし、当院ではやや慎重に判断させていただいています。

インプラント治療の前に、お口のトラブル改善を優先

かかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療

かかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療

貴院でのインプラント治療の料金について教えてください

診断料が22,000円、1次手術費用が275,000円、2次手術は無料です。上部構造いわゆる被せ物は11,0000~165,000円となります。そのほか追加でかかる可能性としては、骨造成が110,000~220,000円、歯ぐきをきれいに整える処置が必要な場合は33,000~55,000円、審美性を高める処置に33,000円となっています。いずれも税込みです。

インプラントの耐久性はどの程度でしょうか?

当院ではストローマンというメーカーのインプラントを使用しています。耐久性については非常に強度が高いため、よほど無理なことをしない限り破損するトラブルは少ないと思います。むしろ、歯周病などを併発することによって骨が失われ、その結果せっかく治療したインプラント部分に問題を生じるというケースがほとんどです。適切なメンテナンスさえしていれば、相当年数よい状態を維持できると考えていいでしょう。

インプラント治療を受ける際、歯科医院選びの基準のようなものはあります?

あくまでも私の意見ですが、インプラントだけを診るのではなく、トータルにお口の中をケアできる歯医者さんだと安心感があるのではないかと思います。
普段、かかりつけの歯科医院でインプラント治療を行っていない場合は仕方ありませんが、お付き合いの長い歯医者さんでインプラント治療ができるのなら、まずはそちらを第一候補にするとよいのではないでしょうか。その上で骨造成など特別な処置が必要であれば、他院を紹介してもらうというのが間違いないと思います。

かかりつけ医が実践する、トータルケアとしてのインプラント治療

先生がインプラント治療を行う上で、一番気をつけていることはなんでしょうか?

当院では、インプラント治療を限られた専門分野としては捉えてはいません。幅広い歯科医療のひとつの選択肢であると考えています。患者さんは、失った歯をどうやって補うかに気持ちが集中しがちですが、「本当はその状態がなぜ起こったか?」という原因究明及び改善こそが大切なのです。
患者さんには考えられるリスクをすべてお話しし、少しでも懸案なことがあれば決して無理しないようにしています。慎重の上にも慎重を期した治療スタンスが当院の取り組みともいえるでしょうね。

最後に、本記事の読者へメッセージをお願いします

インプラントは治療期間も長くなりますし、ドクターとの関係性も重要になります。少しでも不安になったことはいつでも相談できる、そういう歯医者さんを選んでいただくことは治療後のパフォーマンス維持のためにも大切でしょう。
また、インプラントさえ行えばそれで安心というようには考えず、その治療をきっかけにして「もっと歯を大事にしよう!」と思っていただくことがとても大きいと思います。

編集部まとめ

幅広い歯科医療を実践し、地域のかかりつけ医という立ち位置を大切にしている十川院長。その言葉の端々に「目の前の問題を解決するだけではなく、その状態をもたらした根本的な過程を究明することで、本当の意味での健康を目指す」といった考え方が伝わってきました。インプラント治療を検討しているが、どんな歯医者さんを選べばいいかわからないという人は、十川院長の考え方がひとつのヒントになるかもしれません。

とがわ歯科クリニック

医院名

とがわ歯科クリニック

診療内容

インプラント治療 口腔外科 入れ歯治療 など

所在地

兵庫県宝塚市売布東の町21-22
ダイエー宝塚中山店2F

アクセス

阪急宝塚本線「中山観音」駅より徒歩5分
JR福知山線「中山寺」駅より徒歩10分

この記事の監修歯科医師