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訪問診療は身近な医療サービスのひとつ。必要と感じたなら気軽に相談を!【新潟市東区 山の下クリニック】

 公開日:2025/07/31
訪問診療は身近な医療サービスのひとつ。必要と感じたなら気軽に相談を! 訪問診療は身近な医療サービスのひとつ。必要と感じたなら気軽に相談を!

訪問診療というと、寝たきりの人が利用する医療サービスといった印象を持つかもしれない。しかし、実際にはさまざまな理由によって通院が困難な人が幅広く利用できるという。では、どんな人が利用し、どのような医療サービスを受けることができるのだろうか。 新潟県新潟市東区にある「山の下クリニック」の院長であり、「山の下地域包括ケアネット」の代表も務める阿部行宏先生、山の下クリニック医師の古屋秀和先生のお二方に訪問診療について詳しくお話を伺った。

Doctor’s Profile 阿部 行宏(あべ・みちひろ) 山の下クリニック 院長
1999年昭和大学医学部卒業。消化器内科医として病院勤務ののち、2010年阿部胃腸科内科医院を継承。2021年に移転し「山の下クリニック」に改称。2013年、医療・介護・行政の連携ネットワーク「通称:山の下地域包括ケアネット(山の下ねっと)」を設立。専門職同士でお互いに顔が見えるネットワークを構築し、地域医療へのさらなる貢献を目指す。日本消化器病学会消化器病専門医、日本内科学会総合内科専門医。
Doctor’s Profile 古屋 秀和(ふるや・ひでかず) 山の下クリニック 医師
2009年昭和大学医学部卒業。昭和大学リウマチ膠原病内科を経て、2021年からは在宅診療を専門とする荏原ホームケアクリニックに勤務。2025年より山の下クリニックで外来・訪問診療を担当。日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会リウマチ専門医、日本在宅医療連合学会専門医・指導医、臨床研修指導医。現在も昭和医科大学医学部リウマチ膠原病内科で兼任講師を務め、後進の指導にあたる。

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訪問診療は、必要な医療を享受するためのひとつの手段

まずは訪問診療について、その概要を教えていただけますか?

阿部院長:月1~4回、決まった曜日の決まった時間に、定期的に医師・看護師がご自宅や入居施設を訪問し、その患者さんが必要とされる医療を提供します。 訪問先は、当院であれば東区(山の下、木戸)、中央区(沼垂、入船)、北区(松浜)が主な対象となります。

訪問診療は、必要な医療を享受するためのひとつの手段

現在、どのような患者さんが訪問診療を利用していますか?

阿部院長:高齢の方、特に80歳以上の方が中心となります。疾患名でいえば、認知症の方、脳梗塞の麻痺や心不全がある方、がんの末期の方などがいらっしゃいます。 ただ、訪問診療は、重い病気のある方だけが利用できるサービスではありません。

具体的に、どのような方が利用できるのでしょうか?

阿部院長:定期的な通院が難しい方が対象となります。肉体的・精神的にお一人での通院に苦痛や不安がある方、認知症で道に迷ってしまう方、あるいは終末期療養・退院後の療養を自宅で行いたい方、自宅での緩和ケア・看取りを希望される方など、体の状態や状況はさまざまです。

訪問診療を利用すれば、当然ですが通院が不要になり、患者さんのご負担が軽減されます。それ以外には、どのようなメリットがありますか?

阿部院長:患者さんの実生活が見えるという点が訪問診療の大きなメリットです。ご自宅の構造上の問題で不便さや危険があるとか、家の中の移動や台所・お風呂でどのような生活動作で困難を感じているとか、実際に目にすることで、必要になる医療や介護・福祉サービスがより具体的に把握できます。

外来でお話をしても伝わりにくい部分ですね。介護や福祉の領域の問題は、どのようにケアされるのでしょうか?

阿部院長:ケアマネジャーや訪問看護師がサービスを提案してくれたりします。医療と介護の連携が重要ですので、連携をスムーズにするために「山の下地域包括ケアネット(通称:山の下ねっと)」の存在が重要です。

阿部院長が代表を務めるネットワークですね。山の下ねっと設立の経緯を教えていただけますか?

阿部院長:超高齢化社会に入り、在宅療養・施設療養が推奨される状況のなか、医療施設・介護施設、そして行政との連携は十分ではありませんでした。そこで、互いの顔が見える、地域の包括的なネットワークを構築する必要があると考え、2013年の設立に至りました。

訪問診療は、必要な医療を享受するためのひとつの手段

私たちが当たり前に享受しているサービスも、そういったネットワークによって支えられているんですね

阿部院長:通院が難しい人であっても必要な医療を受けられるというのは、本来は当たり前であるべきことです。着実に、体制は整ってきています。今後もさらに多くの患者さん、またご家族に、訪問診療を身近に感じていただき、必要であれば気軽に利用していただければと思います。

外来とほぼ同じ検査や治療、包括的サポートが受けられる

外来とほぼ同じ検査や治療、包括的サポートが受けられる

貴院では、日本在宅医療連合学会の専門医・指導医である古屋先生が関節リウマチ患者さんを診ていると伺っています

古屋先生:外来、訪問診療のどちらでも対応しています。関節リウマチの診療については、外来でできること、訪問診療でできることにほとんど差がありませんので、通院できなくなってもあきらめずにしっかりと治療を受けてほしいと思います。

たとえば、診断で必要になる関節エコーなどもご自宅で受けられるのでしょうか?

古屋先生:はい、ポータブルエコーを持参しますので、外来の場合と同様に受けていただけます。それ以外にも、血液検査はもちろん、生物学的製剤の皮下注射、抗リウマチ薬やJAK阻害薬の処方、リハビリ指導なども行います。

関節リウマチの患者さんでも、ご自宅で安心して医療を受けられそうですね

古屋先生:住み慣れたご自宅で、リラックスして検査や治療を受けられることは、訪問診療の大きなメリットだと思います。また、医師や看護師が自宅まで来てくれること、家族が訪問診療に協力してくれるといったことが、患者さんを治療、そしてよりよく生きることに前向きにさせているように感じます。

ご家族の協力というお話が出ましたが、「家族なんだから自分たちで世話をしないといけない」という気持ちから、訪問診療や介護、福祉のサービスの利用をためらうケースもあるかと想像します

古屋先生:そういったケースでは、ほとんどの場合、ご家族は十分に頑張っていらっしゃいますよ。患者さんの外来受診に付き添ったり、患者さんを介護したりといったことは期間が決まっているわけではなく長期戦です。どうかご家族の方も、ご自分の体や心を労り、遠慮なく医療や介護、福祉サービスを利用してほしいと思います。

では訪問診療全体の診療について、阿部院長にお尋ねします。貴院では現在、訪問診療においてどのような検査や治療に対応されていますか?

阿部院長:医師による診察は当然のことながら、「尿・血液検査」「点滴」「疼痛緩和」「胸水や腹水の管理」「経管栄養管理」「中心静脈管理」「人工呼吸管理」「留置カテーテル管理」「床ずれ管理」「在宅酸素」など、「緩和ケア・看取り」までを含めた検査や治療、ケアを行います。ご自宅での対応が難しい場合には、速やかに病院などと連携します。

訪問診療で対応できる検査や治療の内容は、医療機関ごとに違うものでしょうか?

阿部院長:緩和ケア・看取りに対応しているか、往診に対応しているか、小児に対応しているかといったことが大きく異なる点だと思います。 当院の場合であれば、緩和ケアや看取り、往診に対応しています。また、関節リウマチ患者さんを日本リウマチ学会 リウマチ専門医である古屋先生が診ているということも、特長のひとつとなります。

必要なこと、また何ができるかを患者さんやご家族と共に考える

必要なこと、また何ができるかを患者さんやご家族と共に考える

訪問診療の存在を知っていても、実際に利用するとなると「まず何をしたらいいかわからない」という方が少なくないのではないでしょうか?

阿部院長:訪問診療に対応しているお近くのクリニックや病院を探して、連絡を取ってみるのが早いかと思います。困ったときには新潟市には在宅医療・介護連携センターがありそのホームページで訪問診療可能な診療所が検索できます。ケアマネジャーさんに相談してご紹介いただく方法もあり、そのどちらでも構いません。とにかくご自身、ご家族が相談しやすい・サービスにアクセスしやすいことが大切だと思います。

クリニックや病院に直接連絡をしてもいいというのは意外でした。その後の流れは、どうなりますか?

阿部院長:電話などでお話を伺ったうえで、一度受診もしくは家族に来院していただきます。その際には、体の状態、生活状況、患者さん・ご家族のご希望などを確認し、診療内容・費用についてご説明します。それらにご理解・ご同意いただけましたら、契約を結び、訪問診療の開始となります。

面談の際、患者さん・ご家族が事前に用意しておくものはありますか?

阿部院長:健康保険証またはマイナ保険証、介護保険証、主治医の先生からの紹介状、印鑑などをご用意ください。詳しくは事前に説明がありますので、あまり構えずに、お気軽にご連絡いただければと思います。

訪問診療が始まってから、患者さんやご家族がご自宅で準備しておくものはありますか?

阿部院長:特にありません。あくまで私たちは“お邪魔させていただく”気持ちで伺います。診療と共に、ご自宅での生活状況の把握も大切なことなので、普段通りにお過ごしになってお待ちください。

必要なこと、また何ができるかを患者さんやご家族と共に考える

訪問診療にかかる費用について、教えていただけますか?

阿部院長:診療の内容によって多少の前後はありますが、月2回の訪問で、1割負担の方であれば約7,000円、3割負担の方であれば約20,000円というのが目安になります。面談の際に詳しい料金の説明がありますので、ご安心ください。

では最後に、お二人から読者の方にメッセージをお願いします

阿部院長:訪問診療は、私たちと患者さん・ご家族が中心となって「何が必要か」「何ができるか」を一緒に考えることからスタートします。同じ病気であっても、必要なもの・できることはお一人おひとり異なります。「訪問診療が必要かもしれない」と感じたときには、どうぞお気軽にお問い合わせください。

古屋先生:たとえば状態が安定していても、その通院に難しさ・辛さを感じるのであれば、訪問診療をご検討いただければと思います。それくらい、気軽に考えていただければというのが私の気持ちです。 また関節リウマチについても、訪問診療・外来のどちらであっても変わらず対応ができますので、ご相談をお待ちしております。

編集部まとめ

訪問診療は、私たちが必要な医療を受けるためのシステムのひとつであり、そこに遠慮や躊躇いは不要であることがよくわかりました。また、想像していたよりもさまざまな検査・治療ができることに驚きました。特に山の下クリニックの訪問診療は、内科全般、リウマチ・膠原病治療と幅広く対応されています。訪問できるのはその医療機関がによって範囲は異なると思いますが、医療機関を選ぶ際には、緩和ケアや看取り、往診、小児に対応しているかといったこともポイントになりそうです。訪問診療を検討されている患者さん・ご家族は、この記事をぜひ参考になさってください。

医療法人社団阿部胃腸科内科医院山の下クリニック

医院名

山の下クリニック

診療内容

訪問診療 内科 胃腸科 など

所在地

新潟県新潟市東区長者町5-5

アクセス

バス「末広橋」停留所より徒歩3分 JR各線「新潟」駅より車で6分

この記事の監修医師