外科医2人体制で安心の手術。丁寧な説明で鼠径ヘルニア治療への不安感を払拭【大阪市北区 大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック】
鼠径ヘルニアとは、お腹の中で内蔵を支える筋肉である「腹壁」の力が弱まり、そこから自身の腸や内臓が太ももや下腹部にはみ出してしまう疾患。一般的に“脱腸”とも呼ばれている。なかなか本人が自覚しにくいが、状況によって最悪の場合は命の危険にさらされることも。「大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック」では、この鼠径ヘルニアの治療で体に負担の少ない腹腔鏡手術に特化し、日帰りも可能な治療を提供している。鼠径ヘルニアについて、同院の所院長にいろいろ話をうかがった。
所 為然(ところ ゆきなり)
大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック院長
2010年、広島大学医学部医学科を卒業後、成田赤十字病院に勤務。千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科、千葉県がんセンター消化器外科、大阪赤十字病院消化器外科で研鑽を積んで、2022年12月にMIDSクリニックを開院。一人ひとりの患者さんに寄り添い、丁寧な診療とわかりやすい説明を心掛けた診療を提供している。
[資格]日本外科学会 外科専門医、日本消化器外科学会 消化器外科専門医
[所属学会]日本外科学会、日本消化器外科学会、日本内視鏡外科学会 ほか。
目次 -INDEX-
日常的に腹圧がかかる人が発症しやすい鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアとは、そもそもどのような疾患でしょうか?
お腹の筋肉は、腹膜と皮膚で挟まれた格好になっているのですが、腹圧が上がったり筋肉が弱くなったりすると、この穴を通って腸が出てきてしまいます。鼠径部に膨らみがあって、手で押さえたり寝た姿勢になったりすると元に戻ることから、そのとき患者さん自身が気付きます。
男女別の割合では、男性の3人に1人、女性は100人に5人がかかる病気で、圧倒的に男性の割合が多いです。その理由は男女の体の構造の違いにあります。男性には、お腹の筋肉に精巣の通り道となる隙間があるからです。
鼠径ヘルニアになりやすい生活習慣や職業などはありますか?
腹圧が高いとヘルニアになりやすいですね。たとえば肉体労働者とかスポーツ選手は、鼠径ヘルニアになりやすいといえます。スポーツ選手は、腹筋運動やスクワットをしているときに気付く方が多いようです。
ほかには、太っておられる方ですね。内臓脂肪が多いので、腹圧が高くなりがちです。太っている方は脂肪があるため、初期の頃には気付きにくいようです。ですから症状が進んで嵌頓(かんとん)という状態になって、痛みが激しく吐き気もする状態で救急搬送されて、初めて鼠径ヘルニアに気付くような場合もあります。
嵌頓とは何でしょうか? 放置しているとどうなりますか?
嵌頓とは、筋肉にあいた穴から飛び出した腸が元に戻らなくなる状態です。飛び出したまま筋肉で締められる状態になり、命の危険があります。
破れたときは痛みがいったん改善されるのですが、腸の内容物が腹腔内に撒き散らされて腹膜炎を起こし、最悪の場合2日くらいで死に至ることもあります。
怖いですね。嵌頓になる前、鼠径ヘルニアではどのような初期症状が出るのでしょうか?
初めは違和感とか、腸で筋肉が裂かれるズキズキする痛みですね。鼠径部を触ると膨らみがあって、手で押さえたり寝た姿勢になったりすると戻りますが、立つとまた出てくる。
今は患者さん自身が体の異変をインターネットで調べて、やっぱりおかしいとなったら医師の診断を受けてヘルニアだとわかる感じですね。
鼠径ヘルニアにはいくつか種類があるようですね。「外鼠径ヘルニア」「内鼠径ヘルニア」「大腿ヘルニア」などがあるそうですが、最も問題が大きいのはどれでしょうか?
いちばん多いのは外鼠径ヘルニアで、嵌頓しやすいのも外鼠径ヘルニアです。
実は大腿ヘルニアのほうが嵌頓しやすいのですが、男性に比べて骨盤が広い女性特有の状態です。男性にも症例がありますが、かなり稀です。
そんなに怖い病気なのですか?
いえ、そうではありません。実は鼠径ヘルニアは、筋肉にあいた穴から腸が飛び出しても元に戻って、出たり入ったりしているときは、とくに問題はありません。
ただ、自然治癒しないことと、嵌頓を起こしたら危険なので、手術で穴を塞いだほうがいいでしょう。
傷口が小さい上、出血も少なく負担が小さい腹腔鏡手術に特化
貴院では腹腔鏡手術による日帰り手術(※)に特化していると伺いました。患者にとって、どのようなメリットがありますか?
そもそも腹腔鏡手術と開腹手術の大きな違いとして、腹腔鏡手術のほうが開腹手術より傷が小さいことが挙げられます。
開腹手術だと7cmくらい切ります。まず皮膚を切って、皮下脂肪を切って、筋肉を何枚も切り裂いて穴を見つけて、人工の網で塞ぐわけです。つまり健康な組織を何層も切り開かないと、患部に到達できないわけです。
人工の網はコラーゲンでできていて、体の組織に半吸収されるのですが、網そのものには血管が通りません。ですから、もし手術の傷口に感染症を起こして網まで広がってしまうと、点滴で薬剤を投与しても網まで届かないのです。
腹腔鏡手術であれば、お腹に5mm程度の穴を3カ所あけるだけ。ヘルニアの患部まで20~30cmは離れているので、感染症を起こしても網まで広がることはありません。これがメリットのひとつ。
もうひとつは、たとえば右側の手術をしたときに、左側も見ることができること。開腹手術だと、わざわざ切らないと、反対側を見ることができません。
3つめは、腹腔鏡手術は患部の間近にまでカメラが入って、しかも拡大して見るため、神経や血管がよく見えるのです。出血量も、開腹手術と比べたら、はるかに少ないです。
※術前の検査、術後の経過観察が必要です。
手術時間はどれくらいでしょうか?
片側で1時間くらい。両側だと1時間半くらいです。全身麻酔で行います。
日帰り手術ができないような重症のケースはありますか?
[田村卓也副院長]
鼠径ヘルニアに関しては、重症度という概念はありません。
筋肉に開いた穴の大きい小さいはあるのですが、大きいから重症、小さいから軽症ということではないのです。鼠径ヘルニアという診断がついたら、手術は患者さん全員におすすめできると思っています。
手術を終えた患者は、どれくらいの時間、貴院で休んで帰っていただくのですか?
麻酔が完全に切れてから、およそ1時間。着替えたり身支度を整えたりする時間もありますし、場合によってはもう少し休んでいきたい方もいらっしゃいますから、平均して1時間半くらいです。
ほとんどの方が、ここから自力で歩いて出て行かれます。当院で手術した患者さんの最高齢が90歳ですが、やはり術後は歩いてお帰りになりました。
患者さんは、術後の痛みなどはありますか?
そこは当院としてはかなり気を遣うところです。一度「痛い」と思うと、その後も痛みに敏感になってしまいますから、麻酔から覚めたときに痛くないように、気を遣っています。
これは極端な例になるのですが、ある美容師さんが午前中に当院で手術を受けたあと、30分はかかる道のりを歩いて帰って、午後には職場に出勤してお客さんの髪を切っていたという事例があります。それくらい、患者さんの体に負担の少ない手術です。
術後は1週間程度で運動ができ再発率は極めて低い
運動ができるような日常を取り戻すまで回復するには、どのくらい日数がかかりますか?
ウォーキング程度なら、当日から可能です。ただ筋肉の隙間を塞ぐ手術ですから、いきなり激しい腹筋運動をやるようなことはお控えください。わが国で鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術に最も精通している先生は、「ダンベル運動なら3日目くらいからしていいよ」とおっしゃっています。でも、手術から1週間は空けるほうが無難かと思います。
貴院での治療の流れを教えてください。
[田村卓也副院長]
初診の方ですと、まず診察をして「ヘルニア」なのか、「虫垂炎」なのか、「胆石」なのか、CTスキャンやMRIなどの検査も併用して診断します。
その上で、日帰り手術を私たちでお手伝いできるかどうかを判断するための血液検査、心電図、呼吸器検査を行います。それらがすべて大丈夫となったら、手術日を決めてお越しいただくという流れになります。
手術後に再発することはありますか?
[所院長]
ゼロ%ではないといわれています。日本ヘルニア学会が出している再発率は1~2%くらいあるのですが、執刀医の経験にも左右される数字です。私共の年齢は40歳前と若いですが、鼠径ヘルニアの手術に関してはベテランの域にあります。
数字だけ見ると1~2%ですが、実際の再発率は一般的に発表されている数字より低いです。
手術後に患者が気を付けることはありますか?
気になることがありましたら、どんなに細かいことでも相談してください。電話はいつでも取れますし、LINE登録していただいたいる方も、できるだけリアルタイムで返信できるようにしています。
貴院での手術費用を教えてください。
70歳以上で、1割負担と2割負担の方で約18,000円。3割負担の方と70歳未満の方は約118,000円です。
高額療養費制度をご利用になれば、年収に応じて35,400円~約110,000円の自己負担になります。
治療の先にあるニーズを引き出し、安心して治療が受けられるように
診察される上で、先生がいちばん大切になさっていることは何でしょうか?
[田村卓也副院長]
患者さんは何を求めて当院を訪れてくださっているのかといいう、ニーズを引き出すことですね。
病気を治すことはもちろんですが、たとえば何らかの事情で土曜日じゃないと手術が受けられない患者さんがいて、病院だとそういう要望を聞いてもらえない。でも早く手術したいなど、個々のニーズを聞き出すこと。
それと、患者さんにしっかり説明してあげること。そうすることで、治療に対する安心感につながります。
最後に、Medical DOCを訪問してくださる読者の方へメッセージをお願いいたします。
[所院長]
当院は外科医2名体制で手術を行っています。先述のように、鼠径ヘルニアの治療に関してはベテランを自負しておりますので、どうぞ何でもご相談ください。
[田村副院長]
手術を終えられた患者さんには、原則として術後の通院はありません。こちらからしつこいくらいお電話をかけます。無事にご自宅へ着かれたか、体に不調はないかなど、1日目、3日目、1週間目に電話をかけてお伺いします。その上で何かありましたら、来ていただくことはあります。当院はとにかくサービス精神が旺盛で、お節介です(笑)。車いすが必要な患者さんには、術後に車いすを押して近くの駅までお送りしたこともあります。
編集部まとめ
若い院長と副院長。鼠径ヘルニアの手術に関しては、経験・知識ともにベテランといえるのだそうです。お二人に共通していることは、患者さん第一の対応を心掛けていること。日常生活に支障がない患者さんには、無理に手術を勧めないこともあるとか。丁寧な診察とインフォームドコンセントで、わざわざ日帰り手術を選んだ患者さんの真のニーズがどこにあるのかを引き出し、安心して治療が受けられるクリニックづくりをしています。
医院名
大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック
診療内容
鼠径ヘルニア 虫垂炎 胆嚢結石症 など
所在地
大阪府大阪市北区梅田1丁目2番2-100号
大阪駅前第2ビル 1階
アクセス
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