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QOV=クオリティ・オブ・ビジョンを上げる、白内障手術の現状【広島県広島市 医療法人吉島すぎもと眼科】

 更新日:2023/09/04

QOV=クオリティ・オブ・ビジョンを上げる、白内障手術の現状
QOV=クオリティ・オブ・ビジョンを上げる、白内障手術の現状

年を重ね、何となく見えづらくなったと感じている人もいることだろう。もともと近視なのだから、さらに視力が低下しても仕方ないと思ったり、年を重ねたのだから老眼が始まったのかもという思い込み。加齢が主な原因といわれる白内障は、早ければ40代から始まる人もいるという。白内障=水晶体の混濁は誰もが通る道だが、しかし自己判断は禁物。そこで、白内障手術を専門とする吉鳥すぎもと眼科の杉本洋輔院長に話を伺った。

Doctor’s Profile
杉本 洋輔(すぎもと・ようすけ)
医療法人吉島すぎもと眼科 理事長

広島大学医学部医学科卒業。白内障や緑内障、網膜硝子体疾患等を専門に治療しながら、大学病院をはじめとする複数の眼科で臨床経験を積み、医療法人吉島すぎもと眼科を開院。ワンストップでできる限り最大・最善の治療の提供を目指し、地域医療の充実のために尽力している。日本網膜硝子体学会、日本白内障屈折矯正手術学会他所属。

はじめに、白内障という病気についてご説明をお願いします

眼球は外からの光を感じて物を見る働きを持っていますが、そのとき重要な役割を果たすのが、目の中の「水晶体」と呼ばれる部分です。カメラのレンズにたとえられるように、楕円の凸レンズ型をしていて、光を屈折させて眼球の奥にある網膜に画像を映し、遠近に合わせて薄くなったり厚くなったりすることでピントを調節しています。
水晶体は、水晶体嚢(カプセル)の中に無数の水晶体細胞が詰まった構造となっていますが、白内障はこの水晶体細胞が濁ってしまうことで発症する病気です。

混濁した水晶体は元に戻らない。でも手術で改善は可能

白内障の原因や自覚症状にはどんなことが挙げられますか?

原因には、加齢や外傷のほか、アトピーなどの疾患やステロイドなどを長期服用した影響による続発性が挙げられます。稀に先天的な白内障もありますが、ほとんどの場合は加齢性によるもので、加齢とともにほぼ100%発症する病気でもあります。
一般的には60歳を過ぎたあたりから、早い方だと40代から見えにくさを感じる方もいらっしゃいます。自覚症状としては、最も多いのが目のかすみ(霧視)による視力の低下です。また、水晶体の濁り方が均一でなくまだらになるため、光が乱反射を起こしてギラギラとした眩しさを感じる場合もあります。たとえば夜間の運転時、対向車のライトがまぶしすぎて運転に支障が出るといったことなどがあります。

白内障を疑い、眼科を受診したほうがいいと思われるポイントはほかにありますか?

いわゆる視界がぼやける近視の症状と、霞みには違いがあります。近視なら眼鏡をかければいいですが、それでも改善できない場合は白内障の可能性があります。
よく年配の方が、眼鏡店で眼鏡をつくったけれど視界があまりよくならないと来院されますが、これが意外と多いパターンなのです。
また、視界が白っぽく霞む以外に、黄ばんでくるようなこともあり、まぶしいだけでなく暗く感じる方もいらっしゃいます。それこそ何十年もかけて濁りが進むため、視界の暗さに慣れてしまっているのです。
あとは、近視は年齢を重ねれば止まりますが、それでも視力の低下が止まらないなどの、何か不自由を感じることがあれば眼科の受診をおすすめします。

混濁した水晶体は元に戻らない。でも手術で改善は可能

白内障は治る病気ですか?

残念ながら、混濁した水晶体を透明に戻すことはできません。混濁が軽度であれば点眼薬で進行を抑える治療はできますが、これは対処療法にすぎません。ビタミンなどを点眼・内服することによって老化の進行を予防しましょうという、エイジングケアの考え方と同じです。といって、白内障の症状が見られるので、すぐに手術をしましょうというわけではありません。
もちろん混濁がひどく、視力低下が著しい場合は、手術によって濁った水晶体を取り除くしか視力を回復させる方法はないのですが、手術を受けないからといってすぐに失明するような病気でもないのです。
緊急を要する状態は、瞳が真っ白になったり、水晶体の膨化が見られたりする場合です。ほかに、水晶体の位置に異常が伴うような場合は、早急な手術が必要です。
ただし、初期段階であり、今のところ手術までは必要ないとしても、加齢が主な原因である以上水晶体の混濁は進行していく一方です。だんだんと視力が低下していくことに変わりがないことは理解しておきましょう。

先進の手法・設備でクリアな視界を取り戻す

先進の手法・設備でクリアな視界を取り戻す

現在の白内障手術は、以前と比べてどうでしょうか?

白内障の手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出し、混濁を取り除いたカプセルに人工の水晶体=眼内レンズを挿入するという方法で行われます。
ここ20年でその技術はとても進化しました。切開ひとつをとっても、以前は5mm程度切っていたものが、今は約2mmと半分以下になっています。術後に縫う必要もなく、自然治癒にまかせられるほどの小さな切開で済みます。また、近年は日帰り手術(※)が一般的となり、より気軽に手術を受けられる環境が整っています。
(※)事前事後に通院していただく可能性がございます。

手術のとき、痛みや患者さんの負担はどうでしょうか?

手術は点眼の麻酔と局所麻酔などを使用するので、痛みはありません。もちろん感じ方は人それぞれですが、術中に痛みを訴える患者さんはほぼいません。
ただ、恐怖心から過敏になったり、緊張したりすることはあるので、不安に思われる方には低濃度の笑気麻酔を用い、リラックスできた状態で手術に臨めるよう当院では工夫しています。
施術時間も片目で10分程度です。手術当日だけ眼帯を付けてもらい、洗顔と洗髪だけは控えてもらいますが、次の日から眼帯は外せます。そのほかの日常生活を制約することもないので、安静度や清潔度の面からみても患者さんの負担はとても軽いです。

術後、視界はどれくらいで回復しますか?

白内障以外に病気のない方なら、手術翌日からかなり見え方がはっきりするという声が多く、遅くとも2、3日で見え方は安定してきます。
ただ、少し青っぽく見えたり、眩しく感じたりすることがあり、視力の回復には個人差があります。また、水晶体の混濁で気づかなかった飛蚊症などの症状が術後に出ることがあります。後発白内障といって、術後に視力が低下することがありますが、この場合、外来でレーザーを用いて水晶体後嚢を切開することで回復します。

白内障手術に用いられる眼内レンズについて教えてください

現在は手術技術だけでなく、レンズも同様に進化して種類がとても増えています。素材は硬いものから柔らかくなり、度数も幅広く選べるようになりました。大きくは単焦点レンズ、多焦点レンズに分かれており、それぞれメリットとデメリットがあります。
単焦点レンズは、保険診療内で手術できますが、レンズの度数は遠・中・近のどれかしか選べません。近視に対応したレンズを挿入すれば、手元が見えづらいため老眼鏡が必要になるということです。
一方で、多焦点レンズなら、手元から遠くまで焦点を合わせられるため、眼鏡を使用する頻度は単焦点レンズに比べて少なくなります。乱視に対応したレンズがあることも多焦点レンズの特徴です。
ただし、多焦点レンズのデメリットとして、選定療養の対象ではあるけれど差額となるレンズ代が患者さんの負担となること、光のまわりに輪が重なるハローグレアが必発することがあるなどが挙げられます。
レンズ代は9.5~26万円(税込)となっており、幅広く取り揃えております。

レンズ選びのポイントにはどんなことがありますか?

一番は、ライフスタイルに合わせることです。車を頻繁に運転される方、読書が好きな方、デスクワークをされている方、眼鏡の付け外しが億劫な方など、それぞれの生活や仕事状況などと照らし合わせてレンズを決めていきましょう。
ハローグレアの話をしましたが、これは暗い場所で光を見るときに現れる現象なので、ふだんの生活に大きな支障はありません。
しかし、なかには慣れないという方がいて、年齢を重ねるほど脳の適応障がいを伴って不快に感じる方もいらっしゃいます。そういったリスクを考慮しつつ、より満足度の高い結果を求めるためには、やはり細かくライフスタイルを共有し、医院と相談を重ねることで納得できる選択をすることが大切です。

先進の手法・設備でクリアな視界を取り戻す

白内障手術はメリットから捉えてみるべき

白内障手術はメリットから捉えてみるべき

貴院で白内障手術を行う際の流れを教えてください

手術を行うには事前の詳細な検査が欠かせません。まずは問診で、実際の見え方など状態を確認し、視力測定、眼圧測定、白内障以外の病気を調べる眼底検査など、必要なデータを取っていきます。
白内障以外にも、視力が低下する病気には緑内障、加齢黄斑変性、網膜剥離、角膜の変形などさまざまです。原因をしっかり把握した後は、術法、レンズの種類、メリットとデメリットを説明・提案し、ご自身の意志決定へとつなげていきます。

先生が白内障治療で特に大切にされていること、こだわりがあるとすればそれは何でしょうか?

患者さんが何を望まれて手術を受けられるのか、視力が回復してやりたいことは何か、そこをちゃんと理解することです。
なかには片目は遠くに、もう片方は近くにピントを合わせたいという方もいらっしゃいます。その希望に対応できないわけではないのですが、しかしその際のリスクをきちんと説明し、できるだけ最大の満足が得られるよう選択肢を提示することも私たちの役割です。
当院の白内障手術の年間症例数は約400回(2022年度実績)ですが、その経験に基づいたアドバイスを、バランスを取りながら行うことを心がけ、ベストの治療を目指しています。

白内障手術はメリットから捉えてみるべき

白内障の治療で、どんな医院を選んだらいいかのアドバイスはありますか?

医師との信頼関係は大切なので、まずは一度相談に行き、HPやクチコミではわからないフィーリングを実際に話して感じるべきでしょうね。また、日帰り手術(※)を行うために必要な管理や検査、画像診断等が包括的に評価される施設基準というのがあり、それがクリアできているかどうかは技術面の安心につながると思います。
当院でも施設基準はクリアしており、緑内障の日帰り手術ができることがひとつのウリになっています。硝子体手術が行える器械も備えているので、難症例や術中の緊急時にも対応できます。そういった院内設備や環境を考慮することも、医院を選ぶ材料になるのはないでしょうか。
(※)事前事後に通院していただく可能性がございます。

最後に、白内障手術を受けようと思っている方にメッセージをお願いします

手術をためらわれる方のほとんどが、痛みや恐怖に対する不安を感じています。しかし、白内障手術の技術は格段に上がっており、回復が早いことでも患者さんの負担を最小限に抑えられます。
少しでも見えにくいと感じられる方は、まずは一度検査を行ってみてはいかがでしょう。人生100年時代の今、もう80歳だからとあきらめてしまうのではなく、その先20年を快適に過ごすために前向きに考えてもらえたらと思います。
見えるということは認知症予防にもつながります。眼科では「QOV=クオリティ・オブ・ビジョン」と呼びますが、QOLを上げるためのメンテナンスの一環として、またなるべくリスクの低いときに病気を発見するためにも、眼科での積極的な検診をおすすめします。

編集部まとめ

今や、白内障は日帰りで手術できるようになりました。そのような認識が広がってきたにも関わらず、症状を感じていてもなお、眼科を遠ざけている方が多いというのが現実です。
しかし、大切なのは先生の言葉にもあった「QOV」の向上。何となく見えづらいと日々を過ごすより、改善できる術がちゃんとあり、それがよりよい生活へとつながることを理解すれば、一歩踏み出す勇気も出るのではないでしょうか。
生きていくために食べることが欠かせないように、見えることで明るくなる暮らしはきっとあります。混濁を取り除くだけでなく、遠視や近視の改善、エイジングケアと捉えれば、白内障手術で享受できるメリットも最大限になるのでは?

吉島すぎもと眼科

医院名

吉島すぎもと眼科

診療内容

白内障 緑内障 眼科一般 ドライアイ など

所在地

広島県広島市中区吉島西2丁目14-12

アクセス

広島電鉄江波線「舟入南」駅より徒歩11分
広島バス「吉島西」バス停留所より徒歩4分
広島バス「広島南特別支援学校前」バス停留所より徒歩5分

この記事の監修医師