歯を失ってしまったとき、そのままにしておけば口内のバランスが崩れ、健康面でさまざまなリスクが現われてくる。それならば、失った歯を取り戻すにはどんな治療法、選択肢があるのだろうか?
インプラントはその有力な回答のひとつ。しかし、
間違った情報が流布されていたりするなど、誤解されている面も多くある。今回はその
インプラント治療を軸に、「南流山リーフ歯科クリニック」の中山理事長にさまざまな疑問に答えていただいた。
Doctor’s Profile
中山 尭盛(なかやま・たかみつ)
南流山リーフ歯科クリニック 理事長
1983年大阪市生まれ。昭和大学歯学部卒業。同大学の研修医を経て、医療法人社団信長会「オレンジ歯科クリニック」に入社。「オレンジ歯科ダイエー所沢店」の副院長を務めたのち、2015年2月に「南流山リーフ歯科クリニック」を開院。医療社団法人グリーンパーク理事長に就任する。国際口腔インプラント学会会員。なお、医療社団法人グリーンパークは、「南流山リーフ歯科クリニック」のほか「浅草駅前ヘキサ歯科」も運営している。
歯を失った状態のままにしておくのは、問題があるとお考えですか?
歯科医院で歯を抜いた場合は、当然、その後の処置について歯科医師と相談されると思います。この場合、歯科医師の判断として「放っておく」ということはないでしょう。ところが自然に抜けてしまった場合などは、「1本くらいなら」と放っておく人もいるかもしれませんね。このことは、歯はもちろん、身体全体のことを考えてもいいことではありません。
具体的にはどんな影響が出てくるのでしょうか?
歯が1本抜けると、その抜けたスペースを埋めようとして周りの歯が動いてしまいます。その結果、歯並びが悪くなり、同時に噛み合わせにも問題が出てきます。また、食事の際などほかの歯への負担が大きくなり、全体的な歯の寿命を縮めることにもつながります。
歯以外にも悪い影響はありますか?
噛み合わせの問題は、顔の歪みにつながる可能性があります。また、食べ物をしっかり噛むことができない状態を放置しておくと、内臓などに負担がかかるというリスクもありますね。ですから、抜けた歯の替わりを入れることは、歯全体のみならず身体全体のためでもあるということになります。
その「抜けた歯の替わり」として、入れ歯・ブリッジ・インプラントという選択肢があるわけですが、理事長がインプラントをおすすめする最大の理由は、どこにあるのでしょうか。
インプラントは
「ほかの歯を傷つけない」「ほかの歯を守る」治療であるということ。これが一番の理由ですね。
入れ歯やブリッジの問題点を少し具体的に教えていただけますか?
入れ歯やブリッジだと、ほかの歯に負担をかけてしまいます。とくにブリッジは、
抜けた歯の両隣の歯を削らなければならないので、より負担が大きいといえます。
入れ歯は、あまりほかの歯に負担をかけないと思われがちですが、固定するためにやはり
ほかの歯にフックをかけますから、多少なりとも負担がかかります。こうしたことが、歯全体の寿命を縮める結果につながってしまうのです。
インプラントなら、その心配はないということですね?
インプラントは、ほかの歯を削るなどせず、顎の骨に土台(
インプラント体)を埋め込み、その上に上部構造(支台部と人工歯)を取り付ける治療法です。ほかの歯に負担がかからないので、結果的に
「ほかの歯を守る」ことになるわけです。
ほかにインプラントのメリットはありますか?
「しっかり噛める」ことですね。
入れ歯やブリッジに比べて噛む力を維持できるので、人間の三大欲求のひとつである食欲を満たすことができます。付け加えるなら、
インプラントを入れると、その部分の顎の骨に常に刺激が与えられるため、
顎の骨が痩せる(退化する)ことを防げるということもメリットのひとつに挙げられます。
顎の骨は刺激がなくても、逆に過剰な圧力がかかっても痩せてしまうので、歯を抜けたままにしていたり、合わない
入れ歯を使用していたりするのはよくないことなんですよ。
顎の骨が痩せると、何か悪い影響が起きるのですか?
歯ぐきが落ち込んで歯磨きがしづらくなり、きれいな状態を保ちにくくなります。結果、
虫歯や歯周病になりやすくなります。また、顎の骨が痩せると、
インプラント体を入れるのに十分な骨の量が確保できなくなります。ですから、歯が抜けた状態をしばらく放っておいて、何年も経った後に
インプラント治療を検討するより、できるだけ早く
インプラント治療を行ったほうがいいでしょうね。
全部の歯がない方についても、やはりインプラントのほうが望ましいのですか?
やはり、
健康な歯があったときと同様に噛めるようになれるのは、インプラントでしか実現できないと思います。それまで総
入れ歯だった方に、「柔らかいものしか食べられなかったのにお肉が食べられるようになった」などと言っていただけることは多いですよ。
インプラントのメリットは理解しているけれど、治療を受けることを躊躇する方はまだまだ多いように感じます。そのひとつの理由に、巷で聞かれる過去の失敗例があると思うのですが、いかがでしょうか。
確かに過去には治療の失敗といえるものがあったかもしれませんが、
インプラントそのものも治療の技術も進歩していますから、現在は心配することはないと思います。
つまり、今は確実な手術が期待できるということですか?
確実な手術もそうですが、事前の検査を十分に行えるようになっていることが大きいですね。当院では
歯科用CTを導入し、歯や顎の状態を立体的に把握して、シミュレーションを行なっています。また、院内に歯科用CTがあれば、術前の検査だけでなく、術中に撮影することで、より安全な手術が実現できます。
また
当院ではサージカルガイドというものを使い、あらかじめどの位置で、どの角度で、どの進路で
インプラントを入れるかを決めています。オペの前に
インプラントをどのように打つか、デジタルデータの上で決まっているため
シンプルで簡単に治療を進めることができます。どんなに簡単なケースでも必ず
サージカルガイドを使い、
より確実に安全な施術をするようにしています。今までは歯茎を開いて、
インプラントを打ち込んだ後にアシスタントと一緒に方向を見定めながら微調整したり、ドクターの技術力による差が大きくありました。
サージカルガイドを使えばその差を埋めることが出来ます。もちろん、
サージカルガイドがあるとはいえ、ある程度のテクニックは必要ですが、特別なテクニックや技術力で差が出るものではないんです。それがデジタルの時代ですし、歯科のIT化が進んでいるのを実感するところです。患者さんの負担を減らせるのであれば、当院では積極的に新しい技術や考え方を取り入れていきたいと考えております。
そもそもインプラント治療が受けられないというケースはあるのですか?
内科的な問題を抱えてらっしゃる場合、手術が受けられないことはあります。また、顎の骨が薄いなど、
インプラント体を埋めるのに十分な骨の量を確保できないケースでは、
インプラント治療の前に
骨移植やGBR(再生誘導法)といった骨を造成する手術を行う必要があります。
逆にいえば、骨造成を行えばインプラント治療は可能、ということですか?
そうですね。ただし、
骨造成をする分、
治療期間が長くなり、治療費も高くなります。
患者さんの不安を取り除くためには、そうした術前の説明は大切ですね。
インプラント治療は、患者さんの歯や顎の状態、あるいは「治療期間を短くしたい」といった患者さんの要望によって治療法が変わってきます。「1回法・2回法」「抜歯即時埋入」など、患者さんにはわかりにくい専門用語も多いですから、
当院では手術の方法や治療計画、費用など、患者さんに十分な説明を行なうことを心がけています。
治療内容の説明以外で、心がけていることはありますか?
当院では、患者さんができるだけ痛みを感じないように細心の注意を払っています。たとえば、「麻酔を段階的に行なう」「麻酔針のゲージをできるだけ細いものにする」「麻酔薬を温めておく」といったことです。加えて、
手術に入る前に痛み止めを服用していただいています。もっともこれは、
インプラント治療に限りませんが。
術後のケアについてはいかがでしょうか。
インプラント治療は、
術後のケアがとても大切です。
インプラント体そのものに不具合が出ることはまずないのですが、健康な歯に比べて歯周炎になるリスクが高いのです。
当院では患者さんに
インプラント専用の歯ブラシをお渡しして、日々のケアをしっかり行なっていただくよう説明しています。また、3~4カ月に一度は来院していただき、メンテナンスを受けていただいています。
「南流山リーフ歯科クリニック」では、どのようなインプラントを採用していますか?
当院では50年以上の実績をもつ、
ストローマン社の
インプラントを使用しています。
その理由はどこにありますか?
ひと言でいえば
信頼性が高いということですが、
国内の数多くの歯科医院が採用していることも大きな理由です。たとえば、引っ越しなどで
インプラント治療を受けた歯科医院に通院できなくなったとしても、ほかの歯科医院や大学病院でメンテナンスなどを受けることが可能になります。
信頼性が高い一方、ストローマン社のインプラントは価格も高いという印象があります。
顎の骨、すなわち自分の身体に埋め込むものですから、たとえ
高価でも信頼できるもののほうがおすすめです。「健康な歯1本の価値は100万円」などといわれますが、
インプラントがその価値を代用してくれると考えれば、決して高いものとはいえないと思います。
とはいえ、やはり経済的な事情でインプラント治療をあきらめる患者さんも多いのではないでしょうか。
そうした患者さんには、保険が適用できる
入れ歯などで様子をみて、後に
インプラント治療を受けるという流れを提案することもあります。ですが、先ほど説明したように、長期間
入れ歯で過ごしていると、ほかの歯が傷んだり顎の骨が痩せたりするリスクが高まりますので、最初から
インプラント治療を受けるほうが望ましいですね。
つまり、ほかの歯が傷まない分、かえって治療費を抑えられるという考え方です。当院では、歯科治療費を立替払いしてくれる
デンタルローンや、クレジットでのお支払いに対応していますので、検討していただければと思います。
単価の安いインプラントを使用するという選択肢はないのですか?
安心して使えるのはストローマン社の
インプラントだとはいっても、患者さんの選択肢がひとつしかないのは決していいことではありません。当院では、もう1社、京セラの
「ファインシア」という
インプラントも導入しています。ストローマン社より保障期間が短くなりますが、国産メーカーとして歴史がもっとも長い
インプラントですので、信頼性は高いと考えています。
最後に、この記事を読まれている方にメッセージをお願いします。
私たちの目標は、患者さんが末長くおいしい食事を楽しめること、そしてきれいな歯を見せて笑えるということです。そのために
インプラント治療が必要であればそれを選択すしますが、患者さんの状態によっては、矯正や
審美治療を行なうこともあります。また、治療にかけられるお金に限りがあれば、保険適用の治療で対処しています。つまり
インプラントは、患者さんの歯の健康を維持するための「ツールのひとつ」でしかないのです。さらにいえば、
インプラント治療を受けるより、受けないで済むほうがいいわけです。歯を失って
インプラント治療を検討するというその前に、
歯を失わないよう定期的に歯科医院に通い、自分の歯のメンテナンスを受けることを強くおすすめします。
失った歯を取り戻せるというだけでなく、「ほかの歯を守る」ことができるというのもインプラント治療のメリット。その言葉の意味がよく理解できたのではないでしょうか。そして、中山理事長から最後にお話しいただいた「インプラント治療がすべてではない」との言葉。現在、インプラント治療を必要と感じていない方も、歯科医院でチェックを受け、定期的にメンテナンスを受けることが重要だということがよくわかりました。自分の歯の状態を把握してくれている歯科医院であればこそ、インプラントを含めた適切な治療法を提案できるんですね。
医院情報
南流山リーフ歯科クリニック
所在地 |
〒270-0162
千葉県流山市大字木402番地
ヤオコー南流山店2F
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アクセス |
JR武蔵野線 南流山駅 徒歩10分 |
診療内容 |
予防治療 虫歯治療 インプラント 歯周病治療 根幹治療 審美治療 他 |