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「ありきたりなこと」を丁寧にやり続けることだけが歯を健康にする【大阪市阿倍野区 はた歯科クリニック】

 更新日:2023/03/27
はた歯科クリニック
はた歯科クリニック

近年よく聞かれるのは、口腔環境を良好に保ち、「しっかり噛むことができる」かどうかが全身の健康維持に大きな影響を及ぼすということ。そのために推奨されているのが歯の定期検診。しかし、わが国で歯科医院のイメージといえば、多くの人にとって「歯の治療」をするところ。痛みやトラブルがなくても、口腔内の疾患予防のために歯科医院に通うという意識はまだまだ低いと言わざるを得ない。予防治療ではどんなことをするのか、また私たちが日々意識し実行すべきことは何なのか、「はた歯科クリニック」の畑先生に伺った。


Doctor’s Profile
畑 勝
はた歯科クリニック 院長

1994年に福岡県立九州歯科大学を卒業後、同年香川メディカルグループに入社し、翌1995年には同グループの平野分院長となる。1999年に独立して「はた歯科クリニック」を開院。学生時代から歯茎に関する治療こそ歯科医療の基礎と思い定めて研鑽を重ね、力を入れている。

人により虫歯・歯周病のリスクが異なるからこそ、その人に合った予防を

人により虫歯・歯周病のリスクが異なるからこそ、その人に合った予防を
日本人の成人の8割が歯周病、あるいはその予備軍だとよく言われます。これは予防意識が低いからなのでしょうか。

確かに予防意識のあるなしが、お口のトラブルが起きる数に関係はしているのでしょうね。虫歯に関していえば、たとえばアイルランドでは虫歯予防のために、水道水にフッ素を入れることを義務づけていると聞きます。

日本はそこまでの意識はないですね。

フッ素塗布をしましょう」というようになったのも、近年の話です。ただ、日本人の歯が世界的に見て、特別にひどい状況だと私は思いませんけれどね。
予防治療で行うことには何があるでしょうか?

お子さんの場合は、虫歯になりやすい箇所をあらかじめレジンで充填しておく、フッ素を塗布する、といったことですね。
ただ、お越しになる患者さんの中には、フッ素塗布を自動車のコーティング塗装のような分厚いイメージを持っていらっしゃる場合があります。そんなことはなく、フッ素を塗ったからといって決して虫歯にならないわけではありません。
歯科医に診てもらったから安心、というわけではないと。

一番は患者さんご自身による意識改革ですよね。つまりは食後のブラッシングです。キレイに保とうという意識が根底にあってはじめて、歯科医にできる予防治療にも意味が出てきます。
逆にいうと、歯磨きさえしっかりやっていれば大丈夫ということでしょうか?

ブラッシングで汚れをすべて取れるかというと、私だってそんな自信はありません。そこで定期的に歯科医院に通って、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を受けてみようか、という話になります。もちろんそこまで行かなくても、通常の歯垢除去クリーニングでも十分に有効です。
いずれにせよ、ご自宅で個人にできるレベルで「万全」というのは難しいと思いますよ。
ではどれくらいのペースでクリーニングするのがよいのでしょうか?

健康保険の制約を考えると、2カ月に1回になりますね。当院ではこれに加えて毎月1回、ブラッシングのみでお越しになる患者さんも多くいらっしゃいます。
ちなみに私自身の歯は抵抗力が弱くて、とても虫歯になりやすいんです。ですから自分自身では、もっとこまめに診ないといけないなと思っています。

人によって変わるということですね。

そうですね。ただ定期的に検診させていただいている患者さんの中には、毎回「もっとちゃんと歯磨きしないとダメだよ」という方もいますが、不思議と歯を保っているということもありますし、「人によって違うんだなあ」と改めて考えさせられることが多いですね。
人により虫歯・歯周病のリスクが異なるからこそ、その人に合った予防を

意外にわからない歯のトラブル。鍵を握るのは歯科医の技量

意外にわからない歯のトラブル。鍵を握るのは歯科医の技量
年齢によってやることは変わりますか。

まず、先ほど申し上げたように、子どもと大人とではやることが変わります。では「20代と40代で変わるのか」と言われたら、特に差はないでしょう。ただ40代を過ぎると、だんだん体の抵抗力が落ちてきて歯周病が進行しやすくなります。

子どもについては、保護者の方々に気をつけてほしいことは?

幼児であれば仕上げ磨きが重要です。小学校低学年くらいまでのお子さんで虫歯になるかどうかは、100%保護者の責任だといえます。歯磨きをした後、寝る前に牛乳やジュースを飲むというお子さんもいると思いますが、そのときにちゃんと「じゃあもう1回ハミガキね」と言えるかどうかです。
大人の場合はどうでしょうか。メンテナンスの流れを教えてください。

3カ月、半年、1年と、人によって異なりますが、間隔を空けて歯周ポケットの検査をします。ブラッシングは1~2カ月に1回、歯石取りは随時です。

来てさえくれたら、見落としはありませんよと。

いや、たとえば虫歯を目視とレントゲンで探すといっても、どんな歯科医でも50%くらいは発見できると思いますが、それ以上は経験がものをいいます。
歯周ポケットの検査も、1~2mmずれたら「もうわからない」なんてことがしょっちゅうですから。だからといって、すべてをしらみつぶしに調べるなんてことをしたら、検査が痛すぎて無理ですよね。
意外にわからない歯のトラブル。鍵を握るのは歯科医の技量

歯科治療の行き着く先は、予防に適した口内環境をつくること

通常のクリーニングはフッ素塗布などのほかに、予防措置としての治療にはどのようなものがあるでしょうか。

たとえば、斜めに傾いている歯を垂直に起こす「アップライティング」という矯正に属する治療がありますが、結局は清掃しやすい口腔環境をつくるわけですから、予防という側面は確実にあります。
歯科治療の行き着く先は、予防に適した口内環境をつくること

外科手術も行き着くところは予防なんですね。

歯肉の足りていない箇所に同じ口内の厚みのある部分を移植する「フリーグラフト」という手術も同じです。
普通、歯茎が少なくなってくると、歯磨きが痛くてしょうがないんですよ。それをちゃんと補ってやれば歯磨きが苦痛でなくなります。
エクストルージョン(挺出治療)という言葉も聞きます。

簡単にいうと、歯を途中まで引き抜くという方法ですね。難抜歯の際に使える手段ですが、歯の保存として使います。歯肉に埋もれてしまっている歯を引き出して清掃しやすくするわけです。
本格的な歯列矯正から考えれば、とても基礎的、初歩的な方法なんですが、予防治療という観点で考えればとても役に立ちます。

歯科治療の行き着く先は、予防に適した口内環境をつくること
ほかには何があるでしょうか?

歯周補綴というものもあります。通常は欠けてしまった歯に被せ物をしたり、ブリッジ治療をしたりすることなどを補綴といいますが、歯周補綴では歯周病でグラグラになっている歯を固定することで、噛む力に耐えられる強度を歯に与え、結果的に歯の寿命を延ばすというものです。

伝わりにくいからこそ伝えたい、「なぜ予防が大切なのか」ということ

予防治療についての啓蒙はどのようにされていますか。

難しいですよね。どれだけ「これがこうなって、こうしないとこうなりますよ」と話をしても、ご自宅ではまったくそのようにはしていただけなくて。でも、毎月きちんと予防のために来てくださったり(笑)。
伝わりにくいからこそ伝えたい、「なぜ予防が大切なのか」ということ

わかりやすく伝えるためにされていることは。

わかりやすいのは汚れの染め出しです。磨けているか、磨けていないかはこれで一発でわかります。当院ではほかにもダイアグノデントといって、レーザーで虫歯を発見する機器を導入しています。
レーザーで虫歯を発見できるのですか?

通常、虫歯を発見するのは目視、あるいはCT検査やレントゲン検査です。しかしいくら性能が向上したとはいえ、被曝のリスクもありますし、そう毎回CTやレントゲンを使うというわけにもいきません。
そうではなくて、歯にレーザーを当てて光の反射を解析して歯質の変化などを読み取ろうというもので、精度は高いと思います。
先生は、予防に関するモットーなどはありますか?

まず、ひとつ頭に浮かぶのは、一度オペをした箇所は二度と悪くならないようにする、ということです。しかし私だけががんばってもそれは達成できません。
3カ月に1回ご来院いただくとすれば、私が口内を拝見して次に診るまでに、その患者さんは1日3食として180回くらいの食事をされるわけです。その期間で、一体どれくらいキレイな口腔環境をつくってもらえているかは、こちらからはわかりませんからね。
そう言われると、予防の主役は自分自身なんだとわかりますね。

予防治療の主体はあくまで患者さんご本人です。私たち歯科医がオペをしたり矯正治療をしたりするのは、結局のところは「患者さんが歯磨きしやすい環境をつくり上げる」ためにほかなりません。

伝わりにくいからこそ伝えたい、「なぜ予防が大切なのか」ということ
それでは最後にMedical DOC読者の皆さんにメッセージをお願いします。

歯の予防は1~2日がんばったところでどうにもならないですから、続けていく根気が大切です。そこで行うことは、ブラッシング指導であったり歯のクリーニングであったりという、いわば「ありきたり」なことばかりですが、だからこそ重要なんです。
来院していただければ、可能な限り見落としのないようきっちりと診るということについては、使命感をもってやらせていただいています。

編集部まとめ

歯の治療方法にはさまざまなものがありますが、「結局のところ、歯磨きのしやすい環境、予防に適した状況をつくり上げるためのもの」という先生の言葉がとても印象的でした。そして、予防治療の根本にあるのは歯科医院でできることよりも、私たち自身が日常生活の中でどれだけ歯をキレイに保つことができるかということ。日々丁寧に歯の健康を維持しようとする努力が、しっかり噛める環境の維持につながります。自分自身の毎日の根気を歯科医院で定期的にチェックしてもらおう。そんな気持ちで過ごそうと、改めて思うことのできたお話でした。

医院情報

はた歯科クリニック

はた歯科クリニック
所在地 〒545-0051
大阪府大阪市阿倍野区旭町2-1-2-105
アクセス JR大阪環状線 天王寺駅 徒歩7分
診療内容 歯科一般 矯正歯科 小児歯科 インプラント 歯周病治療 美容診療 他

この記事の監修歯科医師