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未破裂の腹部大動脈瘤への予防的治療。日常生活では『○○の管理』が最重要

 公開日:2026/05/07
未破裂の腹部大動脈瘤への予防的治療。日常生活では『○○の管理』が最重要

腹部大動脈瘤と診断されても、すぐに手術が必要になるわけではありません。経過観察中は、血圧管理や禁煙、急激な腹圧上昇を避けるといった日常生活の工夫が、瘤の拡大を抑えるうえで役立ちます。降圧薬の服用継続や減塩食、医師と相談したうえでのウォーキングなど、一つひとつの取り組みが積み重なって効果につながります。予防的手術のタイミングや方法も含め、焦らず着実に自分のペースでできることから始めていきましょう。気になる症状があれば、循環器内科や血管外科への相談も一つの選択肢です。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

腹部大動脈瘤の予防的治療と日常生活での注意点

腹部大動脈瘤と診断されても、すぐに手術が必要となるわけではありません。瘤の大きさが比較的小さく、破裂リスクが低いと判断された場合は、厳重な経過観察が続けられます。その期間中も、瘤の拡大を少しでも抑制し、破裂のリスクを管理するために、生活習慣の改善が求められます。また、破裂を未然に防ぐための予防的治療についても、その目的と方法を深く理解しておくことが重要です。

予防的手術のタイミングと方法

前述のとおり、腹部大動脈瘤の直径がおおむね50〜55mm以上に達した場合、あるいは拡大速度が速い(例:半年で5mm以上)と判断された場合は、破裂を未然に防ぐための「予防的手術(待機手術)」が検討されます。緊急手術に比べて、全身状態が安定している中で計画的に行えるため、手術の安全性は格段に高まります。手術の方法には、破裂時と同様に「人工血管置換術」と「ステントグラフト内挿術」の2つがあります。どちらを選択するかは、患者さんの年齢、心臓や肺などの併存疾患の有無、全身の健康状態、そして瘤の形状や位置(腎動脈との距離など)をCT検査で詳細に評価した上で、専門の医師と患者さん本人が十分に話し合って決定されます。近年では、身体への負担が少ないステントグラフト内挿術が選択されるケースが増えていますが、長期的な耐久性の観点から、若年者では開腹手術が推奨されることもあります。

日常生活で心がけること

腹部大動脈瘤と診断され、経過観察中の方が日常生活で最も注意すべき点は「血圧の管理」です。血圧が高い状態が続くと、瘤の壁にかかる物理的な負担が増大し、瘤の拡大を促進させたり、破裂の引き金になったりするリスクが高まります。医師から処方された降圧薬(血圧を下げる薬)を自己判断で中断せず、指示通りに毎日きちんと服用し、家庭でも血圧を測定して記録することが基本です。目標血圧は個々の状態によりますが、一般的には130/80mmHg未満を目指します。また、最大の危険因子である「禁煙」は必須です。喫煙は血管を直接傷つけるだけでなく、血圧も上昇させるため、直ちに禁煙することが強く推奨されます。さらに、重いものを持ち上げる、排便時に強く力むといった、急激に腹圧が上昇するような動作は、瘤に負担をかける可能性があるため、避けるように心がけましょう。食事は減塩を基本とし、バランスの取れた内容を心がけ、適度な運動(ウォーキングなど、医師と相談の上で)を継続することも、血圧コントロールと全身の動脈硬化予防の観点から非常に有益です。

まとめ

腹部大動脈瘤は、その多くが自覚症状に乏しいまま進行するという点で、まさに「見えにくい病気」であり、だからこそ怖いのです。しかし、本記事で解説したように、お腹の拍動感や原因不明の腹痛・腰痛、下肢の血流障害など、身体は時に重要なサインを発してくれます。これらのサインに早期に気づき、病気の可能性を疑うことができれば、破裂という最悪の事態を回避し、適切な診断と治療につながる可能性が大きく広がります。特に、喫煙歴のある高齢男性など、リスク因子を持つ方は、症状がなくても定期的に腹部エコー検査などのスクリーニングを受けることを強くお勧めします。もし気になる症状がある場合は、決して放置せず、かかりつけ医、あるいは循環器内科や血管外科といった専門の診療科に相談してください。あなたの大切な命を守るために、まずは正しい知識を持ち、勇気を出して専門家への相談という一歩を踏み出してみてください。

この記事の監修医師