「自覚症状がない」から怖い―eGFR値の低下は腎臓からのSOS!

健康診断の結果を見て、「eGFR」という数値が気になったことはないでしょうか。この値は、自覚症状がほとんど現れない段階から腎機能の変化を捉えられる重要な指標です。腎臓は一度機能が低下すると回復が難しい臓器だからこそ、数値の意味を正しく理解しておくことが大切です。本記事では、eGFRの仕組みと慢性腎臓病(CKD)のステージ分類について解説します。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
eGFR値とは何か:腎機能を知るための基本指標
eGFR値は、自覚症状がほとんどない初期の腎機能低下を捉えるための非常に重要な検査値です。腎臓の機能は一度失われると回復が難しいことが多いため、症状がないからと安心せず、健康診断などの機会に数値を定期的に確認し、その意味を正しく理解することが、適切な対処への第一歩となります。
eGFRの定義と計算の仕組み
eGFR(estimated Glomerular Filtration Rate)は、日本語で「推算糸球体ろ過量」と呼ばれます。腎臓の中にある糸球体という毛細血管の塊が、1分間にどれだけの血液をろ過して老廃物を取り除けるかを推算した数値です。このろ過量を直接測定するのは困難なため、血液検査で測定できる「血清クレアチニン値」と年齢、性別を用いて計算式で算出します。日本では、日本人の体格に合わせて調整された計算式が用いられます。クレアチニンは筋肉で作られる老廃物なので、筋肉量が多い人は高めに、少ない人は低めに出る傾向があります。そのため、eGFR値は個々の体格差を考慮してもなお、腎機能の客観的な指標として広く活用されています。単位はmL/分/1.73m²で表され、健康な成人では90以上が正常とされます。60〜89は軽度低下と判定されますが、タンパク尿などの異常がなければ、すぐに病気とは診断されないことが多い範囲です。
eGFR値と慢性腎臓病(CKD)のステージ
慢性腎臓病(CKD)は、eGFR値に基づいて重症度がステージ分類されます。この分類は治療方針を決定するうえで重要です。
・G1(90以上):正常または高値。ただし、タンパク尿など他の腎障害の所見があればCKDと診断されます。
・G2(60〜89):軽度低下。この段階では自覚症状はほぼなく、高血圧や糖尿病など原疾患の管理が中心となります。
・G3a(45〜59)・G3b(30〜44):中等度低下。むくみや貧血、倦怠感などの症状が出始めることがあります。専門医による管理と、食事療法(特に減塩)の開始が検討されます。
・G4(15〜29):高度低下。腎機能低下に伴う合併症が顕著になり、将来的な腎代替療法(透析や腎移植)についての情報提供や準備が始まる時期です。
・G5(15未満):末期腎不全。透析や腎移植が必要となる状態です。
eGFR値の低下に早い段階で気づき、適切な対策を講じるほど、腎機能の悪化速度を緩やかにし、より長く自分の腎臓を保つことが可能になります。
まとめ
eGFR値の低下は、腎臓からの重要なサインです。しかし、早期に気づき、適切な対策を講じることで、その進行を大幅に遅らせることが可能です。血圧・血糖の厳格なコントロールを基本に、減塩、タンパク質・カリウム・リンの適切な管理、そして禁煙や適度な運動といった生活習慣の改善が、腎機能を守るための強力な武器となります。健康診断で数値を指摘されたり、少しでも気になることがあれば、決して放置せず、早めに腎臓内科などの専門医を受診してください。医師や管理栄養士と協力し、自分に合った治療とセルフケアを始めることが、未来の健康を守る第一歩です。