「ヒートショック」はなぜ起こる?命に関わる入浴中の体の変化とメカニズム【医師解説】

温度変化に対して身体がどのように反応し、なぜヒートショックが起こるのかを理解することは、効果的な予防につながります。血管の収縮と拡張による血圧変動のプロセス、そして自律神経が果たす役割について知ることで、リスクの高い状況を事前に察知し避けられるようになります。

監修医師:
滝村 英幸(医師)
2006年4月 聖マリアンナ医科大学病院 初期臨床研修医
2008年4月 済生会横浜市東部病院 循環器内科
2016年12月 総合東京病院(東京都中野区) 循環器内科
2017年 総合東京病院(東京都中野区) 心臓血管センター
2022年4月 総合東京病院(東京都中野区) 心臓血管センター 循環器内科 心臓血管インターベンション科 科長
【専門・資格・所属】
内科・循環器内科一般
冠動脈カテーテルインターベンション治療
末梢血管カテーテル治療
フットケア
心血管超音波検査
日本内科学会認定内科医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定心血管カテーテル治療専門医
日本心エコー図学会SHD心エコー図認定医
ヒートショックが発生するメカニズム
ヒートショックがどのようにして起こるのか、そのメカニズムを理解することは予防のために重要です。温度変化に対する身体の反応を知ることで、リスクの高い状況を避けられるようになります。
急激な温度変化による血圧変動のプロセス
ヒートショックの根本的な原因は、急激な温度変化によって引き起こされる血圧の大きな変動にあります。寒い環境に身体がさらされると、体温を維持するために血管が収縮します。これは体表面からの熱の放散を減らし、重要な臓器に血液を集中させるための生理的な反応です。しかし、血管が収縮すると血液が流れる通路が狭くなるため、心臓は同じ量の血液を送り出すのにより強い力が必要になり、結果として血圧が上昇します。
逆に、温かい環境に移動すると、身体は余分な熱を放散するために血管を拡張させます。血管が広がると血液の流れる空間が増え、血圧は低下します。特に熱い湯船に浸かると、全身の血管が大きく拡張するため、血圧は急激に下がります。
このような血圧の急上昇と急降下が短時間のうちに繰り返されることで、心臓や血管系に大きな負担がかかります。特に動脈硬化などで血管の柔軟性が低下している方や、心臓の機能が低下している方では、この負担に耐えきれず、重篤な症状を引き起こす可能性が高まります。
自律神経の働きと体温調節機能
ヒートショックの発生には、自律神経系の働きが深く関与しています。自律神経は交感神経と副交感神経から成り、交感神経は、寒冷刺激を受けると活発になり、血管を収縮させて血圧を上げ、心拍数を増加させます。一方、副交感神経は、温熱刺激や安静時に優位になり、血管を拡張させて血圧を下げ、心拍数を減少させます。
健康な状態では、この二つの神経系がバランスよく働き、環境の変化に応じて身体を適切に調整します。しかし、急激な温度変化が起こると、自律神経の切り替えが急激に行われ、血圧や心拍数が極端に変動してしまいます。
高齢者や糖尿病の方では、自律神経の機能が低下していることが少なくありません。このような場合、温度変化に対する身体の調整能力が鈍くなり、血圧の変動がより大きくなったり、回復に時間がかかったりします。結果として、ヒートショックのリスクが高まることになります。
また、体温調節機能そのものも加齢によって低下します。皮膚の温度感覚が鈍くなり、寒さや暑さを感じにくくなるため、適切な対応が遅れがちです。これもヒートショックの危険性を増す要因の一つです。
まとめ
ヒートショックは、正しい知識と日常的な対策によって予防できる健康リスクです。めまいや立ちくらみ、動悸などの初期症状を見逃さず、急激な温度変化による血圧変動の仕組みを理解することが重要となります。特に高齢者や基礎疾患のある方はリスクが高いため、室温管理や入浴方法の工夫、トイレや廊下、早朝・夜間など注意が必要な場面を把握しておくことが欠かせません。あわせて、家族による見守りや緊急時の対応を共有しておくことで、万が一の事態にも備えやすくなります。
住環境の改善や生活習慣の見直しを含め、できる対策から無理なく実践していきましょう。少しでも不安や症状がある場合は、早めに医療機関へ相談することが、冬を安全に過ごすための大切な一歩となります。
参考文献




