「若年性アルツハイマー」最期の時間をどう過ごす?終末期の家族への心の支援

終末期には重度の認知機能障害と身体機能の低下が見られます。言語機能がほとんど失われ、身体機能も著しく低下し、全面的な介護が必要となります。この段階では、本人の苦痛を軽減し、尊厳を保つケアが求められます。ここでは、終末期の症状と、緩和ケアを含めた適切な対応について説明します。

監修医師:
鮫島 哲朗(医師)
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍 頭蓋底外科センター長
【経歴】
平成2年3月 宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月 宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月 九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月 Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月 NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月 浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月 東京逓信病院脳神経外科部長 脳腫瘍頭蓋底外科センター長
【専門・資格】
脳腫瘍 頭蓋底腫瘍 困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医
若年性アルツハイマーの進行に伴う終末期の状態
若年性アルツハイマーの終末期には、重度の認知機能障害と身体機能の低下が見られます。ここでは、終末期の特徴と対応について説明します。
重度段階の症状と全面的な介護
重度段階になると、言語機能がほとんど失われ、意味のある会話は困難になります。家族を認識できず、自分の名前もわからなくなります。身体機能も著しく低下し、歩行が困難になり、最終的には寝たきりの状態となります。嚥下障害が進行し、食事を口から摂ることが難しくなります。食べ物を飲み込む力が弱くなり、誤嚥のリスクが非常に高くなります。排泄のコントロールも失われ、失禁が常態化します。筋肉の硬直や関節の拘縮が起こり、体位変換も困難になります。
この段階では、医療的ケアと全面的な介護が必要です。口腔ケア、体位変換、栄養管理、感染予防といった日常的なケアを丁寧に行います。また、疼痛管理や呼吸管理も重要です。本人の苦痛を軽減し、尊厳を保つケアが求められます。家族は、終末期の医療方針について医療チームと話し合い、本人にとって望ましい選択をします。この段階での意思決定は非常に難しいものですが、事前に話し合っておくことで、納得のいく選択ができるでしょう。
終末期医療と緩和ケア
若年性アルツハイマーの終末期では、治療の目標が延命から苦痛の緩和へとシフトします。緩和ケアの考え方に基づき、本人の身体的・精神的苦痛を和らげることが重視されます。人工栄養や気管挿管といった延命処置については、事前に本人や家族の意思を確認し、それに沿った対応をします。本人の意思がわからない場合は、家族が本人の価値観や希望を推測しながら決定します。
終末期には、自然な経過を見守ることも一つの選択肢です。無理に栄養を入れたり、苦痛を伴う処置を行ったりせず、穏やかに過ごせるよう配慮します。痛みや不快感がある場合は、鎮痛薬や鎮静薬を使用し、症状を和らげます。家族が付き添い、本人に声をかけたり、手を握ったりすることで、心の通った時間を過ごします。終末期のケアは、本人だけでなく家族にとっても大切な時間です。
また、家族への心理的サポートも重要です。長期間の介護による疲労や喪失感に対して、カウンセリングやサポートグループが役立ちます。終末期を迎えた後も、グリーフケア(遺族ケア)を通じて、家族の心の回復を支援します。医療や介護の専門家と連携しながら、本人と家族が納得できるケアを受けることが大切です。
まとめ
若年性アルツハイマーは、65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症で、働き盛りの世代に大きな影響を及ぼします。初期には記憶障害や思考力・言語機能の低下、意欲の減退、感情コントロールの難しさが見られ、遺伝的要因や生活習慣病、脳内へのアミロイドβやタウタンパクの蓄積が発症に関与するといわれています。診断後の平均的な生存期間はおよそ10年で、病状は段階的に進行し、終末期には全面的な介護や緩和ケアが必要となります。若年性アルツハイマーは、本人だけでなく家族全体に影響を与える病気です。早期発見と適切な治療により進行を緩やかにすることが可能であり、医療や介護の専門家と連携しながら、本人と家族が納得できる時間を過ごすことが何よりも大切です。

