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物忘れがひどい場合に考えられる病気は?加齢による物忘れと認知症の違いについて解説

 公開日:2024/02/21
物忘れ病気

物忘れは疲れているときや忙しいときなどに起きることは珍しくありません。しかし普段の生活や特に忙しくないにも関わらず、物忘れが頻発するのは身体に何らかの不調が起きているサインであることが多いです。

今回は物忘れがひどい場合に考えられる病気や、加齢による物忘れと認知症の違いについて解説します。認知症は年齢を重ねてから対策するのではなく、生涯において気を付ける必要があります。

普段の生活を改める良い機会として、ぜひ参考にしてください。

田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

物忘れがひどい場合に考えられる病気は?

 
女性の頭 頭皮ケアイメージ
物忘れは医学的にいえば記憶障害に該当し、短期的な記憶が困難になっている状態を指します。具体的には普段から使っている持ち物の場所を動かしていないのに見つからない、さっき出会った人の名前や教えてもらった物の名前が出てこないなどです。
こういった症状は、年齢によって増える特徴があります。しかし脳を始めとする身体の一部に異変が起き、結果として物忘れがひどくなっている場合もあるため注意が必要です。
ここからは物忘れが症状に含まれている病気について解説します。有名なものから、普段聞きなれない病気もあるため、ぜひ参考にしてください。

認知症

物忘れが激しくなる、という症状で代表的な病気の一つとして認知症があげられます。認知症は脳の働きが低下することが原因で、加齢による物忘れと違い日常生活において支障をきたす場面が多いです。
個人差はありますが認知症になると脳の知的な部分を司る分野が変化し、性格が変化し怒りっぽくなったり他人に攻撃的になる場合があります。
認知症と加齢による物忘れの症状の大きな違いの一つはもの取られ妄想です。もの取られ妄想は認知症の症状の一つで、記憶からなくなってしまったお金や道具を誰かに取られたと思い、相手を疑ったり場合によっては暴力を振るうこともあります。
性格や言動の変化は認知症が進行している可能性があるため、普段から家族や周囲の人が先に認知症の兆候に気づくことは珍しくありません。

脳腫瘍

脳腫瘍は、頭蓋骨の内側にある多種多様な組織のいずれかに腫瘍ができる病気です。ホルモンバランスの乱れや健康習慣に起因する場合に加え、がんの転移によって発生する腫瘍も存在します。
脳腫瘍の発生が疑われる症状として頭痛や視野障害などさまざまなものがありますが、その中の一つが認知機能障害です。腫瘍が発生した近くが認知機能を司る部位だった場合、認知症のような性格の変化や物忘れの症状が現れます。
朝に強烈な頭痛が生じ、昼過ぎには痛みが穏やかになるというのが特徴的な症状です。

水頭症

 
人間の脳は柔らかいため傷付くことがないよう、頭蓋骨に覆われています。その頭蓋骨を満たす液体は脳脊髄液(のうせきずいえき)と呼ばれ、絶えず循環して一定を保っているのが特徴です。
この脳脊髄液が何らかの理由で正常に機能しなくなると、脳の機能に障害が発生します。このような症状を水頭症と呼び、高齢者は原因が不明の特発性正常圧水頭症を発症する場合が多いです。
認知症の症状のほかに歩行がすり足になったり歩行速度が低下したりする歩行障害や、尿を我慢できなくなる尿失禁が特徴としてあげられます。

慢性硬膜下血腫

 
慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかっしゅ)は頭部を負傷した直後には発見されず、時間が経過してから発生する病気です。時間をかけて脳と脳を覆う膜の隙間に血液が溜まり、吐き気や物忘れといった症状が発生します。
どの程度の負傷で発生するかは個人差があり、ドアにぶつかったときの衝撃が原因で発生する場合もあるため自覚症状がなく発症することも珍しくありません。
アルコールの摂取量が多い場合や血液が固まりにくくなる効果を持つ薬を飲んでいる場合、発症リスクが高くなる傾向があります。

うつ病

 
部屋でうつ病・体調不良に悩む日本人女性
精神的ストレスや肉体的不調が原因で発症するうつ病は、思考能力の低下や思考を行うための労力が通常より増えるのが特徴です。うつが原因の物忘れは症状が軽減されれば解消され、認知症に繋がる心配も基本的にありません。
しかしうつ状態と加齢による物忘れが同時に発生すると、性格の変化や被害妄想に取りつかれ認知症と周囲に誤解される危険性があります。
うつ病が原因で一見認知症のような症状がでる状態は仮性認知症と呼ばれ、抗認知症薬で改善しなかった患者さんに対し抗うつ薬に切り替えたら完治したという例も存在するなど見分けるのは非常に困難です。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は橋本病とも呼ばれ、30-40代の女性に多く発症が確認されています。
何らかの原因で自己免疫異常を起こし、全身の代謝が低下することが体調不良を起こす原因です。代表的な症状は顔を始めとする部位のむくみや、気力の低下ですがその中に物忘れの増加が含まれています。
甲状腺機能低下症の治療は、甲状腺ホルモン薬によってホルモンを補充するのが一般的です。病院で定期的にホルモンの値を確認しながら薬を調整していくため、順調に回復すれば副作用が出ることもなく症状が安定します。

高次脳機能障害

 
高次脳機能障害は、病気や外傷が原因で脳機能に障害が出た結果日常生活や社会生活に支障が出るのが特徴です。歩行や会話は問題なく行えても、物忘れのような症状が発生する場合や怒りっぽくなるなど認知症を疑われる症状が発生します。
高次脳機能障害に繋がる病気や怪我はさまざまのため、年齢・性別を問わず発症する可能性が高い症状です。
これまでできたことができなくなり周囲を困惑させたり、自身の変化を受け入れられずストレスを溜め込んでしまうと別の病気に繋がりさまざまな悪影響が懸念される症状でもあります。

加齢による物忘れと認知症の違い

医師 薬剤師 歯科医師 白衣を着た男性
加齢による物忘れと認知症の違いとして、性格や考え方の変化が認知症では物忘れと同時に発生することが多いです。自身のケアレスミスを他人のせいにする、無理な理由で忘れたことを誤魔化すような言動は認知症の初期症状の代表例としてよく取り上げられます。
また車の運転のミスが多くなったり、会話が噛み合わなくなるといった瞬間的な判断力の衰えも認知症の症状です。物忘れの症状だけに注目せず、言動や行動の変化が認知症かどうかを見極めることに繋がります。

加齢による物忘れの特徴

問診票を持つ女性医療従事者 診察する
加齢による物忘れの特徴は、記憶の一部が欠落したような物忘れです。
食事を行ったことは覚えているのに何を食べたかは覚えていない、何かを購入しようと思って出かけたのに購入するのを忘れて買い物から帰ってくるなどは加齢による物忘れが疑われます。
また時間や曜日を間違えることはあっても、時間をかけて確認すれば認識できることも加齢による物忘れの特徴です。認知症の初期段階に入ると、忘れている事実を認識できなくなり昔行っていた行動もできなくなるため判断の基準にしましょう。

認知症の種類

 
説明をする医師
ここからは認知症の種類について解説していきます。認知症を発症する原因となる病気は複数あるため、適切な治療を受けることは症状の進行を抑えるために重要です。
また種類によっては生活習慣によって、発症のリスクが変わる場合もあります。特に飲酒やストレスといった要因は認知症のリスクに繋がるため、注意しましょう。

アルツハイマー型認知症

 
一般的にアルツハイマー病と呼ばれる症状であり、認知症の大部分はアルツハイマー型認知症です。65歳未満で発症する場合は若年性アルツハイマー病と呼ばれることもあり、発症割合を見ると女性の方が多く見られます。
初期症状として同じことを何度も聞き返したり、物忘れや年月日といった日時に関する感覚も曖昧になるのが特徴です。進行すると計算能力や段取りが上手くできなくなり社会生活に支障をきたします。
根本的な治療法は、現在見つかっていません。発症リスクを高める予防に繋がる生活習慣として、過度のストレスや運動不足があげられます。
毎日の有酸素運動やバランスのとれた食事を取ることが予防に繋が繋がるため、日頃の生活に取り入れるようにしましょう。

脳血管性認知症

 
脳血管性認知症は脳梗塞・脳出血といった脳の血管に関する病気が原因で発症する認知症です。特徴はしびれやめまいといった症状も同時に現れる点ですが、物忘れ以外の症状が現れない脳血管性認知症も存在します。
進行スピードが一定ではなく、脳の血管に影響を与えている病気が進行することで段階的に悪化するのが特徴です。アルツハイマー型認知症の進行を止める薬の効果が薄く、MRIを行った際に頭部CTで脳血管の異常に気づく場合もあります。
高血圧・糖尿病といった生活習慣病がある場合リスクが高まるため注意しましょう。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は身体の動作が遅くなるパーキンソン病に近い症状や実際には見えないものが見える幻視に加えて、アルツハイマー型認知症の症状がでる認知症です。
レビー小体型認知症は女性に比べ、男性の発症率が高いという特徴があります。また認知症の症状が抑えられている状態とはっきりと現れている状態に分かれやすく、記憶障害が遅いなど目立つ症状は大きく違うのも特徴の一つです。
パーキンソン病に近い症状はパーキンソニズムとも呼ばれ、パーキンソン病に使用される治療薬を用いることで改善が期待できます。

前頭側頭型認知症

 
物忘れの症状が強く現れず、症状を自覚することがない認知症として前頭側頭型認知症があげられます。この病気は前頭・側頭部の萎縮により発症する認知症です。
初めてこの症状を報告した医師の名前を取り、ピック病とも呼ばれます。発生する症状として性暴言や暴力を振るうようになり、欲しいと思ったら無断で商品を持ち去るといった衝動的な行動を取ることも珍しくありません。
患者数が少なく投薬治療では有効な治療が見つかっていないため、行動療法や周囲の変化といった環境を整えることが重要です。

物忘れで病院を受診する目安は?

 
考えごとをする日本人女性
加齢に伴って記憶力の低下や行動意欲が衰えるのは正常な生理現象ですが、重大な病気のサインを見過ごさないために線引きをする必要があります。
代表的な例としてこれまで問題なくできていた計画を立てての行動ができない、整理整頓が面倒に感じるようになるのが認知症の初期症状です。
記憶に関する機能は低下せず、性格の変化や同じ発言・行動を繰り返すようになる病気も複数存在します。これらの行動を認識したり、家族や職場で指摘されたりするようになったら病院の受診を検討しましょう。

物忘れの予防法は?

PCを持つ白衣の女性
物忘れは生活習慣病が関連している場合もあり、予防策を建てることが可能です。ここからは、物忘れの予防策として有効なものを解説していきます。
物忘れの予防は家族や他者とのコミュニケーションや生活習慣の改善といった、日常生活の中で行えるものも多く普段の生活から予防に取り組むことができます。
自身の体を大切にすることや、健康的な生活を送ることを心がけることが物忘れを悪化させない一番の近道です。

ストレスをためない

ストレスはうつ病をはじめとしたさまざまな病気の原因になるため、ため込まないようにしましょう。ストレスを発散するため、暴飲暴食や過度の飲酒を行い健康を害するケースも珍しくありません。
暴飲暴食やアルコールの過剰摂取は脳梗塞や脳出血のリスクに繋がり、結果として脳血管性認知症の引き金となることも考えられます。そのため普段の生活からストレスをため込まないようにすることが重要です。
ストレスの発散方法は個人によってさまざまな方法があるため、自身にあった方法を探していきましょう。

ウォーキングなど軽い運動を習慣にする

公園をランニングする人
アルツハイマー型認知症は、30分程度の有酸素運動を行うことで発症のリスクを下げることができます。ストレッチや筋トレも効果が確認されていますが、それらと比べても有酸素運動がもっとも効果的です。
ほかに発症のリスクを下げることに繋がる習慣として、将棋や囲碁といった同じ展開を繰り返さず新しい刺激を経験できるゲームで遊ぶことがあげられます。
脳や身体に刺激を与えることがアルツハイマーの予防には効果的です。普段の生活からこれらの要素を取り入れ、予防に繋げましょう。

睡眠不足に注意する

ストレッチをするパジャマ姿の女性
アルツハイマーの発症に関連する成分としてアミロイドβと呼ばれる老廃物が関係していることが分かっています。このアミロイドβは軽度認知障害を調べる際に参考にされるなど、認知症に深く関わりのある成分です。
脳の老廃物は日中に多く生産され、それらは身体と脳が両方眠っている状態であるノンレム睡眠の状態に排出が行われます。このノンレム睡眠の時間が短かったり、きちんとした睡眠が行われていない場合、十分に老廃物の排泄が行われません。
結果としてアルツハイマーのリスクが高まってしまうため、普段から睡眠を十分に取り脳の老廃物を排出することが重要です。

編集部まとめ

男性医師
今回は、物忘れと病気の関連性について解説しました。物忘れと同時に発症する病気として代表的なものは認知症ですが、認知症以外にもさまざまな病気の原因となり、どれも早期治療が重要です。

認知症と一言でいっても発症する場所や原因によっては症状も異なるため、普段の生活に気を付けるだけでなく自覚症状や他者からの指摘を受けた場合はそれを受け入れ病院で検査を受けましょう。

物忘れや脳の病気は自分自身では気づけないことも多いため、ほかの人とのコミュニケーションが重要です。生活の中で人と関わる機会が少ない場合は、趣味を語る場所や地元のイベントに参加することが結果として自身の健康に繋がります。

この記事の監修医師