お菓子で血糖値が急上昇?「血糖値スパイク」の仕組みと将来の糖尿病リスクを解説

お菓子に含まれる糖質は体内で素早く分解され、血液中のグルコース濃度を急激に上昇させます。この急激な血糖値の変動は、エネルギー供給や代謝調節に影響を及ぼし、繰り返されると健康上の問題につながる可能性があります。精製された糖質を多く含む食品は消化吸収が速く、血糖値が短時間で大きく変動しやすい特徴があります。血糖値の上昇速度や変動パターンを理解することで、適切な食事選択や摂取タイミングの工夫が可能になります。

監修医師:
滝村 英幸(医師)
2006年4月 聖マリアンナ医科大学病院 初期臨床研修医
2008年4月 済生会横浜市東部病院 循環器内科
2016年12月 総合東京病院(東京都中野区) 循環器内科
2017年 総合東京病院(東京都中野区) 心臓血管センター
2022年4月 総合東京病院(東京都中野区) 心臓血管センター 循環器内科 心臓血管インターベンション科 科長
【専門・資格・所属】
内科・循環器内科一般
冠動脈カテーテルインターベンション治療
末梢血管カテーテル治療
フットケア
心血管超音波検査
日本内科学会認定内科医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定心血管カテーテル治療専門医
日本心エコー図学会SHD心エコー図認定医
お菓子摂取による血糖値の急激な上昇
お菓子に含まれる糖質は、体内で素早く分解され、血液中のグルコース濃度(血糖値)を急激に上昇させます。この血糖値の変動は、エネルギー供給や代謝調節に影響を及ぼし、繰り返されると健康上の問題につながる可能性があります。血糖値の変動メカニズムと、それが身体に及ぼす影響を理解することが重要です。
糖質の消化吸収と血糖値の上昇速度
お菓子に含まれる糖質は、主に単糖類(ブドウ糖、果糖)や二糖類(ショ糖、麦芽糖)といった形で存在します。これらは消化管で速やかに分解され、小腸から血液中に吸収されます。吸収されたグルコースは血糖値を上昇させ、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて、グルコースを細胞内に取り込む働きを促します。お菓子のような精製された糖質を多く含む食品は、消化吸収が速く、血糖値が急激に上昇しやすい特徴があります。この急激な上昇は、グリセミック指数(GI値)という指標で表され、高GI食品ほど血糖値の上昇が速いとされています。一方、食物繊維やタンパク質、脂質を含む食品は消化吸収が緩やかで、血糖値の上昇も穏やかです。血糖値の急激な上昇は、インスリンの大量分泌を招き、その後の血糖値の急降下につながることがあります。
血糖値スパイクと身体への影響
お菓子を食べた後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象は、血糖値スパイクと呼ばれます。血糖値スパイクが頻繁に起こると、血管内皮細胞が傷つき、動脈硬化のリスクが高まる可能性が指摘されています。また、インスリンの過剰分泌が続くと、細胞のインスリン感受性が低下し、インスリン抵抗性が生じることがあります。インスリン抵抗性は、2型糖尿病の前段階と考えられる状態です。さらに、血糖値の急降下は、倦怠感、集中力の低下、イライラといった症状を引き起こし、再び甘いものを求める欲求が高まる悪循環を生むことがあります。血糖値の変動を穏やかに保つためには、食物繊維を含む食品を先に食べる、ゆっくり噛んで食べる、間食の量を調整するといった工夫が有用です。
まとめ
お菓子への依存傾向は、脳の報酬系の働きや習慣化、血糖値の変動といった複数の要因が絡み合って生じます。摂取量の増加や欲求のコントロールの難しさを感じる場合は、行動パターンの見直しや環境調整、専門家への相談が有効です。お菓子の過剰摂取は、血糖値の急激な変動を引き起こし、長期的にはインスリン抵抗性や糖尿病のリスクを高める可能性があります。また、カロリー過多による肥満は、メタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病のリスク因子となり、心血管疾患などの重篤な合併症につながる恐れがあります。さらに、お菓子に含まれる糖質は、口腔内細菌による酸の産生を促し、むし歯の発生リスクを高めます。これらのリスクは、食事内容の見直し、規則正しい生活習慣、適切な口腔ケア、定期的な健康診断や歯科受診といった予防行動により軽減できます。無理のない範囲で継続可能な対策を選び、自身の健康状態を把握しながら、お菓子との適切な付き合い方を見つけることが大切です。気になる症状がある場合や、改善が難しいと感じる場合は、医師や管理栄養士、歯科医師などの専門家に相談し、個別の助言を受けることを検討してください。




