お酒はがんの原因になるのか?がんリスクを抑えるための具体的な飲酒の目安【医師解説】

アルコールの摂取は、複数のがんの発症リスクを高めることが国内外の研究で明らかになっています。アルコールが体内で代謝される際に生成されるアセトアルデヒドには、DNA(遺伝子)を損傷する作用があり、これががん細胞の発生につながる可能性があります。特に食道がんや肝臓がん、乳がんなどとの関連が強く指摘されています。本記事では、アルコールが発がんリスクを高める仕組みと関連するがんの種類、そしてがん予防のための飲酒習慣の見直し方について解説します。体質による飲酒リスクの違いや医療機関での相談の重要性についても触れていきます。

監修医師:
藤原 大輔(医師)
1999年香川大学卒業
1999年4月香川大学放射線科勤務
2000年4月岡山大学第二内科勤務
2000年6月十全総合病院勤務
2001年6月岡山赤十字病院勤務
2011年5月クリニック開業
2022年8月以降体調不良により離職中
【免許・資格】
総合内科専門医
消化器内視鏡学会専門医
消化器病学会専門医
目次 -INDEX-
がん予防のための飲酒習慣の見直しと実践
がんのリスクを減らすためには、飲酒習慣を適切に管理することが重要です。飲酒量を抑え、他のがん予防対策と組み合わせることで、総合的なリスク低減が期待できます。
がんリスクを低減する飲酒量の目安
がん予防の観点からは、飲酒量は少なければ少ないほど良いとされています。しかし現実的には、完全な禁酒が難しい方も多いため、リスクを低く保つ飲酒量を知っておくことが大切です。
日本人を対象とした研究では、1日あたりの純アルコール量を23グラム未満に抑えることで、がんのリスクを低く保てる可能性が示されています。これはビール中瓶1本程度、日本酒1合程度に相当します。週に換算すると、週150グラム未満の純アルコール量が一つの目安となります。
また、一度に大量に飲む飲酒パターン(ビンジドリンキング)は避けるべきです。たとえ週の総量が同じでも、一度に大量に飲むことで身体への負担が大きくなり、がんリスクも高まることが指摘されています。飲酒する際には、ゆっくりと時間をかけて飲むことが望ましいでしょう。
包括的ながん予防対策の重要性
飲酒習慣の見直しとともに、総合的ながん予防対策を実践することが重要です。禁煙はがん予防において効果的な対策の一つです。喫煙とアルコール摂取の両方を行うと、がんのリスクが相乗的に高まるため、両者を控えることが強く推奨されます。
バランスの取れた食事もがん予防に寄与します。野菜や果物を十分に摂取し、塩分や加工肉の摂取を控えることが推奨されています。また、適度な運動習慣を持ち、適正体重を維持することも大切です。
定期的な健康診断やがん検診を受けることも忘れてはなりません。早期発見により、がんの治療成績は大きく向上します。特に飲酒習慣がある方は、関連するがんの検診を定期的に受けることが望ましいでしょう。
体質による飲酒リスクの違いと個別対応
アルコールの影響には個人差があり、体質によって健康リスクが異なることが知られています。遺伝的な酵素の働きや性別、年齢などによって、同じ量の飲酒でも身体への影響は大きく異なります。
アルコール代謝酵素の遺伝的多型
アルコールを代謝する酵素には遺伝的な個人差があります。特に、アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の働きには大きな違いがあり、これが飲酒時の反応や健康リスクに影響を与えます。
ALDH2の働きが正常な方は、アセトアルデヒドを速やかに分解できるため、アルコールに強い体質です。一方、ALDH2の働きが生まれつき弱い、または欠損している方は、少量の飲酒でも顔が赤くなったり、動悸や吐き気を感じたりします。日本人を含む東アジア人では、約40%の方がこのタイプに該当するといわれています。
ALDH2の働きが弱い方は、少量の飲酒でも食道がんや頭頸部がんのリスクが高まることが報告されています。体内にアセトアルデヒドが長時間留まることで、DNAへの損傷が蓄積しやすくなるためです。このような体質の方は、特に飲酒を控えることが推奨されます。
性別・年齢による飲酒リスクの違い
女性は男性と比べて、同じ量のアルコールを摂取しても血中濃度が高くなりやすく、肝臓への影響も受けやすい傾向があります。これは体格の違いや体内の水分量、アルコール代謝能力の差によるものです。そのため、女性の適正飲酒量は男性よりも少なめに設定されることが一般的です。
加齢によってもアルコールの代謝能力は低下します。高齢になるほど肝臓の機能が衰え、アルコールの分解に時間がかかるようになります。また、高齢の方では薬を服用している方も多く、アルコールと薬の相互作用にも注意が必要です。年齢を重ねるにつれて、飲酒量を見直すことが大切です。
妊娠中や授乳中の女性は、完全な禁酒が推奨されています。アルコールは胎盤を通過して胎児に影響を与え、胎児性アルコール症候群を引き起こす可能性があります。安全な飲酒量は存在しないため、妊娠の可能性がある場合にも飲酒を控えることが望ましいでしょう。
医療機関での相談と治療の重要性
お酒による健康問題は、自己判断で対処するのではなく、医療機関で適切な診断と治療を受けることが重要です。早期の相談が、より深刻な状態への進行を防ぐことにつながります。
受診を検討すべきサインと症状
以下のような症状や状況がある場合には、医療機関への相談を検討すべきでしょう。健康診断で肝機能の数値異常を指摘された、飲酒後に睡眠の質が悪い、日中の疲労感が強い、飲酒量が徐々に増えている、飲酒をやめられないと感じる、家族から飲酒について心配されるといったサインは、早めの対応が必要です。
また、身体面での症状として、黄疸、腹部の張り、むくみ、食欲不振、体重減少、手の震えなどが現れた場合には、すでに肝臓や他の臓器に重大な影響が出ている可能性があります。これらの症状がある場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
がんリスクに関しても、定期的な検診を受けることで早期発見が可能です。特に飲酒習慣がある方は、消化器系のがん検診や婦人科検診を定期的に受けることが推奨されます。
適切な診療科と治療の流れ
飲酒による健康問題の相談先としては、まず内科や消化器内科が適しています。肝機能の評価や脂肪肝の診断、生活習慣の指導などを受けることができます。睡眠の問題が主訴の場合には、睡眠外来や呼吸器内科も選択肢となります。
アルコール依存症が疑われる場合には、精神科や心療内科を受診することが望ましいでしょう。依存症の治療には専門的な知識と経験が必要であり、適切な医療機関での治療が回復への近道となります。
治療の流れは、初診時の問診と検査から始まります。飲酒歴、生活習慣、既往歴などを詳しく聞き取り、血液検査や画像検査で身体の状態を評価します。その結果に基づいて、禁酒指導、生活改善、薬物療法などの治療方針が決定されます。定期的な通院により、経過を観察し、必要に応じて治療内容を調整します。
まとめ
お酒と健康の関係は複雑であり、睡眠、肝臓、脂肪肝、がんといったさまざまな側面から影響を受けます。適度な飲酒を心がけ、自分の体質や生活状況に合わせた飲酒習慣を築くことが大切です。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談し、専門的な指導を受けることで、健康な生活を維持することができるでしょう。本記事で提供した情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。ご自身の健康状態については、必ず医師にご相談ください。




