アルコール性脂肪肝から肝硬変へ?お酒が肝臓に与える負担とがんリスクを医師が解説

肝臓はアルコールを分解する主要な臓器であり、飲酒による影響を直接的に受ける部位の一つです。継続的な飲酒は肝細胞に持続的な負担をかけ、脂肪肝やアルコール性肝炎、さらには肝硬変といった深刻な肝疾患の原因となる可能性があります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、障害が進行しても自覚症状が現れにくい特徴があります。本記事では、アルコールが肝臓に与える負担の実態と、脂肪肝の発症メカニズムや進行、そして肝臓を守るための具体的な対策について解説します。

監修医師:
藤原 大輔(医師)
1999年香川大学卒業
1999年4月香川大学放射線科勤務
2000年4月岡山大学第二内科勤務
2000年6月十全総合病院勤務
2001年6月岡山赤十字病院勤務
2011年5月クリニック開業
2022年8月以降体調不良により離職中
【免許・資格】
総合内科専門医
消化器内視鏡学会専門医
消化器病学会専門医
目次 -INDEX-
アルコール性脂肪肝の発症メカニズムと進行
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。アルコール性脂肪肝は、継続的な飲酒が原因で発症し、適切な対応がなされない場合、より深刻な肝疾患へと進行するリスクがあります。
肝臓への脂肪蓄積が起こる理由
アルコールを摂取すると、肝臓ではアルコールの代謝が優先的に行われるため、脂肪酸の分解が後回しになります。その結果、肝臓内に脂肪が蓄積しやすくなります。また、アルコールの代謝過程で生じる物質が、脂肪の合成を促進し、分解を抑制する作用もあります。
継続的な飲酒によって、肝細胞内に中性脂肪が増え続けると、肝臓全体の5%以上に脂肪が蓄積した状態となり、これが脂肪肝と診断されます。アルコール性脂肪肝は、飲酒習慣のある方であれば短期間で発症する可能性があり、男性では1日平均60グラム以上、女性では40グラム以上の純アルコール量を5年以上継続すると発症リスクが高まるといわれています。ただし、個人差があり、これより少量でも発症する方もいます。
脂肪肝の段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断や血液検査、超音波検査などで偶然発見されることが多いです。しかし、この段階で飲酒習慣を見直せば、肝臓は元の状態に回復する可能性が高いとされています。
脂肪肝から肝炎・肝硬変への進行
アルコール性脂肪肝を放置し、飲酒を続けると、肝臓に炎症が起こるアルコール性肝炎へと進行することがあります。肝炎では肝細胞の破壊が進み、発熱、腹痛、黄疸といった症状が現れることもあります。この段階になると、禁酒だけでは改善が難しく、医療機関での治療が必要となります。
さらに肝炎が慢性化すると、肝臓に線維化が起こり、肝硬変へと進行します。肝硬変は肝臓が硬く小さくなり、正常な機能を失った状態です。この段階では、腹水、むくみ、黄疸、意識障害といった重篤な症状が現れ、生命に関わる合併症を引き起こすこともあります。また、肝硬変は肝臓がんの発症リスクも高めることが知られています。
脂肪肝から肝硬変への進行は、個人の体質や飲酒量、飲酒期間によって異なりますが、早期に発見し適切に対処することで進行を防ぐことが可能です。定期的な検査と医師の指導のもと、飲酒習慣を見直すことが重要です。
脂肪肝の診断と治療における重要ポイント
脂肪肝の早期発見と適切な治療介入は、より深刻な肝疾患への進行を防ぐために不可欠です。血液検査や画像検査を通じて状態を把握し、生活習慣の改善に取り組むことが基本となります。
脂肪肝の検査と診断方法
脂肪肝の診断には、血液検査、画像検査、問診などが用いられます。血液検査では、肝機能を示すGOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTPなどの数値を確認します。これらの数値が基準値を超えている場合、肝臓に何らかの異常がある可能性が示唆されます。
超音波検査(エコー)は、脂肪肝の診断において非侵襲的で有用な方法です。超音波画像では、脂肪が蓄積した肝臓は白く輝いて見えるため、視覚的に脂肪肝の有無や程度を判断することができます。より詳細な評価が必要な場合には、CT検査やMRI検査が行われることもあります。
また、飲酒歴や生活習慣に関する問診も重要です。1日の平均飲酒量、飲酒期間、飲酒の頻度などを正確に伝えることで、アルコール性か非アルコール性かの鑑別が可能になります。医師に正直に飲酒状況を伝えることが、適切な診断と治療につながります。
脂肪肝の治療と生活改善の基本
アルコール性脂肪肝の治療において重要なのは、飲酒を控えることです。軽度の脂肪肝であれば、禁酒または大幅な飲酒量の削減によって、数週間から数ヶ月で肝臓の状態が改善することが期待できます。完全な禁酒が難しい場合でも、飲酒量を減らすことで進行を遅らせることは可能です。
食事療法も重要な治療の一環です。高カロリー、高脂肪の食事を避け、野菜や魚、大豆製品を中心としたバランスの取れた食事を心がけます。肥満がある場合には、適切なカロリー制限と運動により体重を減らすことも効果的です。
定期的な経過観察も欠かせません。血液検査や画像検査を定期的に受けることで、肝機能の改善や悪化を把握し、治療方針を適宜修正することができます。医療機関と連携しながら、継続的に生活習慣の改善に取り組むことが大切です。
アルコールとがん発症リスクの科学的根拠
アルコールの摂取は、複数のがんの発症リスクを高めることが国内外の研究で明らかになっています。アセトアルデヒドによるDNA損傷やホルモンバランスへの影響など、さまざまなメカニズムが関与しています。
アルコールが発がんリスクを高める仕組み
アルコールが体内で代謝される際に生成されるアセトアルデヒドには、DNA(遺伝子)を損傷する作用があることが確認されています。DNAが損傷を受けると、細胞の正常な機能が乱れ、がん細胞が発生しやすくなります。また、アルコールは体内の葉酸(ビタミンB群の一種)の吸収を妨げることでも、DNAの修復機能を低下させます。
アルコールはホルモンバランスにも影響を与えます。特に女性において、アルコールの摂取は血中のエストロゲン濃度を上昇させることが報告されており、これが乳がんのリスクを高める一因と考えられています。
さらに、アルコールは口腔や食道、胃などの粘膜を直接刺激し、炎症を引き起こします。慢性的な炎症は細胞の異常増殖を促し、がんの発生につながる可能性があります。喫煙とアルコール摂取を併用すると、これらのリスクが相乗的に高まることも知られています。
アルコール摂取と関連するがんの種類
国際がん研究機関(IARC)は、アルコール飲料を「ヒトに対して発がん性がある」グループ1に分類しています。アルコール摂取と関連が強いとされるがんには、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんなどがあります。
特に食道がんと肝臓がんは、アルコール摂取との関連が強く指摘されています。日本人を対象とした大規模研究では、1日あたりの純アルコール摂取量が増えるほど、これらのがんの発症リスクが上昇することが示されています。また、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが生まれつき弱い方は、少量の飲酒でもリスクが高まる傾向があります。
女性では、たとえ少量の飲酒であっても乳がんのリスクが上昇することが複数の研究で報告されています。1日あたり10グラムの純アルコール摂取でも、乳がんリスクがわずかに増加するとのデータもあります。ただし、これらは統計的な傾向であり、個人のリスクは遺伝的要因や生活習慣全般によって異なります。
まとめ
お酒と健康の関係は複雑であり、睡眠、肝臓、脂肪肝、がんといったさまざまな側面から影響を受けます。適度な飲酒を心がけ、自分の体質や生活状況に合わせた飲酒習慣を築くことが大切です。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談し、専門的な指導を受けることで、健康な生活を維持することができるでしょう。本記事で提供した情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。ご自身の健康状態については、必ず医師にご相談ください。




