3ミリ以上の幅や色ムラに注意!爪の黒い線がメラノーマかを見分けるチェック法

爪に生じるほくろは縦状の黒い線として現れ、加齢とともに出現頻度が増える傾向があります。多くは良性の色素沈着ですが、日本人のメラノーマの約10〜20パーセントが爪に発生するため、注意深い観察が欠かせません。特に母指や母趾に好発し、初期には縦線として現れますが、進行すると幅が広がったり爪周囲の皮膚にまで色素が及んだりします。爪の変化は見過ごしやすいため、定期的なセルフチェックが重要です。

監修医師:
高藤 円香(医師)
爪にできるほくろの特徴
爪に生じるほくろは、爪母と呼ばれる爪の根元部分に存在するメラノサイトから色素が産生され、爪甲に縦状の黒い線として現れます。この縦状色素線条は加齢とともに出現頻度が増し、50歳以降では比較的よく見られる所見です。
爪甲色素線条の多くは良性の母斑細胞性母斑や単なる色素沈着ですが、悪性黒色腫である可能性も否定できません。爪のメラノーマは日本人のメラノーマ全体の約10から20パーセントを占め、特に母指や母趾に好発します。初期には爪に黒い縦線が現れ、徐々に幅が広がったり色が濃くなったりします。
進行すると爪周囲の皮膚にも色素が広がり、爪が変形したり欠損したりすることもあります。爪のメラノーマは診断が遅れやすく、発見時にはすでに進行している場合も少なくありません。そのため、爪の変化に気づいた時点での早期受診が極めて重要です。
良性の爪甲色素線条と悪性の見分け方
良性の爪甲色素線条は幅が均一で2から3mm以下、色調が一定で薄い茶色から黒褐色を呈します。線の幅や色は時間が経過してもほとんど変化せず、爪の成長に伴って根元から先端まで一定の状態を保ちます。複数の爪に同時に出現することもあり、この場合は良性である可能性が高まります。
一方、悪性を疑う爪甲色素線条は幅が3mm以上で不規則に広がり、色調にムラがあります。線の辺縁がぼやけていたり、爪周囲の皮膚にまで色素が及んでいる場合は要注意です。この爪周囲への色素沈着はハッチンソン徴候と呼ばれ、メラノーマに特徴的な所見とされます。
短期間で線の幅が明らかに太くなる、爪が縦方向に割れる、爪床から出血するといった変化も悪性を示唆します。これらの変化に気づいた場合は、自己判断せずに専門医の診察を受けることが推奨されます。爪の変化は見過ごしやすいため、定期的なセルフチェックが大切です。
爪のほくろの診断と治療
爪甲色素線条が認められた場合、皮膚科でダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いた観察が行われます。ダーモスコピーでは色素の分布パターンや血管構造を詳細に評価でき、良悪性の鑑別に有用です。しかし最終的な診断には組織学的検査が必要となるため、疑わしい場合は爪母部の生検が検討されます。
生検では爪を一部除去して爪母組織を採取し、顕微鏡で細胞の性状を調べます。生検後は爪が一時的に変形することがありますが、多くの場合は数ヶ月で正常に近い状態に戻ります。メラノーマと診断された場合は、病変部を含めた指趾の切断術が標準治療となることもあります。早期であれば爪母を含む局所切除で済む場合もあるため、早期発見が極めて重要です。
まとめ
ほくろは日常的に目にする皮膚病変ですが、時に悪性黒色腫であることがあります。形状の非対称性、辺縁の不整、色調の不均一、直径の増大、経時的変化といった特徴を持つ場合は、早期に皮膚科を受診することが重要です。
メラノーマは早期発見により治療の選択肢が広がり、予後の改善が期待できます。日常的な皮膚の観察を習慣化し、異常があれば自己判断せずに専門医の診察を受けることが大切です。




