「近視なら老眼にならない」は誤解!眼鏡をかけると近くが見えにくい理由と対処法を解説

老眼と近視は、どちらも見え方に影響を与えますが、その原因と性質は大きく異なります。近視は眼球の構造的な問題であり、老眼は調節機能の低下という機能的な問題です。近視の方が老眼になると、裸眼では手元がある程度見える一方で、眼鏡をかけると近くが見えにくくなるという独特の状態が生じます。遠近両用眼鏡や老眼鏡の併用が必要になる場合が多く、適切な矯正方法を選ぶことが求められます。

監修医師:
柿崎 寛子(医師)
老眼と近視の関係
老眼と近視は、どちらも見え方に影響を与える状態ですが、その原因と性質は大きく異なります。しかし、日常生活では両者が複雑に関係し合い、視力に影響を及ぼします。
老眼と近視の発生メカニズムの違い
近視は、眼球の奥行きが長すぎる、または角膜や水晶体の屈折力が強すぎるために、遠方からの光が網膜の手前で焦点を結んでしまう状態です。そのため、遠くのものがぼやけて見えます。近視は主に遺伝的要因や環境要因によって生じ、学童期から思春期にかけて進行することが多いです。
一方、老眼は加齢に伴う水晶体の硬化によって、近くにピントを合わせる調節力が低下する現象です。若い頃は水晶体が柔軟で、毛様体筋の働きによって厚みを変え、近くのものにも焦点を合わせることができました。しかし、年齢とともに水晶体は弾力性を失い、近くを見るときに必要な調節が困難になります。
つまり、近視は眼球の構造的な問題であり、老眼は調節機能の低下という機能的な問題です。このため、近視の方でも老眼は発症しますし、遠視の方も老眼になります。
近視の方が老眼になった場合の見え方の変化
近視の方が老眼になると、独特の視力状態が生じます。裸眼では遠くが見えにくい一方で、手元はある程度見えるという状態が維持される場合があります。これは、近視の方は元々近くにピントが合いやすいためで、老眼による調節力の低下を、近視がある程度相殺する形になります。
しかし、近視矯正用の眼鏡やコンタクトレンズを装用している状態では、遠方視力が改善される代わりに、手元が見えにくくなります。若い頃は眼鏡をかけたままでも手元が見えていたのに、老眼の進行とともに、眼鏡をかけたままでは近くが見えにくくなるという変化が起こります。
このため、近視の方が老眼になった場合、遠近両用眼鏡や老眼鏡を併用する必要が生じます。遠くを見るときは近視矯正用の眼鏡、近くを見るときは眼鏡を外すか老眼鏡を使用するという使い分けが必要になります。
強度の近視の方は、裸眼での近見視力が良好なため、日常生活では眼鏡を外して対応できる場合もありますが、軽度から中等度の近視の方は、遠近両用レンズの使用を検討することが推奨されます。
近視と老眼の両方がある場合、視力矯正の方法は複雑になるため、眼科の専門の医師と相談しながら、自分の生活様式に適した矯正方法を選ぶことが重要です。
まとめ
老眼は加齢に伴う自然な変化ですが、適切な対処によって生活の質を大きく改善できます。コンタクトレンズや眼鏡による矯正、レーシックなどの外科的治療、目薬の使用など、選択肢は多様です。近視や遠視などの屈折異常がある場合は、その影響も考慮した矯正が必要になります。定期的な検診によって、ほかの眼疾患の早期発見にもつながります。
老眼は誰にでも訪れる変化ですが、適切な知識と対処によって、その影響を抑えることができます。目の健康は生活の質に直結するため、日頃から意識的にケアすることが大切です。




