バセドウ病はなぜ女性に多い?ホルモンの影響や、ヨード過剰・特定の薬による発症リスク

日常的に摂取する食品や使用する医薬品が、バセドウ病の発症や症状の経過に影響することがあります。特にヨードを含む食材や特定の治療薬については注意が必要です。適切な知識を持つことで予防や症状の管理に役立てることができます。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
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ヨード摂取と薬剤の影響
日常生活で摂取する物質や使用する薬剤がバセドウ病の発症や経過に影響を与えることがあります。適切な知識を持つことで予防や症状管理に役立ちます。
ヨード過剰摂取の影響
ヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモンの原料となる必須微量元素です。日本では海藻類を多く摂取する食文化があるため、諸外国と比較してヨード摂取量が多い傾向にあります。適量のヨードは甲状腺機能の維持に必要ですが、過剰摂取は甲状腺機能に悪影響を及ぼすことがあります。
バセドウ病の素因を持つ方が大量のヨードを摂取すると、甲状腺機能亢進症が誘発または悪化する可能性があります。昆布やわかめなどの海藻類、ヨード含有のうがい薬、造影剤などには注意が必要です。ただし、通常の食事での海藻摂取程度であれば過度に心配する必要はありません。極端な制限や過剰摂取を避け、バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。
薬剤による誘発
特定の薬剤がバセドウ病の発症や甲状腺機能異常を引き起こすことがあります。代表的なものとして、不整脈の治療薬であるアミオダロンが挙げられます。この薬剤はヨードを多く含み、長期使用により甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。
また、インターフェロン製剤などの免疫系に作用する薬剤も、自己免疫性甲状腺疾患を誘発することが知られています。これらの薬剤を使用する際は、定期的な甲状腺機能検査が推奨されます。薬剤使用中に動悸や体重変化などの症状が現れた場合は、速やかに主治医に相談することが重要です。
女性に多い理由
バセドウ病は男性よりも女性に多く発症する疾患で、男女比は約1対4から1対5と報告されています。この性差の理由は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。
女性ホルモン(エストロゲン)が免疫システムに影響を与え、自己免疫疾患の発症に関与している可能性が指摘されています。エストロゲンは免疫細胞の活性を調節する作用があり、女性では自己免疫反応が起こりやすい状態にあると考えられています。
また、妊娠や出産に伴うホルモン環境の大きな変化が、免疫システムに影響を与える可能性もあります。産後にバセドウ病を発症するケースは少なくなく、妊娠中に一時的に症状が改善しても産後に再燃することもあります。女性特有の身体変化が自己免疫疾患のトリガーとなりうることを理解し、症状に注意を払うことが大切です。
まとめ
バセドウ病は多様な症状を引き起こす自己免疫疾患ですが、早期発見と適切な治療により症状をコントロールすることが可能です。動悸や体重減少、手の震え、目の症状など気になる変化があれば、内分泌内科や甲状腺専門外来を受診することが推奨されます。特に女性や若年者、家族歴のある方、喫煙習慣のある方はリスクが高いため注意が必要です。甲状腺機能の検査は血液検査で簡単に行えます。症状を放置すると心臓や骨に影響が出ることもあるため、早めの対処が重要です。適切な治療により多くの方が日常生活を問題なく送れるようになるでしょう。
気になる症状がある場合には、内科・内分泌内科や眼科を受診し、専門的な評価と治療を受けることをおすすめします。




