緑内障は「治らない」のか?失われた視野は戻らないが、進行を食い止める治療の可能性

緑内障は一度失われた視野を元に戻すことはできないという意味で「治らない」疾患ですが、適切な治療によって進行を抑えることは可能です。治療の目的は現状維持にあり、継続することで長期的な視機能を保てます。ここでは、緑内障が「治らない」理由と、進行を抑える治療の可能性について説明します。

監修医師:
柿崎 寛子(医師)
目次 -INDEX-
緑内障は治らないのか
緑内障は一度失われた視野を元に戻すことはできないという意味で「治らない」疾患ですが、適切な治療によって進行を抑え、生活に支障のない視機能を維持することは可能です。治療の目的と限界を正しく理解することが重要です。
緑内障が「治らない」理由
緑内障によって障害を受けた視神経は再生しません。視神経は中枢神経の一部であり、一度ダメージを受けると元の状態に戻ることはないのです。このため、失われた視野を回復させる治療法は現時点では存在しません。
緑内障の治療は、「進行を止める」「進行を遅らせる」ことが目標です。眼圧を下げることで視神経への負担を軽減し、残っている視神経を守ることが治療の本質です。したがって、治療を始めても視野が広がることはありませんが、それ以上悪化しないようにすることが期待できます。
この点を理解していないと、「治療しているのに良くならない」と感じて治療を中断してしまう方がいらっしゃいます。しかし、治療の効果は「現状維持」にあり、治療を続けることで10年後、20年後も同じ見え方を保つことができるのです。
進行を抑える治療の可能性
緑内障の進行を抑える治療の主軸は眼圧を下げることです。眼圧が高い方はもちろん、正常眼圧緑内障の方でも、眼圧をさらに下げることで進行を抑制できることが研究で示されています。
点眼薬による治療では、プロスタグランジン関連薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、α刺激薬、ROCK阻害薬などが使用されます。これらの薬剤は眼圧を下げる仕組みが異なるため、複数を組み合わせることでより効果的な眼圧コントロールが可能になります。
点眼薬で十分な効果が得られない場合は、レーザー治療や手術が検討されます。レーザー線維柱帯形成術は外来で実施でき、房水の流れを改善して眼圧を下げます。手術では線維柱帯切除術や緑内障インプラント手術などがあり、より確実な眼圧降下が期待できます。
近年では、視神経を保護する薬剤(神経保護薬)の研究も進められていますが、現時点では確立された治療法には至っていません。将来的には、眼圧を下げるだけでなく、視神経自体を守る治療が加わることで、より効果的な進行抑制が可能になることが期待されています。
まとめ
緑内障は初期症状に乏しく、進行すると視野が失われる疾患ですが、早期発見と適切な治療により、生涯にわたって良好な視機能を維持することは十分に可能です。40歳を過ぎたら定期的な眼科検診を受け、リスク要因がある方は特に注意深く経過を観察してください。治療の継続が進行を抑える鍵であり、点眼薬や手術によって眼圧をコントロールすることで失明を防ぐことができます。緑内障は「治らない」疾患ですが、「進行を止められる」疾患です。不安や疑問があれば、眼科専門医に相談し、納得のいく治療を選択してください。




