緑内障は視野が徐々に狭くなる疾患ですが、初期段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。視野の周辺部から欠けていくため、両眼で補い合い異変に気づきにくい傾向があります。ここでは、緑内障の初期にどのような変化が起こるのか、自覚しにくい視野欠損の進行と、急激に症状が現れる急性緑内障発作について解説します。
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三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科
緑内障の初期症状とは
緑内障は眼圧の上昇や視神経の脆弱性によって視野が徐々に狭くなる疾患ですが、初期段階では自覚症状がほとんどないことが大きな特徴です。視野の中心部分は比較的最後まで保たれやすく、周辺部から欠けていくため、両眼で補い合ってしまい異変に気づきにくい傾向があります。
自覚しにくい視野欠損の進行
緑内障の初期症状として重要なのは、視野の一部が欠ける「視野欠損」です。この視野欠損は大変ゆっくりと進行するため、患者さん自身が気づくことは稀といえます。日常生活では両眼を使って物を見ており、片方の眼の視野が欠けていても、もう片方の眼が補うため、欠損部分を認識できない場合が多くあります。
視野欠損は周辺部から始まることが多く、中心部の視力は保たれるため、「見えにくい」という自覚症状につながりません。階段を踏み外しやすくなった、人や物にぶつかりやすくなったといった行動の変化が先に現れることもありますが、これらも加齢による変化と捉えられがちです。視野検査を受けて初めて、予想以上に視野が狭くなっていることを知る方も少なくありません。
さらに、脳が欠けた部分を周囲の情報で補完する働きもあり、視野の欠損部分を黒く感じるのではなく、あたかも見えているかのように感じてしまうことがあります。このため、病状がかなり進行するまで自覚症状が現れず、発見が遅れる要因となっています。
急性緑内障発作の症状
一方で、急激に眼圧が上昇する「急性緑内障発作」では、明確な症状が突然現れます。激しい眼痛、頭痛、吐き気や嘔吐、視力の急激な低下、眼の充血、光を見ると虹のような輪が見える「虹視症」などが特徴的です。
急性緑内障発作は閉塞隅角緑内障のタイプに多く見られ、眼の中の房水の流れが急に妨げられることで眼圧が短時間で著しく上昇します。眼圧が40〜80mmHg程度まで上がることもあり、正常範囲の10〜21mmHgと比較すると、いかに高い圧力がかかっているかがわかります。この状態を放置すると、数時間から数日で視神経が不可逆的なダメージを受け、失明に至る危険性があります。
急性緑内障発作は、薄暗いところでうつ伏せ寝をすると水晶体が前方移動するため、発作を起こすリスクが高まると言われています。隅角が狭いと言われたことのある方は、このような状況を避ける方がいいでしょう。また、夜間や暗い場所では瞳孔が開くため、隅角が狭い方は発作を起こしやすくなります。
急性緑内障発作の症状は大変強いため、症状が現れた場合はできるだけ早く眼科を受診し、適切な処置を受けることが重要です。
まとめ
緑内障は初期症状に乏しく、進行すると視野が失われる疾患ですが、早期発見と適切な治療により、生涯にわたって良好な視機能を維持することは十分に可能です。40歳を過ぎたら定期的な眼科検診を受け、リスク要因がある方は特に注意深く経過を観察してください。治療の継続が進行を抑える鍵であり、点眼薬や手術によって眼圧をコントロールすることで失明を防ぐことができます。緑内障は「治らない」疾患ですが、「進行を止められる」疾患です。不安や疑問があれば、眼科専門医に相談し、納得のいく治療を選択してください。