目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 知っておきたい! 「エナジードリンク×〇〇」が招く循環器系への影響【医師解説】

知っておきたい! 「エナジードリンク×〇〇」が招く循環器系への影響【医師解説】

 公開日:2025/11/15
エナジードリンクの循環器系への影響

エナジードリンクに含まれるカフェインは、心臓や血管といった循環器系にさまざまな作用をもたらします。心拍数の増加や血圧の上昇といった一時的な変化から、過剰摂取時に注意が必要な不整脈のリスクまで、循環器系への影響について解説します。特に心疾患の既往がある方や、複数本を短時間で摂取する場合の注意点についてもお伝えします。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

エナジードリンクの循環器系への影響

エナジードリンクの摂取は循環器系に対してさまざまな影響を与えます。これらの変化は一時的なものが多いものの、基礎疾患を有する方では注意が必要です。

心拍数と血圧への作用

カフェインの交感神経刺激作用により、エナジードリンク摂取後には心拍数の増加が認められることが一般的です。健康な成人では、摂取後30分から1時間で心拍数が安静時より10-20拍/分程度増加することが報告されています。この変化は通常2-4時間程度で元の水準に戻りますが、個人差により持続時間は変動します。

血圧に対しても同様の影響が認められ、収縮期血圧で10-15mmHg、拡張期血圧で5-10mmHg程度の上昇が一般的とされています。これらの変化は健康な方においては生理的な範囲内とみなされますが、高血圧症や心疾患の既往がある方では、より慎重な検討が必要です。

特に注意すべきは、複数本のエナジードリンクを短時間で摂取した場合や、ほかのカフェイン含有飲料と併用した場合です。このような状況ではカフェインの総摂取量が過多となり、循環器系への負荷が増大する可能性があります。

不整脈リスクと心機能への影響

エナジードリンクの過剰摂取により、心室性期外収縮や心房細動などの不整脈が誘発される症例が医学文献で報告されています。特に若年者において、大量摂取後の重篤な不整脈により救急搬送されるケースも散見されるため、摂取量の管理は重要です。

カフェインは心筋の収縮力を増強させる作用があり、これにより心拍出量の増加をもたらします。健康な心機能を有する方では問題となることは少ないものの、心不全や冠動脈疾患などの基礎疾患がある場合には、心臓への負荷増大により症状の悪化を招く可能性があります。

また、エナジードリンクに含まれるタウリンにも軽度の心機能への影響があることが知られており、カフェインとの相乗効果により予期しない反応が生じる可能性も否定できません。このため、心疾患の既往がある方や不整脈の自覚症状がある方では、摂取前に医師との相談を推奨します。

特に注意が必要なのは、アルコールとの併用です。カフェインの覚醒作用がアルコールの鎮静効果を打ち消し、酩酊感を自覚しにくくするため、過剰飲酒や急性アルコール中毒のリスクが増加します。

まとめ

エナジードリンクの作用と影響について、主要成分の作用機序から依存性の問題まで、医学的観点から包括的に解説しました。カフェインを中心とした成分による中枢神経系への作用は、一時的な覚醒効果や認知機能の向上をもたらす一方で、循環器系や消化器系への負荷、精神的な依存形成のリスクも伴います。

特に習慣的な摂取による耐性の形成や離脱症状は、医学的に認識される必要がある問題です。エナジードリンクの効果には著しい個人差が存在し、年齢、性別、体重、基礎疾患の有無などにより影響の現れ方が大きく異なります。心疾患、高血圧、胃腸疾患、腎機能障害、精神疾患の既往がある方では、摂取による症状悪化のリスクが高まるため、特に注意が必要です。

依存性の形成は生理学的な変化と心理学的な要因が複合的に関与する現象であり、早期の認識と適切な対応が大切です。段階的な減量法、離脱症状の管理、心理学的サポート、行動変容など、包括的なアプローチにより回復が可能とされています。

エナジードリンクの使用を検討される際は、ご自身の健康状態や生活習慣を考慮し、適切な摂取量と頻度を守ることが大切です。また、基礎疾患がある方や継続的な使用を予定される方では、事前に医師や薬剤師に相談されることをおすすめします。適切な知識に基づいた摂取判断と、必要に応じた専門医療機関での相談により、より健康的で効果的な使用が可能となるでしょう。

この記事の監修医師