子宮頸がんの前段階「異形成」とは?3つの分類と自然治癒・がん化のリスクを解説

子宮頸部異形成は、子宮頸がんに進行する可能性のある前がん病変です。軽度から高度まで3段階に分類され、進行度により治療方針が異なります。多くは自然治癒しますが、放置するとがん化することもあります。ここでは、異形成の特徴と進行過程を詳しく見ていきます。

監修医師:
西野 枝里菜(医師)
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医
子宮頸部異形成の分類と進行について
子宮頸部異形成は、子宮頸がんに進行する可能性がある前がん病変です。この段階で適切な対応を行うことで、がんの発症を防ぐことができるため、正しい知識を持つことが重要です。
異形成の3つの段階と特徴
子宮頸部異形成は、上皮内の異常細胞の割合により軽度異形成、中等度異形成、高度異形成の3段階に分類されます。
軽度異形成は、細胞の異常が軽度で、多くの場合は自然に正常な状態に戻ることがあります。この段階では、定期的な経過観察を行い、異常が続くかどうかを確認します。軽度異形成は、若い女性に比較的多く見られ、免疫力の向上とともに自然治癒することも少なくありません。
中等度異形成は、細胞の異常が中程度の状態です。この段階では、自然治癒する可能性もありますが、高度異形成や子宮頸がんに進行するリスクもあるため、より慎重な経過観察や治療が必要になる場合があります。年齢や患者さんの状況を総合的に判断して、治療方針が決定されます。
高度異形成は、細胞の異常が高度な状態で、放置すると子宮頸がんに進行する可能性が高いとされています。この段階では、一般的に治療が必要となり、円錐切除術などの外科的治療が検討されます。ただし、高度異形成の段階ではまだがんではないため、適切な治療により完治が期待できます。
HPV感染と異形成の発症メカニズム
子宮頸部異形成の主な原因は、子宮頸がんと同様にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。HPVにはさまざまな型があり、そのうち高リスク型と呼ばれる16型、18型をはじめとする約15種類の型が、子宮頸部異形成や子宮頸がんの原因となることがわかっています。
HPVに感染しても、多くの場合は免疫力により自然にウイルスが排除されます。しかし、何らかの理由でウイルスが持続的に感染し続けると、子宮頸部の細胞に異常が生じ、異形成が発生します。持続感染から異形成の発生、さらにがんへの進行は段階的に起こるため、定期的な検査により早期の段階で発見することが可能です。
異形成の発症には、HPV感染以外にも複数の要因が関与すると考えられています。喫煙は重要なリスク要因の一つで、喫煙により免疫力が低下し、HPVの持続感染や異形成の進行を促進する可能性があります。また、免疫抑制状態、多産、経口避妊薬の長期使用なども、リスク要因として報告されています。年齢も異形成の発症と進行に影響を与える要因です。若い女性では軽度異形成が自然治癒する可能性が高い一方で、年齢が上がるにつれて自然治癒の可能性は低下し、進行のリスクが高まる傾向があります。
まとめ
子宮頸がんは、予防と早期発見により克服可能ながんです。HPVワクチンによる一次予防と定期的な検診による二次予防、さらに異形成段階での適切な治療により、多くの場合で子宮頸がんの発症を防ぐことができます。
正しい知識を持ち、適切な予防行動を取ることで、健やかな人生を送ることができるでしょう。定期的な検診受診と、必要に応じた専門の医師への相談をおすすめします。
参考文献




