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「肥満症治療」は漢方・薬・食事の組み合わせ! 漢方を用いた肥満症の治療とは【医師解説】

 公開日:2025/11/07
漢方による肥満症治療の基本概念

漢方医学における肥満症治療は、西洋医学とは異なる視点から体質改善を図るアプローチです。個々の患者さんの体質や症状に応じて処方が決定される個別化医療の特徴を持っています。気・血・水のバランスを整えることで、根本的な体質改善を目指す漢方治療の考え方と、主要な処方について解説します。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

漢方による肥満症治療の基本概念

漢方医学における肥満症治療は、西洋医学とは異なる視点から体質改善を図るアプローチです。個々の患者さんの体質や症状に応じて処方が決定される個別化医療の特徴を持っています。

漢方医学における肥満症の捉え方

漢方医学では、肥満症を単純な体重増加ではなく、身体全体のエネルギー代謝や水分代謝の異常として捉えています。「気・血・水」のバランスの乱れが肥満症の根本原因とされ、これらの調和を回復することが治療の基本方針となります。 「脾胃虚弱」による消化吸収機能の低下、「痰湿」の蓄積による代謝異常、「血瘀」による循環障害など、複数の病理状態が肥満症の背景にあると考えられています。これらの状態は、現代医学の概念と照らし合わせると、消化機能低下、代謝症候群、血流障害などに相当するものと理解できます。 漢方診療では、患者さんの全身状態を詳細に観察し、体質判定を行います。舌診、脈診、腹診などの伝統的な診察法により、個々の患者さんに適した処方が選択されます。症状の改善だけでなく、根本的な体質改善を目指すことが、漢方治療の特徴的なアプローチです。

肥満症に使用される主要な漢方薬

肥満症治療に用いられる漢方薬は、患者さんの体質や症状に応じて多くの選択肢があります。代表的な処方として、防風通聖散、大柴胡湯、防已黄耆湯などが挙げられ、それぞれ異なる病態に対して使用されます。 防風通聖散は、実証体質で便秘傾向があり、腹部に脂肪が蓄積している方に適応されることが多い処方です。代謝促進と便通改善により、体重減少効果が期待できます。一方、大柴胡湯は、ストレス性の肥満やコレステロール値の高い方に用いられることが多く、肝機能の改善と脂質代謝の正常化を図ります。 防已黄耆湯は、虚証体質でむくみやすく、疲れやすい体質の方に適応される処方です。水分代謝の改善と基礎体力の向上により、健康的な体重減少を促進します。これらの処方は、単独使用だけでなく、患者さんの症状に応じて複数の処方を組み合わせることもあります。漢方薬の選択には専門的な知識が必要であり、漢方に精通した医師による適切な診断と処方が重要です。

まとめ

肥満症治療は多面的なアプローチが重要であり、薬物療法、漢方治療、食事療法それぞれに特徴と適応があります。患者さん個々の状態に応じた治療法の選択と、継続可能な治療計画の策定が成功の鍵となります。今後も新しい治療選択肢の開発と制度改善により、より効果的な肥満症治療の提供が期待されます。 肥満症の治療は、単なる「ダイエット」ではなく、健康寿命を延ばすための医療的取り組みです。薬物療法、漢方、食事療法のいずれも、医師の指導のもとで正しく行うことで効果が期待できます。一人で悩まず医師に相談して、自分に合った治療法を見つけましょう。

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