「急性ストレス障害」の原因や症状・予後はご存知ですかですか?【医師監修】
日本だけでなく、世界中に自然災害の恐怖を知らしめることとなった東日本大震災により、急性ストレス障害(ASD)のことを知った方も多いのではないでしょうか。
死に直面するほどの深刻な怪我を負ったり、トラウマ(心的外傷)になるほどの精神的衝撃を受ける体験に晒されたりすることで生じる特徴的なストレス症状群です。
平和だった日常が一変した地獄絵図かのような津波被害を目の当たりにした被災者以外でも、急性ストレス障害を発症した人が確認されています。
そもそも急性ストレス障害とは一体どういうものなのでしょうか。発症する原因・症状について詳しくお伝えしていきます。
せひ、お目通しくださいね。
※この記事はMedical DOCにて『「急性ストレス障害」の原因や症状・予後はご存じですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
急性ストレス障害の原因や症状
ストレス反応とは?
なおかつ、同じストレスを受ける環境において人によってストレス反応が異なることをご存知の人も多いのではないでしょうか。このストレス反応の違いは、ストレスを感じる元となる出来事を表すストレッサーと、無意識のうちに自らを防衛しつつストレスを管理する働きを表すコーピングの能力が異なるからです。
ストレッサーとコーピングの能力の間に大きな亀裂ができるため、ストレスが発生します。つまり、コーピングの資源となる経験値・コントロール力・パーソナリティ・行動力・サポート能力が弱い人ほどストレス反応が出やすくなるのです。ストレスを感じやすい人はコーピングの資源を増やしていく必要があります。
急性ストレス障害の原因を教えてください。
他者に起こった深刻な出来事を目撃したり、近親者や友人に起こったトラウマな出来事を知ったりすることで、その精神的衝撃を心の中で繰り返し再体験して避けようとするために不安が増大するのです。また、この病気は、感情が麻痺したり、自分が自己から切り離されているように感じたりする解離症状がみられます。
自らの存在が実在していないように感じることが特徴です。強烈または反復的な要因であればあるほど、発症リスクが高くなります。急性ストレス障害は心的外傷的出来事を経験して発症してから1か月未満で消失します。しかし、症状が1か月以上も継続する場合は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と病名が切り替わることを覚えておいてください。
どのような症状が出ますか?
- 過去の出来事をリアルタイムで追体験している感覚になる(フラッシュバック)
- 自らに罪があり、生き残ってしまったと負い目を感じる(サバイバーズギルト)
- 感情が麻痺し、現実から切り離されているように感じる(解離症状)
- 外傷的出来事を思い出させる全てのものを避けようとする(回避症状)
- 物音や刺激に過剰反応して不安や怒りで落ち着かず、眠れなくなる(覚醒症状)
心に深いダメージを負って発症する一過性の精神障害である急性ストレス障害は、解離症状が最も多くみられます。被災者であれば誰もが経験する一過性の正常なストレス反応です。
誰もが経験するほどの衝撃を受けて1ヶ月以上症状が続く場合は、精神科でカウンセリングを受けてみましょう。
編集部まとめ
自然災害の恐怖と共に認知度が上がった急性ストレス障害(ASD)について解説していきました。
誰もが言葉を失う体験をした人にとって、忘れることはできない衝撃的な外傷的出来事は大きなストレスをもたらします。
しかし、ありふれた病気といわれるほど誰にでも発症するリスクはあります。精神的にダメージを受けている状態では落ち着いて物事を見られなくなるかもしれません。
カウンセリングや甘えられるコミュニティーを見つけて、1ヶ月で自然治癒できるように心がけていきましょう。