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「ADHDの特徴」はご存知ですか?小児のADHDの割合も解説!【医師監修】

 公開日:2024/12/27
「ADHDの特徴」はご存知ですか?小児のADHDの割合も解説!【医師監修】

ADHDは発達障害のひとつです。乳幼児期では言葉の遅れや落ち着きのなさなどの症状があり、発達に偏りが見られることがあります。

一方でこのような症状は乳幼児では一般的に見られることであり、発達の遅れなども個人差があります。

そのため、発達障害と断定されることは少なく、発達障害の可能性ありなどで済まされるケースも少なくありません。

そのため、子ども時代には見過ごされた注意力散漫などの問題が大人になって目立つようになりADHDと診断されるケースも少なくありません。

この記事では、ADHDの原因や特徴や接し方、大人のADHDについて解説します。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

ADHD(注意欠如・多動性障害)の原因や特徴

辛そうな小学生の男の子とその母親

ADHDの原因を教えてください。

ADHDの発症原因はわかっておりません。わかっていることは、ADHDの方の脳内では神経伝達物質のドパミンやノルアドレナリンが不足していることです。神経伝達物質は、神経細胞同士が情報の伝達をする際に受け渡される化学物質です。人の気持ちや感情および行動を制御する重要な役割を果たしています。この神経伝達物質が不足していることがADHDと診断される一つの要因となっています。

ADHDの特徴を教えてください。

ADHDは注意欠如 ・多動性障害と呼ばれています。注意力や集中力、そして衝動のコントロールの部分が実年齢よりも2~3年程度の遅れが見られるのが特徴です。知的能力に関しては年齢相応の能力を持っているため、知能の遅れがある場合はADHDとは診断されません。ADHDの特徴として、ほかにも以下のようなものがあります。

  • 集中力散漫
  • うっかりミス
  • 気が散りやすい
  • 忘れ物が多い
  • 順序だてて取り組むのが苦手
  • じっとしていられない
  • 順番が待てないおしゃべり
  • 衝動的な行動
  • 人の邪魔をする

主に幼年期に多く年齢があがるにつれて一つひとつ解消されていきますが、社会人になっても解消されなければ医師の診断を仰ぐようにしましょう。

学齢期の小児のADHDの割合はどのくらいですか?

ADHDの有病率の割合は調査報告に差があるケースが少なくありません。それでも、総合すると学齢期の小児の3~7%程度がADHDと診断されています。男女別で見ると、男の子の方が女の子よりも3~5倍発症しやすいといわれています。ちなみに成人のADHDは2.5%であり、男女比は1:1となっています。

ADHD(注意欠如・多動性障害)の診断や治療

おくすり手帳と病院の領収証

ADHDで検査を受ける目安を教えてください。

幼児期や学童期さらには成人に至るまで、ADHDと診断される方の知的レベルは通常、あるいは通常よりも高いケースもあります。一方、普段の生活のなかで活動に集中できない程の集中力の欠如や、ものをなくしやすいなどの注意力散漫な行動が見られます。じっとしていられないなどの多動性の症状が見られた場合はADHDの検査を受ける目安と考えた方がよいでしょう。

どの診療科へ行けば検査を受けられますか?

ADHDが疑われる場合は以下の診療科で検査を受けることができます。

  • 小児科
  • 精神科
  • 心療内科

総合病院などでは診療科がさらに細かくなっており、児童精神科あるいは小児神経科などもあります。成人であれば、精神科や心療内科となります。ネットなどでADHDのセルフチェックサイトなどがありますが、医師による判断が必要ですので、上述したいずれかの診療科で検査を受けましょう。

ADHDの診断基準を教えてください。

ADHDの診断基準は、アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5に記述されており、以下の5つの条件がすべて満たされたときにADHDと診断されます。

  • 不注意と多動性が同年齢の発達水準に比べて強く認められる
  • 症状のいくつかが12歳以前より認められる
  • 家庭・学校・職場・その他の活動中など2つ以上の状況で障害になっている
  • 対人関係や学業的・職業的機能が障害されている
  • その症状がほかの精神疾患でうまく説明できない

以上の条件がすべてみたされることでADHDと診断されるため、検査は慎重を期します。また、虐待など家庭内の環境の影響を受けてADHDそのものの症状を引き起こすケースも少なくありません。そのため、小児科・小児神経科・児童精神科からの知見を集めて医学的評価を下します。

どのような治療を行いますか?

学齢期の子どものADHDの治療は以下の3つを主体にして行われます。

  • 環境への介入
  • 行動への介入
  • 薬物療法

まず子どもの生活環境を整えます。最初に考えるのは学校です。集団行動が基本となるため、教室内の机の位置など子どもが集中しやすい環境を整えます。授業1時限に集中できない場合は、集中できる10分15分など時間を区切ります。このような時間的介入も環境介入に含まれます。行動への介入はいわゆる飴と鞭です。正しい行動を褒め、間違った行動に対しては注意することで正しい行動を増やしていく試みです。薬物療法では、メチルフェニデートが不注意や多動性を軽減する可能性のある薬剤として保険適用されています。

ADHD(注意欠如・多動性障害)の子どもへの接し方や大人のADHD

考え事をする若い女性

ADHDの子どもへの接し方を教えてください。

医療以外でADHDの子どもへの接し方は、以下のことに気をつけるようにします。

  • 感情的な叱り方をしない
  • 褒め方を工夫する
  • 気が散りにくい環境を整える
  • わかりやすい指示の実践
  • 学習の課題を小分けにする
  • 休憩を適度に挟む

保護者に向けた子どもの接し方を学ぶプログラムも有効です。学校ではADHDに対する理解を深めた教師が担当し、家庭では保護者がADHDに対して理解を深め、子どもに対して正しい接し方をする必要があります。家庭や学校で子どもが伸びやかに育つ環境づくりを行いましょう。

大人のADHDについて詳しく教えてください。

軽度なADHDの場合、自身や周囲が多少の違和感があっても学齢期や中高大学などでは、個性ととらえられてADHDが発覚しないケースが少なくありません。一方で社会人になるとそれまである程度保護されてきたあるいは大目に見られていたことが、社会生活で通用しなくなります。生活では身辺自立や金銭管理、家事でうまくいかないケースも出てくるでしょう。深刻なのは仕事についてです。あらゆる責任が自身にのしかかってくるので、仕事上のうっかりミスなどは許されず、対人関係のトラブルも起こりかねません。ADHDが疑われる際は医療機関で正しく診断を受け、職場ではADHDに対して寛容な環境を求めるようにしましょう。

大人のADHDの相談先や受けられる支援があれば教えてください。

ハローワークに精神・発達障碍者雇用サポーターが配置されています。ADHDを含めた精神障害や発達障害のある求職者に対する支援です。障害特性を踏まえた就職支援や職場定着支援を行っている心強い存在です。また、雇用する側の事業主に対しても発達障害者の雇用に関係する課題解決の相談援助も行っています。さらに就職や就業支援として、地域障害者職業センターで職業リハビリテーションを実施しています。

編集部まとめ

ADHD
ADHDの子には、集中して物事に取り組めなかったり落ち着きがなかったりする症状が見られます。しかし知能の遅れはないため、個性の1つとして見過ごされることも少なくありません。

とくに昨今は個性が尊重され、個性を積極的に伸ばす時代です。そのため、大人になるまでADHDに気付かれないケースが少なくありません。

ADHDを発症している場合、適切な対応が求められます。ADHDに気付かないまま大人になると、社会に出てから大変な思いをすることもあります。

気になる症状がある場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

この記事の監修医師