「腹膜播種」の検査や治療方法はご存知ですか?【医師監修】
胃腸などの臓器で、日頃からその箇所の不調を持たれている方は聞かなくてもいらっしゃると思います。
一番気になる病気といえば胃癌などが有名どころだとあげられますね。けれど胃癌などの、癌関連の疾患である腹膜播種とはどのような病気なのかご存じですか?
意外と知られていないので、文字からは一見わかりにくいとのイメージを持たれたかと思います。
そこで今回は腹膜播種の症状と治療方法などについてやさしく紹介させていただきます。
※この記事はMedical DOCにて『「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」という初期症状のない「がん」はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
腹膜播種(ふくまくはしゅ)の検査や治療方法
どのような検査が行われますか?
腹膜内に穴をあけてカメラや鉗子(刃がないはさみのような手術器具のこと)を入れて、腹膜内だけでなく骨盤内など腹膜転移が起こりやすい箇所を調べ、場合に応じて腹膜内の一部分の切り取りが行われます。
この検査のメリットはお腹全体のような広範囲にわたっての開腹手術を行う必要がなくなることや、手術後体の痛みの軽減が可能になることです。患者さんの負担が少なくすむ方法として用いられています。
その他の検査というものは、腹腔細胞診といわれる腹腔内を洗浄したときに使用した生理食塩水を集めて、剥がれた細胞の検査を行う方法が用いられる場合も見られるようです。この検査は大体1時間もあれば完了し、検査結果は検査日の当日中に知ることが可能としています。
治療方法を教えてください。
抗癌剤の化学療法は飲み薬と点滴(点滴静脈注射)などが主流になっており、近年では注射液を直接腹腔に入れ込んだり(腹腔内化学療法)、温めた抗癌剤を腹腔に入れたりする方法(腹腔内温熱化学療法)が取られ成果を上げています。そして抗癌剤治療の目標は延命効果です。
ですが同様に腹膜播種に伴う症状に対抗するための緩和治療も重要といえるでしょう。緩和治療は例えば胃癌からの腹膜播種であったら胃のバイバス手術を施すなどの手段が取られます。
他の治療法にCART(腹水ろ過濃縮再静注法)という、腹水を抜いてろ過して再度点滴静注することで濃縮されたアルブミンなどの栄養素を体内に戻す方法も、全身状態が低下した患者さんには行われます。
手術が行われるケースはありますか?
先ほども腹膜播種の病気分類について触れた項目がありましたが、腹膜播種は厳密には原発癌がどの部位にできたのかにより病気分類に違いが見られる疾患とされます。しかしおおむねステージ4の位置づけです。
なぜなら、仮に胃のような部位を摘出することができても腹腔内に散らばった癌細胞を取りきることが難しいからです。そのため、腹膜播種が見つかると基本的に胃の切除は行わず、抗癌剤による治療が主になります。
編集部まとめ
いかがでしたか。
この記事は腹膜播種についての症状や治療法などを書かせていただいております。
腹膜内に癌細胞が広がってしまうと発症するということでしたが、広まってしまうと完全に癌細胞を取り除くことが難しくなるという疾患でした。
一か所に癌ができること自体が大変なのにその上広がるなんて、それだけでも身構えてしまいそうになる疾患でしたね。
癌になるとそれに伴う疾患なども気になることと思いますが、少しでも治療の方向はあると信じたいものです。
そこで覚えておきたいことは、個人の独断と偏見で治療方法を決めるのではなくどのような疾患であろうと、それに合った適切な医療を受けることが大切だということです。
まだ根治が大変だといわれている腹膜播種のような病気であっても、治療法が確立されているものもありますので、着実に治療を進めましょう。