「尿路結石」を繰り返す人は必見。手術で根本治療ができる“隠れた病気”の正体とは?【医師解説】

若年性の骨粗しょう症や尿路結石を繰り返すなどの場合は、もしかしたら原発性副甲状腺機能亢進症かもしれません。聞き慣れない病名かもしれませんが、放置すると様々な合併症を引き起こすことも。そこで原発性副甲状腺機能亢進症が疑われるときはどうしたらよいかについて、ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島の中口先生にメディカルドック編集部が詳しく話を聞きました。

監修医師:
中口 裕達(ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島)
編集部
治療について教えてください。どのような場合に手術が考慮されますか?
中口先生
手術(副甲状腺摘出術)は根治療法として推奨されますが、すべての患者さんが手術を受けるわけではありません。特に、血清カルシウムが基準値を大きく越える場合(手術適応の目安は基準値上限+1.0mg/dL)は、手術が推奨されます。また、骨密度低下がある場合(骨粗しょう症の診断基準であるTスコアが-2.5以下)、骨折リスクを軽減する目的で手術が考慮されます。さらに、腎機能低下や尿路結石を繰り返す場合にも、腎障害を予防するために手術が推奨されます。50歳未満の患者さんでは、たとえ症状がなくても長期的な合併症リスクを考慮し、手術が勧められます。
編集部
手術以外の治療法(経過観察や薬物療法)についても教えてください。
中口先生
軽症の場合には定期的な経過観察が選択されることもあります。経過観察をおこなう際には、血清カルシウムや骨密度、腎機能の変化を定期的に評価し、病状が進行していないかを確認します。薬物療法としては、骨密度低下を防ぐためにビスホスホネート製剤が使用されることがあります。
編集部
薬物療法がおこなわれることもあるのですね。
中口先生
はい。そのほか、カルシウム受容体作動薬であるシナカルセトは、副甲状腺ホルモンの分泌を抑え、血清カルシウム値を低下させる効果があります。特に、ご高齢で手術が困難な患者さんや、重篤な合併症がある患者さんなどでは、この薬物療法が有用です。さらに、エボカルセトもカルシウム受容体作動薬の一つであり、日本では副甲状腺摘出術が不能、または術後再発した原発性副甲状腺機能亢進症の治療に使用可能とされています。これらは根本的な治療ではなく、あくまで対症療法であるため、長期的な管理が必要になります。
編集部
この病気を放置すると、どのような合併症が起こる可能性がありますか?
中口先生
原発性副甲状腺機能亢進症を放置すると骨粗しょう症が進行し、骨折のリスクが著しく高まります。また、高カルシウム血症が持続することで、腎結石が繰り返し発生し、腎機能が低下することがあります。過剰な副甲状腺ホルモンはさまざまな場所へカルシウムを沈着させるため、動脈硬化が進行しやすくなることが報告されております。また、精神神経症状として、抑うつや認知機能の低下がみられることもあり、生活の質(QOL)を損なう要因となります。
編集部
生活習慣や食事で気をつけることはありますか?
中口先生
高カルシウム血症を悪化させないためには、水分をしっかり摂取し、脱水を防ぐことが重要です。脱水状態になると、血中カルシウム濃度がさらに上昇し、腎結石のリスクも高まるため、適切な水分摂取を心がけることが必要です。また、カルシウムの摂取については極端な制限を避け、適量を維持することが大切です。特に、過度なビタミンD摂取はカルシウム吸収を促進するため、医師の指導のもと適切な量を摂取することが推奨されます。さらに、適度な運動をおこなうことで骨密度を維持し、骨折リスクを低減させることが期待されます。
編集部
最後にメディカルドック読者へのメッセージがあれば。
中口先生
比較的珍しい疾患ですので、原発性副甲状腺機能亢進症と診断されるまで時間がかかってしまう場合も少なくありません。しかし、この病気はしっかり精査をして診断をつければ、治療が可能な病気です。最近では人間ドックなどで骨粗しょう症や高カルシウム血症を指摘され、それがきっかけとなって診断される症例も増えています。特に、尿路結石を繰り返す場合や高カルシウム血症の指摘をうけたことのある人は、内分泌専門医の受診をお勧めします。
※この記事はメディカルドックにて<「副甲状腺」の異常により尿路結石や骨粗しょう症をきたす疾患があるのをご存じですか?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
