目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 中高年の痩せ型女性は要注意! 自覚症状なしで進行する肺MAC症の初期症状と放置リスク【医師解説】

中高年の痩せ型女性は要注意! 自覚症状なしで進行する肺MAC症の初期症状と放置リスク【医師解説】

 公開日:2025/12/12
肺非結核性抗酸菌症の初期症状とは?

結核菌以外の抗酸菌が肺に感染して起こる病気のことを、肺非結核性抗酸菌症といいます。治療は年単位となるケースも多く、根気良く治療に取り組むことが必要です。「咳が長引いている」「汚い痰が続く」といった場合はもしかしたら肺非結核性抗酸菌症かもしれません。今回は「肺非結核性抗酸菌症」の初期症状について、ふかさわ呼吸器・消化器内科クリニックの蛸井先生に詳しく教えてもらいました。

蛸井 浩行

監修医師
蛸井 浩行(ふかさわ呼吸器・消化器内科クリニック)

プロフィールをもっと見る
2006年日本医科大学を卒業。同大学付属病院および千葉北総病院で呼吸器内科全般の研鑽を積み、茨城東病院で結核や非結核性抗酸菌症等の感染症診療にも従事。日本医科大学大学院で感染症研究により博士号を取得する。東京医科大学病院で講師を務め、湘南鎌倉総合病院を経て2024年ふかさわ呼吸器・消化器内科クリニック院長に。「呼吸器と内科の診療で、鎌倉の地域に貢献する」がモットー。

編集部編集部

肺非結核性抗酸菌症の初期症状には、どのようなものがありますか?

蛸井 浩行先生蛸井先生

多くの場合、初期では自覚症状がありません。しかし、年単位で病気が進行すると、咳や痰が長く続くようになります。やがて、痰の量が増え、色が黄や緑になります。それから血痰や喀血(かっけつ/咳とともに血が出ること)が見られるようになり、もっと進行すると痩(や)せが進んでしまったり、息苦しさを覚えたりするようになります。

編集部編集部

どのような機会に見つかることが多いのですか?

蛸井 浩行先生蛸井先生

肺非結核性抗酸菌症は、胸部レントゲン検査やCT検査などによって見つかることが少なくありません。例えば、たまたま受けた検診や人間ドックで見つかった、という方は多いです。

編集部編集部

「たまたま」ということもあるのですね。

蛸井 浩行先生蛸井先生

その一方、検診などで肺非結核性抗酸菌症が疑われても、大したことがないと様子見になってしまうことがあります。確かに、軽い所見なら翌年の再検査でも良いのですが、そのまま何年も放置されると、取り返しがつかないほどに悪化してしまうことはありえます。また患者さん側でも、「ずっと咳と痰が続くけれど、自分は気管支が弱いから仕方がない」「汚い痰が何年も出ているけれど慣れてしまった」と気にしないケースも多く見受けられます。しかし、そうした状態を放置すると病気が進行してしまい、「病院を受診した際には、ひどく重症化していた」ということになりかねません。

編集部編集部

どのような人に多く発症するのですか?

蛸井 浩行先生蛸井先生

中高年の痩せ型の女性に多く見られるとされています。なぜ女性に多くみられるのかは、わかっていません。昔は「女性は男性に比べて咳を我慢しがちだから」「女性の方が風呂場など水回りを掃除する機会が多いから」などと言われていましたが、本当のところはまだ明らかにされていません。しかし、日本では研究が進みつつあり、いずれ解明されるのではと期待しています。

編集部編集部

放置すると、どうなるのですか?

蛸井 浩行先生蛸井先生

一般的に、肺非結核性抗酸菌症は緩やかに進行します。5年や10年の単位で進行して、肺に穴が空いたり、気管支が拡張した状態(気管支拡張症)になったりすることがあります。気管支拡張症とは慢性的な炎症で気管支が拡がってしまった状態をいいます。こういった肺の空洞や拡張した気管支には、菌がたくさん生息してしまいます。そのため菌が肺の中で拡がっていく足がかりとなり、どんどん病気が進行してしまいます。さらに進行すると痩せが進んで痰を出す筋力も衰えたり、呼吸も難しい状態になったりすることで、命を落としやすくなります。

※この記事はメディカルドックにて<【咳・痰が気になる人必見】急増する「肺非結核性抗酸菌症」の症状と対処法>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修医師