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「心不全」とうまく付き合うためには?重症化・再入院を防ぐ薬と日常生活のポイント【医師解説】

 公開日:2025/12/04
心不全に対する治療法

高齢化に伴い、現在日本では心不全の患者数が増加しています。心不全で大切なのは、初期に適切な治療を行い、悪化させないように気を付けること。今回は心不全の治療方法について、ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島の源河先生に詳しく聞きました。

源河 朝広

監修医師
源河 朝広(ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島)

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東海大学医学部在籍6年次にニューヨーク医科大学へ公式留学。東海大学医学部卒業。沖縄県立中部病院ハワイ大学臨床研修プログラム修了。沖縄県立宮古病院内科勤務、東海大学大学院医学研究科修了、医学博士号取得、東海大学医学部循環器内科講師(本院、大磯病院、東京病院、八王子病院の各付属病院に勤務)、恵寿総合病院心臓血管センターセンター長、済生会川口総合病院循環器内科部長、横浜旭中央総合病院循環器内科部長などを経て現職。医学博士、日本内科学会認定医 、日本循環器学会専門医。

編集部編集部

治療にはどんな方法があるのですか?

源河 朝広先生源河先生

心不全の治療は、薬物療法が中心です。たとえば、血圧を下げたり心臓の負担を減らしたりする薬、余分な水分を体外に出す利尿薬、心臓保護作用のある薬などを組み合わせて使用します。特にβ遮断薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、MRA(非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、SGLT2阻害薬は心不全の代表的な治療薬です。これらを使用することで心不全患者の予後を大幅に改善することが示されています。

編集部編集部

重症の場合には?

源河 朝広先生源河先生

重症の場合は、ペースメーカーの一種である心臓再同期療法機器や心臓の拍動リズムを見守り、突然死を予防する除細動器を埋め込むことも検討されます。さらに進行したケースでは補助人工心臓や心臓移植が選択肢となることもあります。日本循環器学会や米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは、患者さん一人ひとりの病状に合わせた最適な治療を行うことが重要とされています。

編集部編集部

心不全は治りますか?

源河 朝広先生源河先生

心不全は“完全に元通り”になるというより、“うまく付き合っていく”病気です。とはいえ、今は薬やデバイスなどの治療がとても進歩しており、上手に管理すれば症状を抑え込むことが可能です。たとえば、以前は外出しづらかった方が、治療に取り組むことで散歩や買い物を楽しめるようになるケースもたくさんあります。「完治」でなくても「改善」を目指せますので前向きに取り組んでいきましょう。

編集部編集部

普段の生活で気をつけることは何ですか?

源河 朝広先生源河先生

日常生活では、塩分を抑えたバランスの良い食事と適度な運動、そして体重管理が大切です。特に塩分は1日6g以下を目安とするのが一般的で、日本循環器学会のガイドラインでも推奨されています。毎日体重を測ることで、急な増加(たとえば1~2日で2kg以上)があれば早めに異常のサインに気づけます。また、ウォーキングやストレッチ、体操などの軽い運動でも続けると心臓の機能維持に役立ちます。ただし、無理な運動は逆効果となる可能性もあるため、医師と相談しながら進めましょう。こうした生活管理の積み重ねが再入院や重症化の予防につながります。

編集部編集部

心不全が悪化しないようにするには、どうしたらいいですか?

源河 朝広先生源河先生

心不全が進行すると、呼吸困難やむくみが強まり、入退院を繰り返すことになりかねません。これを防ぐには、まずは処方された薬を正しく飲み続けることが大切です。少しでも息苦しさが増したり、体重が短期間で増えたりといったサインがあれば、早めに医療機関へ相談してください。日本を含む世界の主要学会でも、こうした「早期対応」が再入院率を下げるうえで重要と報告しています。受診や検査をこまめに行うことで、ご自身の心臓の状態を把握し、悪化する前に手を打つことが可能です。

編集部編集部

家族や周りの人の協力はどれくらい大切なのですか?

源河 朝広先生源河先生

心不全は長期的にケアが必要な病気のため、家族や友人など周囲のサポートが非常に重要です。一緒に減塩の工夫をしたり、運動の付き合いをしてもらったり、症状が急に変化していないか見守ってもらったりすることで、治療を継続しやすくなります。日本循環器学会や米国心臓協会(AHA)の提言でも、多職種や家族との連携が再入院を減らし、生活の質を高めるとされています。家族や身近な方も病気の知識を共有することで、患者さんが一人で抱え込まずに安心して治療に臨めるようになります。

編集部編集部

心不全治療の見通しはいかがですか?

源河 朝広先生源河先生

心不全の治療は年々進歩しており、新しい薬や機器が次々と開発されています。例えば、近年広く使われ始めたSGLT2阻害薬は心臓の負担を減らし、予後を改善する効果が期待されています。日本循環器学会でも、こうした新たな薬剤を積極的に取り入れることで重症化や再入院を防ぎ、元気な日常をなるべく長く続けることができるとしています。定期的な受診や生活管理を怠らず、疑問があればいつでも担当医に相談してください。

編集部編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。

源河 朝広先生源河先生

心不全は薬物治療が確立しており、きちんと病態をコントロールできれば、問題なく日常生活を送ることが可能です。そのため検診で心臓の異常を指摘されたら、自覚症状がなくても必ず専門医の診察を受けましょう。また、糖尿病や高血圧は心不全の大きなリスクとなります。それらの持病がある人は、診察と心臓のチェックを定期的に受け、日頃から健康を意識することが大切。特に、糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、40代以降から増え始めるのでこの年代の方は注意してください。

※この記事はメディカルドックにて<増加する「心不全」の初期症状と見逃されやすいサインとは? 治療法も医師が解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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