「肥大型心筋症」と診断されたら?心臓の負担を減らす薬物療法と生活で気をつけること【医師解説】

肥大型心筋症は、心臓を構成する筋肉が過度に厚くなる疾患です。決して珍しい疾患ではなく、日本でも比較的多く見られますが、突然死のリスクがあることはあまり知られていないかもしれません。どんな疾患なのか、ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島の源河先生にメディカルドック編集部が詳しく聞きました。

監修医師:
源河 朝広(ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島)
編集部
治療はどのような種類がありますか?
源河先生
治療法は、患者さんの病状や閉塞の程度によって異なります。薬物療法では、心拍数や血圧を下げて心臓の負担を軽くするβ遮断薬やカルシウム拮抗薬がよく使われます。また、抗不整脈薬であるジソピラミドやシベンゾリンも使われることがあります。閉塞が強く、症状が重い場合は、外科手術で厚くなった心筋を切除する「心筋切除術」や、カテーテルでアルコールを注入して局所的に心筋を壊す「経皮的中隔心筋焼灼術」を行うことがあります。
編集部
薬物療法ではどのような薬が使われますか?
源河先生
薬物療法の中心となるのは、心臓の拍動を抑えて負担を軽くするβ遮断薬や血管、心筋を弛緩させるカルシウム拮抗薬です。β遮断薬は血圧を下げ、心拍数を抑えることで、血液の出口が狭い場合でも心臓のポンプ機能を安定させる効果があります。一方、カルシウム拮抗薬は心筋の固さを軽減して血流をスムーズにし、胸の痛みや息切れの改善が期待できます。ただし、薬によっては血圧が下がりすぎたり、脈が遅くなりすぎたりなどの副作用が起こることがあります。そのため、用量の調整や副作用のチェックを行いながら、定期的に専門医と相談していく必要があります。また、閉塞型には閉塞の度合いを軽くするために抗不整脈薬であるジソピラミドやシベンゾリンも使われることがあります。また、合併する不整脈の種類によってはほかの抗不整脈薬や血液をサラサラにする抗凝固薬を使う場合もあります。
編集部
基本は薬物療法なのですね。
源河先生
はい。近年、心筋の収縮を調節する作用を持つ新しい薬のマバカムテン(Mavacamten)が開発され、閉塞性肥大型心筋症の患者さんに対して心室内の圧力差を軽減し、症状を改善する効果が期待されています。欧米および日本で行われた複数の臨床試験で有効性と安全性が報告されており、日本ではまだ未発売ですが、近い将来使用可能になることが期待されます。
編集部
そのほかにはどのような治療法がありますか?
源河先生
不整脈による突然死のリスクが高い方には、電気ショックで致死性の不整脈を止める植え込み型除細動器(ICD)の装着を検討します。最適な治療法は専門医による総合的な評価で決まり、定期的に再評価して必要に応じて治療を追加・変更します。
編集部
生活習慣で特に注意すべきことは何ですか?
源河先生
肥大型心筋症の方は、心臓に急激な負担をかけないよう、日常生活でいくつかのポイントに気をつける必要があります。まず、過度な飲酒や喫煙は血圧や心拍数を上昇させ、不整脈を誘発しやすくするので控えましょう。また、塩分の摂りすぎは高血圧を招き、心臓に余計な負担がかかるため、食事はできるだけ薄味を心がけます。水分不足も閉塞型を悪化させ、めまいや湿疹などを起こすことがあり、適度な水分補給を忘れないことが大切です。さらに、睡眠不足やストレスが重なると交感神経が活発になり、心拍数や血圧が上がりやすくなります。適度な運動やリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを上手にコントロールすることが望ましいです。
編集部
定期的な経過観察はどのくらいの頻度で必要ですか?
源河先生
肥大型心筋症は無症状の期間が長い場合でも、突然症状が現れたり、不整脈が生じたりするリスクがあり、定期的な受診が欠かせません。基本的には、少なくとも年に1回は心エコーや心電図、必要に応じてMRIなどの検査を行い、心臓の壁の厚みや血流状態、不整脈の有無を確認します。症状が出始めた方や、閉塞が強い方、不整脈を指摘された方は、より短い間隔で診察を受け、薬の調整や追加検査を行う場合があります。治療法を変更した直後や手術後などは、状態が落ち着くまで数週間から数か月おきに経過観察を行うこともあります。専門医の指示を守り、急な体調変化があれば早めに相談することで、合併症や突然死のリスクを抑え、長期にわたって安全に生活することが期待できます。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
源河先生
初めて「肥大型心筋症かもしれない」と感じた場合、まずは循環器内科を標榜している診療所やクリニックを探すのがおすすめです。そうしたクリニックでは、心エコーや心電図など基本的な検査設備が整っていることが多く、ある程度まで精密な評価が可能です。受診時には、これまでの健康診断結果や既往症の情報を持参するとスムーズです。特に高血圧や不整脈の既往がある方は、診察の際に医師にしっかり伝えましょう。インターネットや電話でクリニックの情報を確認し、「日本循環器学会が認定した循環器専門医」が在籍しているかどうかをチェックすると、より的確な初期診断が期待できます。早期の段階で検査を受け、必要に応じて大病院へ紹介してもらうことが、肥大型心筋症のリスクを適切に把握し、安全に治療を進めるための第一歩です。
※この記事はメディカルドックにて<突然死の恐れもある「肥大型心筋症」をご存じですか? 放置するとどうなる?【医師解説】>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。


