「肥大型心筋症」の初期症状は無症状?放置で心不全や突然死に至る危険性を医師が解説

肥大型心筋症は、心臓を構成する筋肉が過度に厚くなる疾患です。決して珍しい疾患ではなく、日本でも比較的多く見られますが、突然死のリスクがあることはあまり知られていないかもしれません。どんな疾患なのか、ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島の源河先生にメディカルドック編集部が詳しく聞きました。

監修医師:
源河 朝広(ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島)
編集部
肥大型心筋症の初期症状はどのようなものですか?
源河先生
多くの患者さんが無症状、あるいはわずかな症状を示すだけであり、たまたま検診で心電図検査やレントゲン検査を受けたときに、「脈が乱れている」「心臓が大きくなっている」などと異常を指摘され、肥大型心筋症の発見につながったというケースが大半です。
編集部
症状が出ないことが多いのですね。
源河先生
はい、症状が出るとすれば息切れ、呼吸困難、動悸など心不全と同様のものが見られます。ただし、肥大型心筋症は、血液の出口が狭くなる「閉塞性」と、狭くならずに肥大が中心となる「非閉塞性」に分かれ、閉塞性の方が症状が強く出やすい特徴があります。こうした区別が、治療方針や日常生活での注意点に大きく影響するため、専門的な検査と診断が欠かせません。
編集部
症状がひどくなると、どうなるのですか?
源河先生
症状がひどい場合には失神したり、心不全を起こしたりすることがあります。
編集部
症状がない段階でも危険な状態になることはありますか?
源河先生
肥大型心筋症は、初期に自覚症状がない場合でも、心臓が厚くなる速度や不整脈のリスクが高まるため、突然症状が出現する可能性があります。なかでも閉塞性タイプでは、心臓の出口部分が狭まるため、体を動かしたときや水分不足のときなどに血行障害が顕在化しやすく、激しい動悸やめまい、最悪の場合は失神を起こすこともあります。また、若年者でも激しい運動の最中に突然死に至ることがあり、無症状だからといって安全とは言えません。
編集部
運動制限は必要でしょうか?
源河先生
肥大型心筋症の患者さんにとって、運動は心臓に負担をかけすぎないよう注意する必要があります。特に閉塞性タイプで、血液の出口が狭くなっている方は、激しいスポーツや瞬発力を必要とする運動によって急激に心拍数が上昇し、血液供給が追いつかず、失神や重篤な不整脈を起こすリスクがあります。
編集部
すると、運動は控えた方が良いのですか?
源河先生
いいえ、必ずしもそうとは限りません。まったく運動しないと体力が低下し、かえって心臓に負担がかかる場合もあります。したがって、主治医や専門医の指導のもと、ウォーキングや軽めの筋力トレーニングなど、心拍数を急激に上げない範囲で定期的な運動を行うことが推奨されます。
編集部
放置した場合、どのような合併症やリスクがありますか?
源河先生
肥大型心筋症を放置すると、心臓の壁の肥大が進行し、血液の出口が狭くなる閉塞性タイプでは、失神や胸の痛み、息切れなどの症状が悪化する可能性があります。さらに、心臓の拍動が不規則になる不整脈が生じれば、脳梗塞の原因となる血栓ができやすくなったり、命に関わる重篤な心室性不整脈を引き起こすリスクも高まったりします。とくに若い方でも突然死が報告されており、無症状だからといって安心はできません。
編集部
放置は危険なのですね。
源河先生
はい。進行すると心臓のポンプ機能が低下し、いわゆる心不全の状態になり、日常生活で動くことさえ困難になる可能性もあります。したがって、症状がなくても検査と経過観察を続けることが重要です。
※この記事はメディカルドックにて<突然死の恐れもある「肥大型心筋症」をご存じですか? 放置するとどうなる?【医師解説】>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。


