もっと早く受診すればよかった! 「大人の発達障害」に気づいたらすぐ受診すべき理由【医師が解説】

現在、大人の発達障害が増えているといいます。厚生労働省が行った調査などでもその傾向は明らかになっており、今後、働きづらさや生きづらさを抱えた大人が増えることも予想されます。今回は、自分はもしかして発達障害かもしれないと気づいたらどうするべきかについて、 渋谷365メンタルクリニックの渡辺先生に教えてもらいました。

監修医師:
渡辺 佐知子(渋谷365メンタルクリニック)
編集部
自分はもしかして発達障害かもしれないと思ったら、どうすれば良いのでしょうか?
渡辺先生
まずは、セルフチェックをしてみましょう。インターネットで「発達障害 セルフチェック」と検索すれば、自分でスクリーニングできます。
編集部
セルフチェックで発達障害の疑いがあるとわかったら、どうしたら良いのでしょうか?
渡辺先生
発達障害専門の相談窓口や医療機関を訪れてみましょう。実際のところ発達障害を抱えていても、本当に受診してくれる方は氷山の一角なのかもしれません。自力で乗り越えている人もたくさんいらっしゃるとは思います。しかし、医師を頼れば、自力で頑張るよりももっと楽に、スムーズに問題を解決できるかもしれません。治療を受けることで得られるメリットはたくさんあります。
編集部
医療機関を訪ねることで、どのようなメリットがあるのですか?
渡辺先生
たとえば、いま仕事をしていてミスが多いなどの辛さを感じている人は、医学的な判断を会社へ説明することで働きづらい環境を調整できることがあります。部署を異動する、担当を変えてもらう、配置換えをしてもらうなど、主治医が会社に働きかけて環境を調整することができますので、悩みの解決につながるかもしれません。
編集部
ほかにはどんなメリットがありますか?
渡辺先生
医師が治療の必要性があると判断すればお薬を使うこともありますが、そうすることでこれまでの悩みが解消できることもあります。日頃から落ち着きなく、いつもフラフラと席を立つことが多かった方は、治療を開始することで離席することが少なくなるかもしれません。なかには「午前中、ずっと席に座っていることができたんです。集中力が増しました」と嬉しそうに報告してくれる患者さんもいらっしゃいます。あとはミスをする前に、「これをやれば、ミスを防げるかもしれないな」と事前に気づけるようになったことで、ミスが減ったという方もいます。
編集部
それは本人にとって、うれしい変化ですね。
渡辺先生
はい。自分自身が繰り返していたミスが減るという実感が得られたり、「これができた」「あれもできた」という実感が増えたりすれば、生きづらさが少しずつなくなってきます。また、必要があれば医師から会社へアドバイスをすることもあり、医学的な見地から働く環境をきちんと調整してもらえる、というメリットもあります。
編集部
医師が会社と自分の間に入ることで、いろいろ調整しやすくなるのですね。
渡辺先生
はい。医師が間に入ることで、自分で解決するよりも問題解決が早く、スムーズになります。発達障害で通院している患者さんたちは「もっと早く受診すればよかった」という方がほとんどです。一人で問題を解決しようと頑張りすぎず、困ったことがあったらぜひ医療機関を訪れてほしいですね。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
渡辺先生
発達障害に限らず、生きづらさや働きづらさなど、何かに悩んでいる場合は少しでも早く医療機関を受診してほしいと思います。悩んでいる間も自分を取り巻く環境のストレスは雪だるまのように増え続けていき、どんどん問題は大きくなってしまいます。受診したからといって、必ずしも治療が必要なわけではありませんし、問題がなければそのまま帰宅しておしまい、ということもたくさんあります。一人で悩まず、まずは気軽に話をする感覚で、クリニックを受診してみてください。
※この記事はメディカルドックにて<「働く大人の発達障害」が増加中 具体的な症状とその対処法をご存じですか?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。




