慢性腎臓病の診断基準をご存じですか? 腎臓の健康状態を知る2つのポイント
慢性腎臓病(CKD)は、進行しても初期症状がほとんどないため、早期発見が重要とされています。本記事では、CKDの診断基準として重要な2つのポイントである「尿たんぱくの存在」と「eGFR(推算糸球体ろ過量)」について解説します。腎臓の健康を守るために、尿検査や血液検査で確認すべき項目や、その背景にある仕組みを高柳ひかり先生に詳しく教えてもらいました。
著者:
高柳 ひかり(筑波大学附属病院 腎臓内科)
共著者:
山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系腎臓内科学教授)
編集部
CKDの診断基準を教えて下さい。
高柳先生
CKDは以下2つのいずれか、または両方が3か月以上続く場合に診断されます。
(1)尿検査や血液検査、画像検査、病理(腎臓の組織を顕微鏡で詳しくみる検査)で腎臓の異常が明らかである(特に尿検査では尿たんぱくの存在が重要)
(2)血清クレアチニンと年令、性別から推算した(eGFR:estimated Glomerular Filtration Rate)が60ml/分/1.73㎡未満である
編集部
尿検査では何を調べているのですか?
高柳先生
尿検査ではたんぱく尿や血尿の有無を確認します。たんぱく尿や血尿は腎臓のろ過装置である「糸球体」に何かしらの異常が生じていることを意味しています。たんぱく尿が多いほど腎臓の働きが低下しやすいと言われているため、健康診断や人間ドックなどで「尿たんぱくが出ている」と言われた場合には注意が必要です。
編集部
血液検査ではいかがでしょう?
高柳先生
血液検査では主に「血清クレアチニン値」を確認します。クレアチニンは筋肉から産生される老廃物で、腎臓で体外に排泄されます。腎臓の働きが低下すると、クレアチニンの排泄が滞り、血液中のクレアチニンが増加します。血尿やたんぱく尿、血清クレアチニン値は健康診断や人間ドックで簡便に調べることが可能です。
編集部
診断基準にある「eGFR」について教えてください。
高柳先生
eGFRの前に「GFR」から説明します。GFRとは「糸球体ろ過量」の英語表記の頭文字をとったもので、1分間あたりに糸球体でろ過される血液の量、つまり腎臓が尿を作る働きそのものを表しています。正常な状態においてGFRは90ml/分/1.73㎡以上となります。腎臓の働きが低下するに従ってGFRの値も低下し、60ml/分/1.73㎡未満が3か月以上続くと慢性腎臓病と診断されます。GFRを正確に調べる方法は手間がかかるため、日常的な診療ではその推算値(estimated)であるeGFRという指標を使います。これは血清クレアチニン値と年齢、性別によって算出される値です。
※この記事はMedical DOCにて【慢性腎臓病(CKD)の早期発見のポイントを医師が解説 診断基準の「eGFR」とはなにか】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。