慢性腎臓病や腎不全になったら… 治療法や日常から気を付ける改善点を医師が解説!
専門医の青柳先生によると、腎機能を維持するためには生活習慣の見直しが非常に重要だそうです。高血圧や糖尿病を抱えている方や、腎機能に不安がある方は食事や運動など、どのような事に気を付けたら良いのでしょうか? 健康診断で異常が指摘されてしまったら気を付けるべきポイントを伺いました。
監修医師:
青柳 誠(医療法人社団 けいせい会 西新井大師西腎透析クリニック)
編集部
腎機能を維持するためにはどうしたら良いでしょうか?
青柳先生
腎臓は、かなり悪くなるまで症状が出にくい臓器です。健康診断などで腎機能低下を指摘される、高血圧や糖尿病を長く罹患している方などは、自覚症状がなくても、一度腎機能を専門にしている医療機関に相談することをおすすめします。 また、たんぱく質や塩分の過剰摂取を控えることはもちろん、日常的な運動・バランスの良い食事など、いわゆる基本的な「健康的な生活」を心がけましょう。そして、適度に水分を補給することは良いのですが、あえて水を沢山飲むことはしないで下さい。逆に腎機能を悪化させてしまう可能性があります。
編集部
お酒やタバコ、コーヒーなどの嗜好品はやめたほうが良いですか?
青柳先生
アルコールは少量であれば腎機能への悪影響はないとされていますが、おつまみの多くは塩分が多いので摂りすぎに注意して下さい。タバコに関しては、肺がんや脳卒中、虚血性心疾患などのリスクや腎機能を悪化させる危険もありますので、禁煙しましょう。コーヒーは、腎機能保持に良いとする報告もあるため、過剰に摂取しなければ良いかと思います。 ほかには、感染をきっかけに腎機能が悪化することもよくありますので、手洗いや換気、必要に応じたマスクの着用などを意識してください。便秘予防や口腔内に菌を繁殖させないための口腔ケアも重要です。
編集部
腎臓専門の医療機関では、どんなことをしますか?
青柳先生
腎臓の専門医による問診や検査結果などから、リスクが高いと思われる生活習慣病の予防法の指導、管理栄養士による栄養指導、必要とされる薬剤の処方など、多角的なアプローチが受けられます。ここで重要なのは、腎機能が悪い原因を推定することです。 家族に同じような腎疾患をお持ちの方がいないか、糖尿病や高血圧などの併存疾患はないか、腎機能障害や検尿異常はいつから指摘されていたかを問診し、二次性の腎疾患をきたす全身疾患のスクリーニング検査、腎や尿路に異常がないかの画像評価などを行います。
編集部
腎機能障害の原因がわかったら、どのようなことをしますか?
青柳先生
例えばIgA腎症に対しては副腎皮質ステロイド薬、多発性嚢胞腎に対してはトルバプタン、ファブリー病に対しては酵素補充療法など、それぞれの病気に特異的な治療を行います。また腎機能を悪化させないための治療薬としては、従来RA系阻害薬(ACEI/ARB)や球形吸着炭がありましたが、最近は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬やSGLT2阻害薬など有効な治療薬が新規に続々と開発されています。早期に治療を開始すれば、一生透析を避けることも可能な時代になってきています。
編集部
管理栄養士による栄養指導は、例えばどんな指導がありますか?
青柳先生
たんぱく質制限および塩分6g未満の制限が基本です。若年で太り気味の方は、栄養過多で腎臓に負荷をかけている場合が多いので、たんぱく質制限と塩分制限を意識してもらいます。一方高齢で痩せ気味の方は、過度の食事制限で栄養状態を悪化させないように、エネルギー摂取を意識してもらいます。野菜・果物などはカリウムが豊富に含まれているので一律に制限されがちですが、便通を改善しカリウムを便から排出されやすくさせる、代謝性アシドーシスを改善する、腸内細菌のバランスを改善して腸腎連関へ好影響があるのではないかと言われているので、必ずしも制限することはありません。ただし、カリウムが上昇しやすい薬を服用している場合は、調理方法を少し工夫しましょう。カリウムは水に溶けやすい特徴があるので、水にさらす、一度茹でこぼすなどで低減できます。また、最近は減塩の調味料を検討する方が増えていますが、代用塩はナトリウムの代わりに塩化カリウムが使用されているため、腎機能低下がある場合は使用しない方が良いでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
青柳先生
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、腎機能が極めて悪くなるまで自覚症状が出ません。慢性腎臓病は早期発見・早期治療が有効ですので、定期的に健康診断を受け、腎機能障害を指摘された場合は速やかに医療機関を受診して下さい。尿蛋白2+以上あるいは血尿を伴う蛋白尿、eGFR40ml/分/1.73㎡以下(40歳未満では60以下)の場合などは、腎臓専門医の診察を受けることをおすすめします。
※この記事はメディカルドックにて【「健康診断で腎機能障害を指摘」その後にやるべきことを知っていますか? 沈黙の臓器“腎臓”の機能について】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。