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「妊娠中に脂肪肝」が起こると命を落とす可能性も… 「急性妊娠性脂肪肝」について医師に聞く

 公開日:2024/07/31
お酒を飲まなくても気をつけよう

肝臓に中性脂肪が蓄積することで起こる「脂肪肝」。主に、お酒の飲みすぎや肥満など、生活習慣が関係しているこの疾患ですが、中には「妊娠後期に起こる脂肪肝」もあるのをご存知でしょうか。しかも、命に関わる可能性もあるとのことです。おつじ内科クリニックの尾辻先生を取材しました。

※この記事はMedical DOCにて【脂肪肝はアルコールを飲まない人・痩せている人にも発病リスク! 原因や妊娠中に起こる特殊な脂肪肝も医師が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

尾辻 健太郎

監修医師
尾辻 健太郎(おつじ内科クリニック)

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2001年に岐阜大学医学部医学科を卒業後、岐阜大学医学部附属病院、岐阜市民病院、市立長浜病院、JA岐阜厚生連中濃厚生病院などを経て、2020年、岐阜県関市におつじ内科クリニックをオープン、院長となる。一人ひとりの患者さんの症状、訴えに合わせ、よりよい治療、より良い選択を全力で考えた上での医療提供を基本方針としている。

編集部編集部

「非アルコール性脂肪肝」「まだら脂肪肝」「急性妊娠性脂肪肝」などという名前を聞きますが、それぞれどのような状態なのか教えてください。

尾辻 健太郎先生尾辻先生

まず、「非アルコール性脂肪肝」は、脂肪肝の原因としても少し触れましたが、アルコールが原因とならない脂肪肝のことで、正確には非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれます。具体的には、アルコールを全く飲まない、もしくは純エタノール換算で男性であれば、30g/日(日本酒換算で1.5合/日)未満、女性ですと20g未満/日(日本酒で1合未満/日)程度しか飲まないのにもかかわらず、脂肪肝が認められる状態を非アルコール性脂肪性肝疾患といいます。非アルコール性脂肪性肝疾患のうち80~90%の人は、長い経過の中でも脂肪肝のまま病気の進行はありませんが、10~20%の人では徐々に悪化し、肝硬変への進行し、肝がんの発症も見られることがあり注意が必要です。非アルコール性脂肪性肝疾患のなかで、このように進行する病気のことを「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH/ナッシュ)と呼びます。

編集部編集部

では、「まだら脂肪肝」とは?

尾辻 健太郎先生尾辻先生

まず、まだら脂肪肝とは、病気の名前と言うよりは肝臓へどのように脂肪が沈着しているかの状態を表す用語です。「脂肪肝」は通常、肝臓全体にまんべんなく脂肪が沈着するのですが、肝臓内の特定の部分のみに脂肪が沈着している状態を「まだら脂肪肝」と呼びます。一般的には、腹部超音波検査、CT検査などで確認できますが、脂肪の付着具合によっては、肝腫瘍などとの区別が必要になることが稀にあり、注意が必要です。

編集部編集部

「急性妊娠性脂肪肝」は?

尾辻 健太郎先生尾辻先生

ここまで解説してきた脂肪肝とは全く異なり、妊娠後期に肝細胞、腎細胞に急速な脂肪沈着を起こし、肝不全、腎不全をきたす、母子ともに死亡率が高い非常に危険な病気です。多胎妊娠している人やどちらかというとやせ型の女性に多く起こると言われており、その頻度は7000~2万件の出産中1件程度と稀な病気になります。

編集部編集部

具体的に、どのような症状が出るのでしょう?

尾辻 健太郎先生尾辻先生

初期症状としては、吐き気や嘔吐、みぞおち中心の腹痛、食欲不振、急速に進行する黄疸などがあり、その後急激な肝不全、腎不全、さらには凝固障害(血が止まらなくなったり、固まりすぎた結果血栓を起こしたりする)などをきたし、非常に重篤な状態に陥ります。

編集部編集部

急性妊娠性脂肪肝の検査や治療法についても教えてください。

尾辻 健太郎先生尾辻先生

腹部超音波やCTなどの検査では確定診断できない場合が多く、肝生検(肝臓に針を刺し細胞を採取する検査)によって確定診断されます。特別な治療法はなく、母体を安定させた後、緊急出産、その後集中治療により凝固障害に対する対症療法を行うしかありません。最近は早期発見、早期治療により救命されることも増えていますが、母体死亡率は10%と未だに高い病態です。

この記事の監修医師

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