中高年の「膝の痛み」の原因はご存じですか? 放置するとどうなるかも医師が解説!
監修医師:
朱田 尚徳(所沢あかだ整形外科)
編集部
なぜ、中高年になると膝に痛みが生じることが多いのでしょうか?
朱田先生
「40代になって膝に痛みが出始めた」という患者さんはとても多く、年齢を重ねるほど痛みを感じる人の数も増えていきます。膝痛の原因は様々ですが、大きく分けて「膝自体に問題があるケース」と「運動能力が落ちてきたなど、膝自体には問題がないケース」の2パターンがあります。
編集部
膝自体には問題がなくても、膝痛になることがあるのですね。
朱田先生
はい。例えば、「加齢に伴って運動能力が落ちてきた」「体のバランス能力が低下している」「疲れが溜まっている」「視力が低下してきた」などが原因で、体に無理な負荷がかかるようになり、結果的に膝に痛みが現れるというケースは実際に少なくありません。
編集部
その場合、どのように対処するのでしょうか?
朱田先生
適切な運動をおこなうことで症状が改善することもあります。整形外科などでリハビリを受ければ効率的な運動方法を学ぶことができますが、もし通院が難しければ、ウォーキングやトレーニングジムでの運動などでも症状を緩和させることはできるかもしれません。また、体の疲れなど心身の状態が原因であれば、睡眠をしっかりとるなどの適切な対処が必要になります。
編集部
一方、膝自体に問題がある場合は、どのような病気が考えられるのでしょうか?
朱田先生
様々な病気がありますが、最も多いのが「変形性膝関節症」です。簡単に言うと、膝の関節の中でクッションの役割をする関節軟骨が加齢とともにすり減るために、関節内で炎症が起きたり、骨が変形してしまったりする疾患です。
編集部
変形性膝関節症の症状について教えてください。
朱田先生
初期の状態では、膝が重い、突っ張るなどの違和感を覚えるようになります。症状が進んで中期になると、膝を使ったとき(歩く、しゃがむ、正座をするなど)に痛みが生じるようになります。さらに症状が進んで重症化すると、何もしていない状態でも膝が痛むようになり、日常生活が困難になるだけでなく、不眠や抑うつ状態などを招くこともあります。
編集部
日常生活にまで影響が及ぶのですね。
朱田先生
はい。現在、日本では「50歳以上の2人に1人が変形性膝関節症を発症している」と言われています。症状を重症化させないために大切なことは、できるだけ初期のうちに適切な対処をすることです。早い段階から対策すれば、重症化を防いでQOLの低下を予防できます。