【闘病】服用していた薬のせいで“太ももが壊死する難病”に…《大腿骨頭壊死症》

例えば、AとBの2つの病気を持っていたとき、「Aへの治療がBに悪影響を及ぼす」「Aで体力が落ちているのでBへの治療ができない」といったことも起こり得ます。実際に闘病者の小塩さんは、2012年に好酸球性肺炎を発症し、その治療で使うステロイドによって、2013年に大腿骨頭壊死症という難病も抱えることになったそうです。そんな小塩さんに、病気が見つかった経緯や当時の心境を語っていただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。

体験者プロフィール:
小塩 綾子
愛知県在住。2012年に好酸球性肺炎、2013年に大腿骨頭壊死症を発症。現在は、ここまで回復してきた経験とクラシックバレエの体の使い方を用いて、心地よく楽に動くための体の土台づくりをする個人レッスンを行っている。
肺炎とその治療

編集部
肺炎の治療後に骨に異常が出たそうですが、経過を教えていただけますか?
小塩さん
私はクラシックバレエをやっていたのですが、2011年の秋頃から、踊ると咳が出ることがありました。2012年の3月末にバレエの公演があったため、病院には行かず、咳があってもそのままにしていましたが、公演後も徐々にひどくなり、日常生活で少し動くだけでもだるくて息切れがするようになったため、さすがにおかしいと思って病院に行きました。そこで「好酸球性肺炎」という診断がついて、絶対安静となり、ステロイドによる治療を受けました。内服薬だけではなく、私の場合は咳が出ると喘息のような喘鳴が出ることがあったので、ステロイドの吸引薬も使用し、徐々に息苦しさは無くなりました。やがて、その約1年後の2013年の5月末に、バレエを教えている最中に、左のお尻辺りが痛くなりました。
編集部
それで病院を受診されたのですか?
小塩さん
お尻が痛くなってすぐに、町の整形外科に行きました。そこでレントゲンを撮ったときは、所見で分かるようなものはなく、筋肉の痛みではないかと言われたので、整体に通い、施術や鍼を受けました。
編集部
その効果はありましたか?
小塩さん
いいえ。いつまで経っても改善せず、むしろどんどん体がこわばり、股関節の動く範囲も狭くなっていきました。痛みも、お尻以外に、脚の付け根、骨盤の横へと広がっていったのです。7月末にバレエの発表会が迫っていて、このままではいけない、どうにかしなくてはと焦っていたので、友達に勧められた別の整形外科へ行きました。そこでレントゲンを撮ったところ、「大腿骨頭壊死ではないか?」と言われ、別の日に股関節専門の先生にもう一度見てもらったところ「大腿骨頭壊死症」という確定診断がつきました。
ふたつの病気

編集部
どんな病気なのでしょうか?
小塩さん
大腿骨頭という、太ももの骨の付け根が壊死してしまうというもので、骨が脆くなるためひどくなると潰れてしまいます。壊死だけでは痛みがないことが多く、大体、陥没骨折が起こって痛みがでます。ステロイドの使用や大量のアルコールが原因になっていることが多く、私の場合もステロイドの服用が原因でした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
小塩さん
手術をするか温存するかの2択で、私の状態だと、手術をしたほうが良いレベルだと言われました。壊死の範囲も広く、難しい手術になるだろうとのことでした。加えて、好酸球性肺炎の方の状態が良くなかったことと、数ヶ月ろくに動いていなかったため体力も落ちていて、股関節周囲の筋肉もかなりなくなってしまっていたため、筋肉がないから手術は厳しいかもしれない、とも言われました。
編集部
そのときの心境について教えてください。
小塩さん
「治療で服用していたステロイドのせいで……」という、やりきれない気持ちが強かったです。
編集部
結局、治療はどうされたのですか?
小塩さん
手術に耐えうる体力と、股関節周囲の筋肉をつける必要があったので、まずは理学療法士さんとリハビリをすることにしました。筋力はもちろんですが、関節などを正しく無理なく動かすということを教えていただき、痛みで全く上がらなかった太ももがパッと、しかも痛みもなく上がるようになったとき、一筋の希望の光が見えたことがとても印象に残っています。
編集部
そんなに変わるのはすごいですね。
小塩さん
一時期は両松葉杖・車椅子を使用しなければならない状態になったのですが、痛みが少しずつ弱くなり、徐々に自力でも歩けるようになりました。リハビリで筋肉をつけながら経過観察していたら、4ヶ月たった頃に、主治医から「普通だったら骨頭が潰れる人が多いけど、あなたの場合は大丈夫みたいだね」と言われ、そのまま今に至るまで温存している感じです。

記事監修医師:
柏木 悠吾(医療法人社団橘会橘病院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
※この記事はMedical DOCにて<【体験談】服用していた薬のせいで難病に! 「大腿骨頭壊死症」>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。