歯ぐきを切らずにできる「インプラント」はご存じですか? 腫れ・痛みの軽減にも
フラップレスインプラントとは、「パンチのような器具で歯ぐきに穴を空け、そこにドリルを通してインプラントを埋入」する手法。術後の腫れや痛みがほとんどなく、翌日から通常の生活に戻れる理由について、ウィズ歯科クリニックの小澤先生に教えてもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【インプラントで「痛い」はもう古い? 切らない・腫れない「フラップレスインプラント」を歯科医が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修歯科医師:
小澤 勇介(医療法人社団オハナ会 ウィズ歯科クリニック)
編集部
「フラップレスインプラント」は痛みが少ないと聞きますが、どのような治療なのでしょうか?
小澤先生
従来のように「歯ぐきを切って開く」という処置は行わずに、インプラントを骨に埋め込む治療法です。パンチのような器具で歯ぐきに穴を空け、そこにドリルを通してインプラントを埋入します。
編集部
歯ぐきを切らずにすむというのは、嬉しいメリットですね。ほかにもメリットはありますか?
小澤先生
従来の手術と比べて出血も少ないので、術後の腫れや痛みもほとんどありません。また、手術時間もインプラント1本あたり10~15分程度と大幅に短縮されるため、身体的な負担も少なくなります。日常生活においても、手術の翌日以降から普段通りの生活を送れるのもメリットです。従来の手術では術後3日ほど血行が良くなる行為を控えていただきますが、フラップレスインプラントは当日のみ注意していただければ、翌日以降とくに制限はありません。
編集部
1つ気になるのですが、歯ぐきを開かなくても手術を正確に行えるのでしょうか?
小澤先生
おっしゃる通り、フラップレスインプラントは直接骨を見てインプラントを埋入するわけではないので、事前に「サージカルガイド」という装置を作製する必要があります。
編集部
「サージカルガイド」とはどのような装置ですか?
小澤先生
簡単にいうと、インプラントを安全かつ正確に埋め込む「ものさし」のようなものです。フラップレスインプラントでは事前にCT画像を用いて手術のシミュレーションを行い、インプラントを埋入する位置や深さ、角度を正確に測定します。そのシミュレーションの結果を正確におとし込んで作られたのが「サージカルガイド」というマウスピース型の装置です。手術の際に患者さんのお口に装着し、目印に沿ってドリルを挿入すると、シミュレーション通りにインプラントを埋入することができます。
編集部
「サージカルガイド」があるから、歯ぐきを切らなくても正確に手術が行えるわけですね。
小澤先生
サージカルガイドを用いたフラップレスインプラントの大きなメリットは、手術の精度が格段に上がることです。フリーハンドで行う手術はどうしても1~2mmほど誤差が生じてしまいますが、インプラントの場合はこのわずかな差がとても重要になるシーンがあります。とくに神経や血管が近い場所にインプラントを埋入する場合は、その誤差が麻痺など、重篤な後遺症を引き起こすおそれもあります。サージカルガイドはこのような術中のトラブルを回避し、インプラント手術を安全に進めるうえでも大きな役割を担っているわけです。