「痛い・怖い・つらいイメージがある…」インプラント治療を受ける際の歯科医院選びのポイントを解説
人工の歯根を埋め込み、失った歯を補う「インプラント治療」。見た目や機能面のメリットはありますが、「治療は痛そう、怖い」というマイナスイメージをもつ人も少なくないのではないでしょうか。インプラント治療を受ける際、少しでも不安をなくすためには、どういった点に着目すればいいのかについて、「横須賀歯科医院」の横須賀先生に教えていただきました。
監修歯科医師:
横須賀 正人(横須賀歯科医院 院長)
日本歯科大学卒業。東京医科歯科大学歯学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)や民間の歯科医院で診療を積んだ後の2005年、東京都大田区に「横須賀歯科医院」を開院。「その人医療」をコンセプトとし、コミュニケーション主体の診察に務めている。日本補綴歯科学会、日本歯周病学会、日本歯科理工学会の各会員。
プロセスにとらわれず、治療の目的を知る
編集部
インプラントには、「大がかりな手術が必須」というイメージがあって治療に踏み切れません……。
横須賀先生
実際に「痛い、怖い」と思っている患者さんは少なくないでしょう。手術ですから、局所麻酔や痛み止めの薬を用いるものの、「全く痛みがない」というわけにはいかないと思います。局所麻酔とは別に鎮静剤を用いた「眠っている間に終わるような方法」もありますが、そうなると「何をされるのかわからない」という別の怖さがありますよね。
編集部
恐怖心をなくす注射や薬なんてないですからね。
横須賀先生
そうですね。患者さんには見えない部分を施術していますし、ドリルの振動が脳へ伝わりますので、やはり怖いですよ。そこは我々医師が、「事前の丁寧な説明」などで和らげていくしかないのかもしれません。治療全般に言えることですが、「しないことによる不利益」をご理解いただき、「治療によって得られる利益」が「痛さ・怖さ」を上回ることを実感していただければ、少しは前向きになれるのかなと考えています。
編集部
手術後も痛みが出ますよね?
横須賀先生
はい。手術したことによる炎症のほか、感染症によっても痛みが生じかねません。ですから、「どのような症状が出たら再受診すべき」、あるいは「その症状は想定内なので、処方した薬で十分防ぐことができる」ということなども、きちんと事前にお伝えします。
編集部
総じて、納得がいくまで説明してくれる歯科医院を選ぶべきだということですか?
横須賀先生
そう思います。インプラントのメリットだけではなく、痛みを含めた治療によるリスクとその対処法や医院ができるフォローまで詳しく説明してくれるところが理想的です。ご納得いくまで相談ができたのなら、インプラント治療への一歩が踏み出せるのではないでしょうか。
インプラント治療の前からやっておきたい医院選び
編集部
ほかにも、インプラント治療を受ける際の医院選びのポイントはありますか?
横須賀先生
「症例数の多さ」は、歯科医師が手術の数だけ経験を積んでいるということですから、押さえておきたいポイントです。また、専門性という意味で、認定医や専門医などの資格も参考にしてみましょう。確認の際はインプラント関連の資格に限らず、手術に関する“外科”の資格も視野に入れてみてください。
編集部
先生がインプラント治療を受けるとしたら、どんな点に注目しますか?
横須賀先生
「担当する医師への信頼性」かもしれませんね。理屈抜きにして、「この先生だったら任せても大丈夫」と感じられるかどうかです。恐怖心は、術後の「自分の手術は、はたして成功したのだろうか」という不安からも生じますよね。信頼関係が生まれていないと、ちょっとしたことでも疑いがちです。そして、その疑いがずっと拭えないまま、手術後のメインテナンスを続けることは精神的な負担になりかねません。
編集部
なるほど! 手術して終わりではないですからね。
横須賀先生
手術後の定期メインテナンスは、予後の観察やインプラント周囲炎などの予防のためにも必須です。ですから、インプラント治療の前の段階で一般の歯科メインテナンスを受けてみて、「任せても大丈夫なのか」を判断してみてはいかがでしょうか。
編集部
かかりつけ医がいれば、仮にインプラントを扱っていなくても、名医を紹介してもらえそうです。
横須賀先生
はい。そのかかりつけ医がインプラントは得意ではなさそうなのに、「紹介せず、全て自分で抱え込もう」としていたら、通院先としてふさわしくないかもしれません。他方で、信頼できる先生が紹介してくださった歯科医院なら、インプラント治療を安心してお任せできると思います。そして、インプラントの施術が終わったら、元々通っていたかかりつけ医に戻ればいいわけです。総じて、歯科医院によって専門性や特色があるので、その領域のスペシャリストに任せるのが理想ではないでしょうか。
編集部
医院の規模はどうでしょうか? 大きな歯科医院だと安心する気がします。
横須賀先生
「オペ室を有しているか」と「麻酔専門医が手術に立ち会うか」は、衛生面や安全面で重要なポイントですが、規模そのものは関係ないように思いますね。例えば、インプラントの治療時は貸し切りにして、衛生や安全に配慮している歯科医院もみかけます。また、大規模な医療機関ほど専門ごとに担当医師が異なり、「1人の医師に聞けば何でも答えてくれる」とはいかなくなるかもしれません。
編集部
医療機器について知っておいた方がいいことはありますか?
横須賀先生
大切なのは機器や設備よりも、「その歯科医師にどれだけ技術や知識があるのか」だと思っています。機器や設備が必要以上にあると、つい頼ってしまうものです。やはり、大がかりな手術ほど医師という人の判断が欠かせません。もちろん、最先端の機器や設備を否定はしませんが、それだけでチェックポイントとして成り立っているとまでは言えない印象です。
自分の希望に沿う歯科医院探しを
編集部
インプラント治療するにあたって、重視した方がいいポイントはなんでしょうか?
横須賀先生
インプラントに関して私が重要視しているのは、「なるべく長くもたせる」ことです。必ずしも「治療期間の短さ」ではありません。もし、特定の治療方法があったとして、それが「なるべく長くもたせる」という要件をも満たしていれば「なお良し」です。インプラントは、しっかり噛めて健康になるために施術しているのですから、むしろ“治療後の状態”の方が重要ではないでしょうか。
編集部
扱っているインプラントのメーカーによる違いはあるのでしょうか?
横須賀先生
はい。歴史のあるメーカーほど、症例研究やリカバリー対策が積み重ねられていると思います。後発のメーカーが対抗するとしたら「低コスト」にならざるを得ないため、「費用だけでインプラントを選ぶ」ことには疑問を感じます。ある程度の負担額は「安心料」と捉えてください。後々の保証にも関わってきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
横須賀先生
インプラント治療の一番の目的は、「きちんと噛むこと」です。そのため、「噛み合わせをきちんとみてくれるか」や「インプラント周囲炎の予防に力を入れているか」も重要なポイントになります。まずは自分なりにボーダーラインを決めて、時間のあるうちから複数の歯科医院でメインテナンスを受けてみてください。そのなかで希望を満たす歯科医院が、あなたにとっての理想的な受診先になると思います。
編集部まとめ
インプラント治療の目的は、「しっかりと食べ物を噛めるようにすること」。であれば、噛み合わせの調整や手術後のメインテナンスが問われるのではないか。この視点が核心をついています。痛みや怖さは、いずれ消え去ります。しかし、口の中の不具合は、ずっと続くことになりかねません。仮に慣れたとしても、「好ましくない状態に慣れた」だけです。もし自分なりのチェックシートをつくるとしたら、このような自宅での観点や将来的な希望も加えておきましょう。
医院情報
所在地 | 〒143-0023 東京都大田区山王2丁目1-5 大森駅ビルRARA B1F/3F |
アクセス | JR京浜東北線「大森駅」北口改札を出てすぐ |
診療科目 | 歯科 |