親知らずの「縁起の悪い」名前の由来はご存じですか? 遅れて生える仕組みも解説
「親知らず」。名前の由来は、昔の日本人は寿命が短く、生えてくるころには親が亡くなっていたからと言われているそうです。なぜ、遅れて生えてくるのか? なぜ生えてこない人もいるのかについて、医療法人きしもと歯科医院の岸本博人先生に教えてもらいました。
※この記事はMedical DOCにて『【歯科医師に聞く】親知らずの抜歯は必要? 手術の流れとは』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修歯科医師:
岸本 博人(医療法人 きしもと歯科医院)
編集部
親知らずとはなんですか?
岸本先生
親知らずとは、大臼歯(奥歯)のなかで一番奥に生える歯のこと。正式には第三大臼歯と言い、智歯(ちし)とも呼ばれます。名称の由来は、親知らずの生える時期が遅いことに関係していて、「昔の日本人の寿命は今より短く、生えてくる頃にはもう親がいない」ということにちなんでいると言われています。
編集部
なぜ、親知らずは生えてくるのが遅いのですか?
岸本先生
歯が生えることを萌出(ほうしゅつ)といいますが、親知らずはほかの歯に比べて萌出までの期間が長く必要だからです。大体、親知らずは3歳半~4歳くらいで歯の生成が開始され、12~16歳で歯冠が完成します。それから数年かけ、20歳前後で表面に現れてくるのです。
編集部
親知らずがない人もいますよね。なぜですか?
岸本先生
親知らずはすべて生えると上下左右の計4本、存在することになりますが、なかには、まったく生えてこない人がいますし、「3本生えたけれど、残り1本は生えてこない」という人もいます。最近ではきれいに4本生えている方が少ない印象です。
編集部
なぜ、4本揃っていないことがあるのですか?
岸本先生
もともと親知らずは歯槽骨の中で横向きで形成されます。顎骨が大きく、奥にスペースがある場合は上向きに90度回転して萌出できますが、スペースが足りない場合は、回転できず、骨内、あるいは少し歯冠を出した状態で横向きのままになってしまうのが原因です。
編集部
なぜ、歯が生えるスペースがなくなるのですか?
岸本先生
理由はいくつかありますが、多くの場合、骨格の変化が挙げられます。一昔前と違って、食事情の変化などにより現代人は歯の生えるスペースが不足している人が少なくありません。その場合、最後に生えてくる親知らずが顔を出すスペースがなくなり、出てこなくなるのです。ほかには、遺伝的要因によって、そもそも親知らずが存在しないという場合もあります。