歯科医師が教える「歯ブラシ」や「歯磨き粉」の選び方 間違わない基準とは?
歯ブラシは、「ヘッド部分(毛の植えている部分)が薄く、小さいものが望ましい」と語るのは、かなめフラワーパーク歯科の上園先生。歯磨き剤(粉)については、「必ずしも使用しなければならないわけではない」というから驚きです。そのワケを詳しく聞かせてもらいました。
監修歯科医師:
上園 明日見(かなめフラワーパーク歯科)
編集部
歯ブラシや歯磨き剤は、どのような基準で選べば良いのでしょうか?
上園先生
歯磨きを行う一番の目的は、むし歯や歯周病の原因となるプラーク(歯垢)を除去すること。お口の状態によっては歯磨き剤の有効成分を行きわたらせること、ステイン(茶渋、たばこのヤニなど)を落とすことなども必要となってきます。歯ブラシや歯磨き剤は、ご自身の歯のお悩みに合わせて選びましょう。
編集部
では、大きな悩みなどがない場合は、歯ブラシはどんなものを選べば良いのでしょうか?
上園先生
プラークはただの食べかすではなく、細菌が繁殖してこびりついた粘着質の膜(バイオフィルム)になっています。このため、うがいや歯磨き粉だけでは取りきれず、物理的にブラシで落とす必要があります。口の中で操作しやすいヘッド部分(毛の植えている部分)が薄く、小さいものが望ましいでしょう。具体的には、ヘッド部分は縦3列になっていて、長さは人差し指の第一関節くらいまでのものを目安にしてください。口が小さい方は、さらに小さなヘッドの歯ブラシを使用しても良いと思います。毛の硬さは普通タイプのもので良いですが、歯周病で歯肉から出血しているような場合には、柔らかめのものを使用してください。
編集部
歯磨き剤はどんなものを選べば良いでしょうか?
上園先生
そもそもですが、実は歯磨き剤は必ずしも使用しなければならないわけではありません。歯磨きで大切なことはあくまでプラークを除去することです。そのため、歯磨き剤を使用したことで実際にはプラークが除去できていなくても「汚れが落ちた」と勘違いし、歯磨きが疎かになってしまわないよう注意する必要があります。その上で選ぶとしたら、むし歯予防、歯周病予防、知覚過敏改善など目的に応じた歯磨き剤を使用すると良いでしょう。
編集部
では、目的別の歯磨き剤の選び方を教えてください。
上園先生
例えば、茶渋などの汚れが気になるという場合には、ホワイトニングをうたった研磨剤配合のものを使用すると良いでしょう。しかし、強い研磨剤は知覚過敏がある方は症状を悪化させることがあるので注意が必要です。むし歯予防には、フッ素入り歯磨き剤が歯質強化、初期むし歯修復に有効です。フッ素は16歳以下の場合では950ppmまで、16歳以上の場合では1450ppmまでが最高濃度とされています。むし歯を気にされる成人の方は、高濃度のものを使用しても良いですが、うがいができない年齢の小さなお子さんは、飲み込んでしまいますので使用を控えましょう。ほかにも、歯周病予防のために「IPMP」などの殺菌成分配合のものや、ビタミンEが配合されたものも、ある程度の効果は期待できるでしょう。