子どもの乳歯がむし歯になってしまったらどうすべき? 治療や予防方法を解説
「乳歯のむし歯も治療が必要なの?」。こんな疑問を感じている方、いませんか? 乳歯は永久歯に生えかわりますが、むし歯になってしまうと永久歯の生え方に異常を来すこともあるといいます。そのため乳歯がむし歯になってしまった場合にも、大人と同様にむし歯治療が必要です。今回は、乳歯のむし歯治療やむし歯予防のためのケア方法についてかなめフラワーパーク歯科の上園明日見先生に話を聞きました。
監修歯科医師:
上園 明日見(かなめフラワーパーク歯科 院長)
東京医科歯科大学歯学部卒業。東京医科歯科大学歯学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)で臨床研修後、東京医科歯科大学大学院顎顔面外科学分野入局、博士課程修了。医療法人社団泰青会青葉歯科医院にて勤務、院長に就任。その後かなめフラワーパーク歯科を開院。日本口腔外科学会口腔外科認定医。厚生労働省認定臨床指導医。歯学博士。日本口腔外科学会、日本顎関節学会、癌治療増感研究会などに所属。
乳歯のむし歯リスクについて
編集部
乳歯もむし歯になることがあるのですか?
上園先生
基本的にはなりにくいのですが、乳歯もむし歯になってしまうことがあります。乳歯は永久歯より薄くて柔らかい構造をしているため、むし歯になってしまうと進行しやすいという特徴があります。
編集部
赤ちゃんは固形物もあまり食べないのに、むし歯になったり、進行したりするのはどうしてでしょうか?
上園先生
生まれたばかりの赤ちゃんの口腔内には、むし歯の原因となる菌(ミュータンス菌)は存在していません。しかし、離乳食を開始したり、大人と同じスプーンを使用することで、口腔内にミュータンス菌が増えてしまうことがあるのです。また、哺乳瓶でスポーツドリンクなど、糖分を含んだものを飲むようになることも、むし歯の発生リスクを高めます。
編集部
親と同じスプーンなどを使うことでむし歯の原因菌がうつるというのはよく耳にします。
上園先生
そうですよね。しかし最近では、同居するご家族にむし歯があると、些細なことでも赤ちゃんにミュータンス菌がうつってしまうということも分かってきました。口移しなどはもちろん気を付けるべきですが、同居するご家族のむし歯治療も重要というわけです。
編集部
乳歯でむし歯になりやすい歯はあるのでしょうか?
上園先生
六歳臼歯の手前の4番目と5番目の間は、特にむし歯になりやすいとされています。一般的に、下の歯はすぐ裏に唾液の分泌腺があり、細菌を押し流したり酸で溶けた歯を修復したりするため、むし歯になりにくいとされています。しかし、むし歯になるような原因があれば、どの歯でもむし歯になるリスクは生じるため、注意が必要です。
乳歯がむし歯になったら…
編集部
乳歯がむし歯になってしまったら、どのような治療が行われるのでしょうか?
上園先生
乳歯の場合にも、大人と同様のむし歯治療を行います。穴が空いているような場合には、その部分を削ってプラスチックや金属を詰めたり被せたりします。さらに深いむし歯の場合には、神経を抜いたり抜歯したりすることもあります。
編集部
永久歯に生え変わるのに、乳歯もむし歯治療が必要なのですか?
上園先生
確かに、乳歯のむし歯が直接永久歯にうつってしまうようなことはありません。しかし、乳歯のすぐ下では永久歯が作られており、神経まで悪くなり、膿がたまってしまうことで、永久歯の生え方に異常を生じさせるリスクなどがあるのです。そのため、乳歯も永久歯と同様、正しい歯磨きやむし歯予防が重要です。
編集部
むし歯治療の際の注意点などはありますか?
上園先生
むし歯治療の際には、局所麻酔を使用します。麻酔薬によるアレルギー反応を起こす可能性もあるため、アレルギー体質のお子さんやほかの病気で治療中(内服中)という場合には、その旨を歯科医師に伝えてください。また、麻酔が効いている間は誤って唇などを噛んでしまうことがあるため、注意深く見守ってあげましょう。ほかにも、むし歯の程度によっては抜歯することもありますが、抜歯後に頻繁に飲食をしたり、気になって触ってしまったりすると血が止まりにくくなってしまうこともあるため、注意してください。
編集部
むし歯治療の際は、怖がって泣いてしまう子どももいるかもしれませんね……。
上園先生
そうですね。私たち歯科医師も和やかな雰囲気で治療を行うよう心掛けますが、親御さんもお子さんをリラックスさせてあげるような関わりをしてあげることが大切です。ただでさえ初めてのことで緊張しているでしょうから、歯科医院に行く前から、「痛いよ」「怖いよ」などと言うと、恐怖心が強くなってしまうこともあるでしょう。受診する前は楽しい雰囲気づくりをするなど、お子さんの機嫌の良いときなどを狙って受診すると良いと思いますよ。
乳幼児期のむし歯予防のためのケア
編集部
赤ちゃんはいつ頃から歯磨きを始めたら良いのですか?
上園先生
目安としては、乳歯が一本生えたらガーゼ磨きを始め、5〜6本生え揃ってきたら歯ブラシを使用して歯磨きを行ってください。歯ブラシにはいろんな種類のものがありますが、ナイロン毛のものがおすすめです。歯磨きを嫌がるような場合には、甘いジェルタイプの歯磨き粉を使用すると良いでしょう。自分でうがいができるようになるまでは、フッ素の入っていないものを使用してください。うがいができるようになったら、フッ素配合(300〜500ppm)のものを使用して構いません。
編集部
初めて子供が歯ブラシを持つ際の注意点はありますか?
上園先生
お子さんが自分で歯磨きをするようになると、歯ブラシで喉を突いてしまう事故が多くなります。立ったり歩いたりして歯磨きをすると危険なので、親御さんの膝の上に寝かせて歯磨きをしてあげてください。そのあとで仕上げ磨きもしてあげましょう。また、子どもは大人の真似をして成人用歯ブラシを使用したり、歯磨き粉を食べてしまったりすることもあります。歯ブラシや歯磨き粉は、子どもの手の届かないところで保管してください。
編集部
乳歯のむし歯予防に大切なことは何でしょうか?
上園先生
乳歯のむし歯予防では、プラークを除去して歯を強くすることが重要です。毎日の歯磨きのほか、むし歯予防に効果的なフッ素の塗布をすると良いでしょう。フッ素は歯科医院のほか、健診の際に保健センターで塗布してくれる自治体もあるため、確認してみましょう。ほかにも、歯ブラシ以外にデンタルフロスを使用して歯と歯の間も綺麗にしてあげることも大切です。
編集部
食生活上での注意点はありますか?
上園先生
甘いものを食べることは問題ありませんが、だらだら食べてしまうとむし歯の発生リスクが高くなります。そのためおやつは時間を決めて与え、不規則に食べないようにすると良いでしょう。お菓子の中でも、キャラメルなどは奥歯などの溝に溜まりやすく、むし歯になりやすいとされています。また、スポーツドリンクなどの飲料は糖分が多く、哺乳瓶に入れて飲ませることで、糖分が歯に付着しやすくなり、「哺乳瓶う蝕」というむし歯の原因になることもあります。夏場などに水分補給のため与えるのは良いですが、これもだらだらと飲ませない方が良いでしょう。
編集部
ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
上園先生
お父さんやお母さんにむし歯があると、赤ちゃんのむし歯の発生リスクを高めてしまいます。育児で忙しい中、ご自身のむし歯治療や赤ちゃんの口腔ケアまで行い、気が遠くなってしまうこともあるかもしれません。しかし、赤ちゃんのむし歯は、健康を害したり、大人になってもむし歯になりやすくなったりするなどの影響が生じる恐れもあるのです。そのため、赤ちゃんの口腔ケアは、しっかりと行ってあげましょう。小学校の間くらいまでは、仕上げ磨きが必要ですが、成長に伴いお子さんもだんだんと上手に歯磨きができるようになっていきます。歯科医師も歯磨きの仕方やお口の健康などの相談に乗りますので、二人三脚で頑張っていきましょう。
編集部まとめ
乳歯のむし歯は、甘いものを食べすぎたり歯磨きがしっかりできていなかったりするだけでなく、保護者のむし歯も原因になります。お子さんのむし歯予防だけでなく、同時に両親のむし歯予防・むし歯治療も行いましょう。
医院情報
所在地 | 〒171-0044 東京都豊島区千早1丁目36-12 |
アクセス | 東京メトロ有楽町線・副都心線 要町駅 2番出口より 徒歩7分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科 |