現役歯科医師が使っている歯ブラシや歯磨き剤(歯磨き粉)を教えて!
市販の歯ブラシや歯磨き剤(歯磨き粉)にはさまざまなものがあり、どれを選べば良いか分からないという方もいると思います。では、歯のプロフェッショナルである歯科医師が使用している歯ブラシ、歯磨き剤はどんなものなのか。今回はかなめフラワーパーク歯科の上園明日見先生に実際に使用している歯ブラシや歯磨き剤などのケア用品、むし歯や歯周病予防のためのケア用品の選び方やケアのポイントについて詳しく教えてもらいました。
監修歯科医師:
上園 明日見(かなめフラワーパーク歯科 院長)
東京医科歯科大学歯学部卒業。東京医科歯科大学歯学部附属病院(現・東京医科歯科大学病院)で臨床研修後、東京医科歯科大学大学院顎顔面外科学分野入局、博士課程修了。医療法人社団泰青会青葉歯科医院にて勤務、院長に就任。その後かなめフラワーパーク歯科を開院。日本口腔外科学会口腔外科認定医。厚生労働省認定臨床指導医。歯学博士。日本口腔外科学会、日本顎関節学会、癌治療増感研究会などに所属。
歯ブラシや歯磨き剤(歯磨き粉)の選び方
編集部
歯ブラシや歯磨き剤は、どのような基準で選べば良いのでしょうか?
上園先生
歯磨きを行う一番の目的は、むし歯や歯周病の原因となるプラーク(歯垢)を除去すること。お口の状態によっては歯磨き剤の有効成分を行きわたらせること、ステイン(茶渋、たばこのヤニなど)を落とすことなども必要となってきます。歯ブラシや歯磨き剤は、ご自身の歯のお悩みに合わせて選びましょう。
編集部
では、大きな悩みなどがない場合は、歯ブラシはどんなものを選べば良いのでしょうか?
上園先生
プラークはただの食べかすではなく、細菌が繁殖してこびりついた粘着質の膜(バイオフィルム)になっています。このため、うがいや歯磨き粉だけでは取りきれず、物理的にブラシで落とす必要があります。口の中で操作しやすいヘッド部分(毛の植えている部分)が薄く、小さいものが望ましいでしょう。具体的には、ヘッド部分は縦3列になっていて、長さは人差し指の第一関節くらいまでのものを目安にしてください。口が小さい方は、さらに小さなヘッドの歯ブラシを使用しても良いと思います。毛の硬さは普通タイプのもので良いですが、歯周病で歯肉から出血しているような場合には、柔らかめのものを使用してください。
編集部
歯磨き剤はどんなものを選べば良いでしょうか?
上園先生
そもそもですが、実は歯磨き剤は必ずしも使用しなければならないわけではありません。歯磨きで大切なことはあくまでプラークを除去することです。そのため、歯磨き剤を使用したことで実際にはプラークが除去できていなくても「汚れが落ちた」と勘違いし、歯磨きが疎かになってしまわないよう注意する必要があります。その上で選ぶとしたら、むし歯予防、歯周病予防、知覚過敏改善など目的に応じた歯磨き剤を使用すると良いでしょう。
編集部
では、目的別の歯磨き剤の選び方を教えてください。
上園先生
例えば、茶渋などの汚れが気になるという場合には、ホワイトニングをうたった研磨剤配合のものを使用すると良いでしょう。しかし、強い研磨剤は知覚過敏がある方は症状を悪化させることがあるので注意が必要です。むし歯予防には、フッ素入り歯磨き剤が歯質強化、初期むし歯修復に有効です。フッ素は16歳以下の場合では950ppmまで、16歳以上の場合では1450ppmまでが最高濃度とされています。むし歯を気にされる成人の方は、高濃度のものを使用しても良いですが、うがいができない年齢の小さなお子さんは、飲み込んでしまいますので使用を控えましょう。ほかにも、歯周病予防のために「IPMP」などの殺菌成分配合のものや、ビタミンEが配合されたものも、ある程度の効果は期待できるでしょう。
歯科医師・衛生士が使う歯ブラシ、歯磨き剤(歯磨き粉)は?
編集部
実際に先生が使用している歯ブラシのメーカーを教えていただけますか?
上園先生
歯ブラシは「LION システマAX44H」を使用しています。この歯ブラシはヘッドがコンパクトで細かいところまで届き、毛先が歯周ポケットにまで入りやすいので効果的にプラークが除去できます。ちなみに、子どもには「LION EX kodomo 12M」を使用しています。
編集部
歯磨き剤は何を使用していますか?
上園先生
歯磨き剤は「ルシェロ 歯磨きペーストホワイト」を使用しています。私はホワイトニングをしているのですが、この歯磨きペーストはホワイトニング後の後戻りが少なく、研磨剤が配合されているので、汚れもよく落とせます。子どもには「LION Check-Up kodomo」を使用しています。
編集部
歯ブラシや歯磨き剤以外のケア用品も使用していますか?
上園先生
歯間の清掃にデンタルフロスを使用しています。デンタルフロスや歯間ブラシなどはご自身の使いやすさや歯と歯の間の大きさに合わせて、糸の太さなどを選ぶと良いと思います。
編集部
先生が使用している歯ブラシや歯磨き剤と同じものを使用するのは、私たちにも効果的ですか?
上園先生
大きな悩みがない場合には良いかもしれませんが、むし歯予防や歯周病予防などが必要かどうかに加え、口の大きさなどに合わせて選んだ方が良いでしょう。
自分に合ったケア用品を選ぶことが大切
編集部
むし歯予防のためにセルフケアで気を付けるべきことや注意点などはありますか?
上園先生
むし歯予防では、歯磨きによるプラークの除去とフッ素の使用が効果的です。そのためご自身の使いやすい歯ブラシやフッ素配合の歯磨き剤を使用すると良いでしょう。また、歯ブラシの交換頻度を守ることも大切です。古い歯ブラシを使用していると、毛先が開いて効果的に汚れが落とせないほか、細菌が繁殖してしまい不衛生。可能であれば2週間に一度、最低でも1ヶ月に一度は交換するようにしてください。
編集部
歯周病予防の場合にはどうでしょうか?
上園先生
歯周病予防には、歯と歯ぐきのすき間(ポケット)に潜む細菌を除去することが重要です。そのため、ポケットまで毛先が入りやすいように、柔らかく細かい毛質の歯ブラシを使用すると良いでしょう。中でも「テーパード毛」と呼ばれる先が細くなったのものがおすすめです。既に歯周病になってしまっていると、歯肉が腫れたり痛みが出ることがあります。そのような場合には歯磨きだけでは治りにくいので、早めに歯科医院を受診してください。
編集部
効果的な磨き方のポイントなどはありますか?
上園先生
ご自身の使いやすい歯ブラシやデンタルフロスなどを使用し、歯の表面や歯と歯の間、歯の付け根までしっかりと清掃し、細かい部分まで有効成分を行き渡らせることが大切です。歯磨き剤は、得られる爽快感によって、実際には汚れが落としきれていないのに「しっかり磨けた」と錯覚してしまうこともあるため、つけ過ぎに注意してください。使用する量は歯ブラシの毛の長さ1/4〜1/3程度を目安にしてください。ほかにも、歯磨き剤を付けずに磨いてみて、しっかり磨けているか確認してみることも効果的です。
編集部
歯磨き以外に、気をつけるべきことはありますか?
上園先生
むし歯や歯周病の予防には、歯磨きだけでなく歯科医院での定期検診やクリーニングも重要です。自覚症状がなくても、定期的な検診でむし歯や歯周病の有無を確認し、歯科衛生士、歯科医師によるクリーニングで歯磨きでは取れない歯石を除去してもらいましょう。
編集部
ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
上園先生
ご自身の口腔内の状態から、どんな歯ブラシ、歯磨き剤を使用したら良いか分からないという場合でも、遠慮なく歯科医師にご相談ください。現在使用中の歯ブラシを持参してご自身にあっているか確認してもらうのも良いでしょう。歯科医院では、口腔内のお悩みに合わせてデンタルフロスや歯間ブラシといったケア用品の選び方、歯磨きの仕方を提案してくれますよ。
編集部まとめ
歯ブラシや歯磨き剤はご自身に合ったものを選ぶことが大切です。また、歯磨き剤をつけていることでしっかり磨けていないのに磨けたと錯覚してしまうことは避けたいところです。歯磨き剤のつけ過ぎには注意しましょう。このほかご自身に合ったケア用品について一度歯科医師に相談してみると良いかもしれません。
医院情報
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診療科目 | 歯科、小児歯科 |