ただの疲れ目ではない? 視力が落ちる前に確認したい「頚動脈海綿静脈洞瘻」の初期症状とは【医師監修】


監修医師:
勝木 将人(医師)
目次 -INDEX-
頚動脈海綿静脈洞瘻の概要
頚動脈海綿静脈洞瘻とは、脳の中に位置する海面静脈洞と、内頚動脈や外頚動脈の間に異常な血流路(動静脈瘻)が発生する疾患です。
頭部(頭蓋内)には複数の血管が存在しています。このうち、頚動脈(内頚動脈と外頚動脈の総称)には動脈血、海面静脈洞には静脈血が流れています。
本来、動脈血と静脈血は混ざり合うことはありません。しかし、何らかの原因によって頚動脈が破れ、海面静脈洞に流れて穴が開くことで動脈血と静脈血が交わり、さまざまな症状が見られる場合があります。
典型的な症状としては、激しい頭痛や耳鳴り、眼球の突出などが挙げられます。しかし、症状は一様ではなく、発症者によっては多彩な症状を呈し、診断が困難なケースもあります。
直接的な原因としては頭部の怪我が最も多く、他に腫瘍や血栓、感染症、頭部の手術などが挙げられます。また、加齢に伴う血管の脆弱化や喫煙習慣、高血圧による血管への負担などが発症の要因になることもあります。
頚動脈海綿静脈洞瘻は、発症後早期に治療をおこなえば比較的経過の良好な疾患であるといわれています。しかし、治療が遅れると長期的な視力障害や眼球の運動障害などの後遺症を残す可能性があるため、注意が必要です。
発症を認める場合には、動静脈瘻を塞ぐための外科的治療や症状を和らげるための薬物療法がおこなわれます。

頚動脈海綿静脈洞瘻の原因
頚動脈海綿静脈洞瘻の原因には、加齢や高血圧、喫煙習慣などによって慢性的に血管が障害されて発症するケースと、外傷によって血管が損傷を受けて発症するケースがあります。
加齢に伴って血管が劣化したり、動脈硬化、高血圧、喫煙習慣、過度の飲酒、不規則な生活習慣などによって血管に負担がかかったりすると、頚動脈が脆弱になり、破れてしまうことがあります。
また、交通事故やスポーツによる怪我、転落事故などによって頭部に物理的な衝撃が加わる場合でも、頚動脈海綿静脈洞瘻を発症するケースがあります。
他にも「多発性嚢胞腎」や「マルファン症候群」「エーラス・ランダス症候群」などの遺伝性疾患も血管の組織が脆弱化しやすく、頚動脈海綿静脈洞瘻を引き起こすことがあります。
このほか、はっきりとした原因なく発症するケースもあります。
頚動脈海綿静脈洞瘻の前兆や初期症状について
頚動脈海綿静脈洞瘻では、海面静脈洞内の圧が上昇したり目のくぼみ(眼窩)内にうっ血が生じたりすることでさまざまな症状が見られます。
典型的な症状には、目の充血や眼球の突出、頭部周辺から聞こえる雑音などが挙げられます。「ドクドク」と聞こえる拍動性の耳鳴りや頭痛、目の周囲の筋肉の麻痺などを生じたり、顔面に血管が浮き出たりすることもあります。頭痛は通常、患部側に認め、持続することが特徴です。
また、眼窩内にうっ血した血液が、目で物を見るときに重要な神経を圧迫し、物が二重に見えたり、視力障害や眼球の運動障害が生じたりするケースもあります。
このほか、発症者によっては、額や目の周囲、耳の痛みや、吐き気など非定型的な症状を呈することもあります。
頚動脈海綿静脈洞瘻の検査・診断
頚動脈海綿静脈洞瘻の診断では、問診や眼球の診察のほか、CT検査やMRI検査、超音波検査などの画像検査がおこなわれます。
問診では、症状が出現するようになった時期やきっかけなどを確認します。
眼球の診察では、眼球突出計と呼ばれる機器を使用して眼球の突出の度合いを確認したり、眼圧測定計を用いて眼圧を測定したりします。
また、脳神経の機能を調べるために、ペンライトで瞳孔の収縮・拡張の反応を観察する「瞳孔対光反射検査」や、眼球の動きを評価する「外眼筋機能検査」などをおこなうこともあります。
画像検査では、通常のCT検査やMRI検査のほか、造影MRI検査がおこなわれることもあります。
造影MRI検査は、造影剤を投与して血管の状態をより鮮明に観察するための検査で、頚動脈海綿静脈洞瘻によって穴が空いている箇所を特定することが可能です。
頚動脈海綿静脈洞瘻の治療
頚動脈海綿静脈洞瘻の治療では、症状を和らげるための薬物療法と、破れた血管を塞ぐための外科的治療がおこなわれます。
薬物療法
症状や病態に応じて薬剤が選択されます。
使用する薬剤には、痛みを和らげるための鎮痛薬のほか、血圧を調整するためのβ遮断薬、頭部の圧(頭蓋内圧)を下げるための利尿薬、血栓を予防するための抗凝固薬などが挙げられます。
外科的治療
外科的治療には、血管内治療と手術の2つの方法があります。
血管内治療は頚動脈と海面静脈洞の間にできた血流路を塞ぐための治療で、太ももの付け根からカテーテルと呼ばれるチューブを血管に挿入し、頭部の血管まで進めて患部にコイル状や風船状の医療器具を留置します。
一方、手術では、開頭手術によって破れた血管や異常な血流路を医療用の糸で縛ったり、クリッピング(血管をクリップでとめて血流を遮断する方法)したりします。
状態によっては、血管内治療と開頭手術を併用するケースもあります。
頚動脈海綿静脈洞瘻になりやすい人・予防の方法
交通事故やスポーツによる怪我、転落事故等で頭部外傷を起こした場合には頚動脈海綿静脈洞瘻になる可能性があります。
頚動脈海綿静脈洞瘻は治療が遅れると長期的な後遺症を残す恐れがあるため、頭部に怪我をした場合には速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
また、動脈硬化や高血圧、喫煙習慣、過度の飲酒習慣がある場合も、頚動脈海綿静脈洞瘻の発症リスクを高める恐れがあります。
動脈硬化や高血圧と診断されている場合には、放置せず主治医の指示のもと薬物療法や食事療法を受けるようにしましょう。
アルコールは、健康に問題がない場合には一日あたりビール中瓶1本程度が適量といわれています。過度な飲酒は避け、節度ある適度な飲酒を心がけましょう。
また、喫煙している場合には禁煙に努めることも重要です。