「悪性リンパ腫の種類」はご存知ですか?【医師監修】

小さな子どもは言葉で伝えることが難しいため、「子どもに何かあったら……」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そのような方に本記事では、悪性リンパ腫の種類について詳しく解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「子どもの悪性リンパ腫の初期症状」はご存知ですか?進行した場合の症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫は、血液細胞のリンパ球ががん化する病気です。人間の血液中には、さまざまな役割を持つ血液細胞があります。
- 細菌やウイルスから体を守る白血球
- 酸素を体の隅々まで運搬する赤血球
- ケガによる出血を止める血小板
悪性リンパ腫は、上記の細菌やウイルスから体を守る白血球の中に存在する、リンパ球ががん化したものです。リンパ球ががん化したものは「リンパ腫」と呼ばれています。
リンパ腫に変異する原因については、明らかになっていません。しかし、何らかの原因でリンパ球の中にある遺伝子が異常な状態となり、リンパ球の寿命や増え方が正常ではなくなることが一因と考えられています。
また、子どもがリンパ腫を発症する一因は、遺伝や免疫不全から起こる可能性が高いです。
白血球は全身をめぐる血液の中に存在している細胞であるため、全身のあらゆる部位で腫瘍が発生するため注意が必要です。
悪性リンパ腫の種類
悪性リンパ腫は大きく4種類があり、骨髄の中にある造血幹細胞で作られた血液細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれています。
白血球はこの骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞のどちらから分化したかによって種類が異なります。リンパ系幹細胞から作り出される白血球はリンパ球のみです。
ただし、そのリンパ球の中でも細胞の性質の違いによって、以下の3種類に分けられます。
- B細胞リンパ腫
- T細胞リンパ腫
- NK細胞リンパ腫
さらにホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類され、上記の3つは日本人の90%以上に該当する非ホジキンリンパ腫に分類されます。では、それぞれの種類を解説しましょう。
B細胞リンパ腫
1つ目はB細胞リンパ腫です。
B細胞は細菌やウイルスの情報(抗原)を記憶し、細菌やウイルスに打ち勝つ免疫グロブリン(抗体)を産生します。そのため、免疫反応において重要な役割を担っている体液性免疫細胞です。
B細胞にリンパ腫が発生すると、生体自身の健常細胞や組織と細菌やウイルスの区別が曖昧な状態に陥ります。
最悪の場合には、生体自身の健常細胞や組織を敵と判断して攻撃し、免疫力が著しく低下してしまうのです。
T細胞リンパ腫
2つ目はT細胞リンパ腫です。T細胞は免疫性細胞で3種類あります。
- ヘルパーT細胞
- サプレッサーT細胞
- キラーT細胞
ヘルパーT細胞は、B細胞から形質細胞への分化とサイトカインの産生分泌を促す役割を持っています。
サプレッサーT細胞は、B細胞の分化を抑える役割を持つ細胞です。
キラーT細胞はウイルス感染細胞・移植細胞・腫瘍細胞などの異常な細胞を排除して死滅させる役割を持っています。ただし、キラーT細胞はヘルパーT細胞による抗原感作によって働きはじめるため常に機能しているわけではありません。
細菌やウイルスを攻撃しながら、ほかのリンパ球に働きかける役割をさまざまなT細胞が担っています。
大食細胞であるマクロファージへの抗体産生の促進と抑制も行いますが、リンパ腫が発生すると抗体産生の促進と抑制に異常が生じる可能性が高くなります。
NK細胞リンパ腫
3つ目はNK細胞リンパ腫です。
NK細胞はヘルパーT細胞による抗原感作がなくても、腫瘍やウイルス感染細胞を自然に認識して排除できます。いわば独立した免疫細胞です。
しかしNK細胞にリンパ腫が生じると、腫瘍やウイルス感染細胞を自然に認識できなくなったり、健常細胞や組織を敵と判断して攻撃したりします。
リンパ系幹細胞から作り出されるリンパ球にリンパ腫が生じると免疫不全を引き起こすため注意が必要です。
ホジキンリンパ腫
4つ目のホジキンリンパ腫は、白血球の中のリンパ球に発生するがんです。
腫瘍細胞が増える特徴を持っています。ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫を発症した割合全体の約5%が該当するとされており、日本人にはあまり多くみられません。
非ホジキンリンパ腫と同様に発症原因はまだ不明な点も多く、これからの医療研究に期待が高まっています。
編集部まとめ
今回は子どもの悪性リンパ腫の初期症状・悪性リンパ腫の種類・進行時の症状について解説してきました。
悪性リンパ腫にはさまざまな種類があり、症状の進行具合も一概にはいえません。しかし、早期発見と標準的な治療を行うことで、高い確率で治癒が見込める病気です。
不安を抱えている方の参考になれれば幸いです。
悪性リンパ腫と関連する病気
「悪性リンパ腫」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- ウイルス感染症
- 細菌感染症
- 薬剤性リンパ節症
- 皮膚病性リンパ節症
- がん腫のリンパ節転移
- 白血病
悪性リンパ腫は全身のさまざまな箇所に発症するため、現れる症状も多種多様です。ほかの病気と同じような症状が現れる場合もあるため注意しましょう。体調に異変を感じたら、早めに医療機関を受診して検査を受けてください。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
悪性リンパ腫の特徴的な症状が「リンパ節の腫れ」です。そのほか、発熱や喉の違和感のような風邪に似た症状が現れることもあります。なかなか治らない症状がある場合には、決して自己判断せずに医療機関を受診しましょう。



