「咽頭がん」の治療はどう決める?声を残すための“3つの選択肢”を医師が解説!

頸部のがんには種類がいくつかあります。口腔がん・喉頭がん・咽頭がん・食道がんなどです。今回はその中でも「咽頭がん」について解説します。
咽頭がんと聞いても、すぐに詳細部位を答えることは難しいのではないでしょうか。咽頭とは、自分では見ることのできない鼻の奥から声帯の少し下までの器官のことです。日常では違和感を覚えやすい部位でもあります。
咽頭がんは初期症状にのどの症状が出やすいのです。今回は治療法を解説をしますので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「咽頭がんの症状」はご存知ですか?初期症状・治療法も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
渡邊 雄介(医師)
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
目次 -INDEX-
咽頭がんの発生原因
のどにできるがんは、大きく分けると咽頭がん(いんとうがん)と喉頭がん(こうとうがん)の2種類です。その中でも咽頭は上中下に3つの部位へ分けられています。
上咽頭は鼻腔からのどまでの部位、中咽頭はのどの奥の部位、下咽頭はのどの奥から声帯より少し下までを指す部位です。
咽頭がんの発生原因は発生部位により特徴があります。
上咽頭がんは発生頻度が低く、EBウイルス(エプスタインバールウイルス)への感染により発症リスクが高くなるといわれています。
中咽頭がんは男性に多いがんです。ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が発症リスクが高くなる要因といわれています。
部位により特徴が違いますが、全部位に共通していわれているのは過度の飲酒と喫煙です。下咽頭がんもこの中に含まれています。
また、お酒を飲むと顔が赤くなるような人が過度の飲酒を継続することで、発がんする可能性が高くなることがわかっています。
咽頭がんの治療法
治療方法は、身体状態・がんの部位・がんのステージなどを考慮して決定します。
咽頭は飲み込むという嚥下機能だけでなく、空気を出入りさせることにより発声するという発声機能も同時に担っています。そのため、がんを治療するだけではなく、嚥下や発声の機能をできるだけ残していくことも大事に考えて治療を選択していくのです。
治療方法は大きく分けて3つあります。「手術」「放射線治療」「薬物治療」の3つです。
また、咽頭がんの部位によっても選択される治療に少し違いが出てきます。上咽頭がんは手術が難しい部位であるため、「放射線治療」と「薬物治療」が選択され、中咽頭がん・下咽頭がんは手術可能な部位であるため「手術」が選択されることが多いです。
ただ、機能をできるだけ残すということが重要であるため、がん切除と身体機能維持とのバランスをしっかり考えて方針を立てることが必要になります。
手術による治療
一般的に、手術可能な部位であれば早期のうちは手術が治療選択の中心となりますが、手術の方法はがんを切除する部位や大きさによって変わっていきます。
早期であればがんの大きさはまだ小さいことが多く、少しの切除で済むのですが、進行してしまったがんなどは大きさも範囲も広いことが多いです。
また組織内部に浸潤してしまっていたり、頸部リンパ節に転移していたりすることもあるため、体の一部を大きく切除する手術です。頸部リンパ節を併せて切除する手術を頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)と呼び、広範囲に組織を切除する手術をする場合は、切除だけでなく欠損部位を修復する手術(再建手術)も同時に行います。これにより機能をできるだけ保存することが可能となるのです。
放射線治療
放射線治療とは、高エネルギーの放射線を照射することでがん細胞を死滅させたり、がんを小さくしたりする治療です。
手術はがん組織だけでなく、周囲の正常な組織も除去する必要があるため、侵襲的な方法です。放射線治療はその必要がないため物理的欠損を回避できます。
放射線治療のみではなく、併用して抗がん剤治療も行うことがあります。手術の後に再発を防止するために放射線治療を行うこともあるでしょう。
放射線治療に使われる放射線には、エックス線・陽子線(ようしせん)・重粒子線(じゅうりゅうしせん)があります。どのような方法で行うかは、がんの状態や身体状況などにより判断されます。
化学療法
放射線治療と抗がん剤を併用する方法を化学放射線療法と呼びます。薬物療法は放射線治療のようにがん細胞を死滅させたり、がんを小さくしたり、増殖を抑えたりする効果のある治療法です。
種類としては抗がん剤・分子量的薬・免疫チェックポイント阻害薬があります。
身体に外科的な侵襲はないものの、がんだけでなく一部の健康な組織にもダメージを起こすことがあるため、人によっては副作用に悩まされることがデメリットでもあります。
主な治療方法は手術と放射線治療であり、化学療法はそれらの効果を高めるための補助的役割として実施されることが多いです。
咽頭がんの症状についてよくある質問
ここまで咽頭がんの発生原因・症状・治療などを紹介しました。ここでは「咽頭がんの症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
咽頭がんは触ったらわかりますか?
渡邊 雄介(医師)
咽頭がんの検査では触診を行うのですが、のどの腫れやリンパ節の腫れなどから首にしこりができることがあるため、しこりができている場合は自分で触ることで気づくことができます。しこりが触知できない部位の場合は内視鏡などを使って直接見る検査をしてもらいます。
咽頭がんはどのように診断されますか?
渡邊 雄介(医師)
初期症状にあったようなのどの痛みや首のしこり、出血や違和感、声の掠れなどの症状から受診し、視診・触診・内視鏡検査を受けて咽頭がんの疑いがある場合は、組織を一部切り取って詳しく調べます。生検(せいけん)といって、その組織ががんであるかを診断する方法です。咽頭がんがあればそれで診断されます。また、同時にCTやMRI・エコーなどを使用してがんの位置や大きさなどさらに詳しく調べ、がんの大きさなどにより咽頭がんのステージを決定するのです。がんの進行順にI・II・III・IVとステージが分けられます。早期がんはステージI・IIです。がんの位置・大きさ・ステージにより治療法が変わってきますので、しっかりと検査をしてもらう必要があります。
末期の咽頭がんの症状はどのようなものですか?
渡邊 雄介(医師)
風邪のような症状やよくある口内炎など、初期症状が軽いものであるため自覚されないまま進行する咽頭がんですが、その症状がのどの違和感や飲み込むときの痛みなどに変化していく過程で受診される人が多いです。くびのしこりなど外側から触ってわかるような状態になり、痰や鼻水に血が混じり初めたり声が枯れたりし始めると、その進行は進んでいることが多いでしょう。末期には物が二重に見えたり頭痛がしたりするなど脳神経症状まで発展していきます。この頃には、飲食がしにくい嚥下障害や呼吸困難からの発声障害が現れてくるでしょう。嚥下障害が出てくると食べ物が食べられないことによる体重減少や、呼吸困難からくる不活動など悪影響は大きくなってきます。
編集部まとめ
今回は咽頭がんの発生原因と症状について解説をしました。早期発見が難しいがんですが、再発率を下げるためには早期に発見し、早期に治療を開始することが大切であるといえます。
症状ひとつひとつは見逃してしまいそうなほど日常にありふれたものですが、自分の身体とじっくり向き合い、変化に気づく習慣をもつことは大変重要なことです。常日頃から気にかけることで、早期発見は可能になると思います。
今回は初期症状のセルフチェック方法も解説しましたので、是非こまめに自分の身体をチェックしてみてください。もし異変に気づいたら、気のせいだと思わず早めに医療機関を受診しに行ってください。
咽頭がんと関連する病気
「咽頭がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
中咽頭がんと同時、または異なる時期に、口腔、喉頭、食道などのほかの臓器にがんが見つかることがあります。
中咽頭がんの原因の1つである喫煙や過度の飲酒は、これらのがんの発生要因でもあると考えられているためです。このように、異なる臓器に発生するがんのことを重複がんといいます。
咽頭がんと関連する症状
「咽頭がん」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
よく自覚される口腔内の小さな変化であっても、咽頭がんのような大きな疾患の初期症状であることがあります。いずれも長期化するようなときには早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献



