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小倉智昭さん死去 晩年闘病した「膀胱がん」の症状・予防法を医師が解説

 公開日:2024/12/10

小倉智昭さんが9日に死去しました。死因は膀胱がんだったことを所属事務所が発表しています。77歳でした。小倉さんは2016年に膀胱がんを公表。その後、肺への転移や腎盂がんも見つかるなど、近年は闘病を続けていました。

生前には本メディア(メディカルドック)にも出演し、がんについてインタビューにも応えてもらっていました。その中で、『2年半もの間、摘出手術を先延ばししたことが大きな間違いでした。』と語っており、がん予防や早期治療の大切さを啓蒙されていました。編集部一同、心よりご冥福をお祈り申し上げます。そこで、あらためて膀胱がんの予防や原因、初期症状について、医師の村上先生に解説してもらいました。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

膀胱がんとは?

膀胱がんの多くは、腎盂・尿管・膀胱・尿道の一部の表面を覆う尿路上皮(移行上皮)粘膜より発生する悪性腫瘍です。
国内で新たに膀胱がんと診断される人は年間約20,000人とされ、およそ3対1の割合で男性に発生する率が高いとされています。およそ8割が60歳以上です。また喫煙は重要な危険因子です。喫煙者は非喫煙者に比べおよそ4倍、過去に喫煙歴のある人は約2~3倍膀胱がんになりやすいことがわかっています。
膀胱がんの約90%は「移行上皮がん」です。しかしまれに扁平上皮がん・腺がんなども発生します。
膀胱がんには「表在性膀胱がん」「浸潤性膀胱がん」「上皮内がん」の3タイプがあり、「表在性膀胱がん」は膀胱表面の粘膜にがんがとどまっているタイプです。「浸潤性膀胱がん」は膀胱の筋肉の層まで広がった多臓器への転移の可能性もあるもので、「上皮内がん」はがんが粘膜の下を拡がっていく特徴を持つがんです。
膀胱がんの多くは「表在性膀胱がん」で、転移することはあまりないとされていますが放置していると浸潤がんや転移のリスクのあるがんに変容することもあります。
いずれにしても膀胱がんは術後2年以内に50%の患者さんが再発するとされており、早期の膀胱がんであった場合でも定期的な検査をおすすめします。

膀胱がんの初期症状

膀胱がんは、他のがんと比べて早期に症状が出やすいとされています。代表的な初期症状が「血尿」で血の塊が排出されることもあります。そのほかに頻尿・排尿痛・残尿感といった膀胱炎に似た症状が一般的です。
血尿は肉眼でも血が混ざっていることがわかる「肉眼的血尿」が多く膀胱がん患者さんの約80%がこのタイプで、膀胱炎症状は20~30%の人に見られるとされています。血尿は排尿時の痛みや違和感は伴わないことがほとんどで、排尿終盤ころが赤くなる終末時血尿のパターンが多いようです。

血尿が出る

「肉眼的血尿」が見られる人の膀胱がんの陽性診断的中率は、70歳以上の高度喫煙者(26本以上/日)では12.5%にものぼります。「肉眼的血尿」は自然に治まることも多く、受診しないまま放置されることがあるので注意しましょう。
また血尿には肉眼ではわからず顕微鏡で発見できる「顕微鏡的血尿」(尿潜血陽性)もあり、膀胱がん患者さんの6.4%に見られるため注意が必要です。検査などで尿潜血陽性と診断された場合は腎臓内科や泌尿器科などの専門科の受診をおすすめします。

尿の頻度が高い

上皮内がんにかかると、膀胱内に炎症が発生しているのと似た状態なので膀胱の膨張が困難になることがあります。そのため尿をためにくくなり頻尿が起きます。
一方、頻尿の原因には心因性のものなどさまざまあるので、早合点せず泌尿器科で受診してください。

残尿感がある

排尿後も尿が残ってすっきりしない残尿感は膀胱がんの初期症状に見られる症状です。
膀胱がんにかかると、腫瘍が膀胱粘膜を刺激するため残尿感が残ります。たとえ膀胱がんが原因でないにしても、慢性前立腺炎・膀胱炎・尿道炎・糖尿病といった病気にかかっている恐れもあるので専門の医師の診断を受けてください。

排尿時に痛みがある

膀胱がんにかかった人が排尿時に痛みがある場合、がんが深い筋層まで到達している可能性があるため、速やかに専門の医師の診断・治療を受けましょう。
排尿痛がある場合は、膀胱炎・尿道炎をまず疑うことが多いですが、それらの治療をしても痛みが引かない場合は膀胱がんの検査を受けましょう。

膀胱がんの検査法

膀胱がんの検査では、まず尿検査を行い血尿の有無や尿中にがん細胞が混じっていないか調べたあと、超音波検査・膀胱鏡検査を実施してがんがあるかを判断します。がんが判明した場合は、転移の有無や膀胱内のがんの深さや広がりなどの状態を調べるため、CT検査やMRI検査などの画像検査を行うのが一般的です。
さらに治療の一環としてのTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)というものを行うことで進行の程度を調べることもあります。膀胱がんは、組織の病理検査でしか確定診断ができないため、尿細胞診や生検によっても確定診断に至らない場合はTURBTなどの方法をとります。

尿検査

尿の色に異常を感じたときなどはすぐに病院で尿検査を受けましょう。尿細胞診(尿中にがん細胞が混じっていないか調べること)で膀胱がんかどうかを60~80%の精度で判定できます。
しかし尿検査で100%がんが見つかるわけではないので、他の検査と併せて実施し判断します。

超音波検査

超音波検査では、がんおよび臓器の形状や位置、周辺の臓器との関係などを調べます。検査での痛みはありません。
この検査は膀胱内の病変を簡便に調べられる方法ですが診断精度には限界があり、腫瘍の大きさ・位置・形状によっては診断できないこともあるようです。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査は膀胱鏡を尿道から挿入して直接膀胱内を観察する検査方法で膀胱内の病変の有無を確認します。
膀胱鏡は細くライトの付いたチューブのような形状でカメラも付いており、腫瘍の位置や大きさ・数・性質などを観察します。通常検査時間は5分程度で終了するので体にかかる負担もほとんどないです。

CT・MRI検査

CT検査ではX線を回転しながら照射し断層画像を作成して体内を調べます。これにより他の臓器への遠隔転移、リンパ節転移の診断が可能になります。
MRI検査は人体の内部構造を画像化する検査です。目的部位をより詳しく調べ、手術方法や抗がん剤治療の必要性などを判断します。

膀胱がんの治療法

膀胱がんの治療は大きく外科手術と放射線治療に分けられます。外科手術はTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)と膀胱全摘除術があり、全摘除術時は尿路変向術も実施するのが一般的です。
外科手術と放射線治療以外では、膀胱の摘出の前後に薬物療法を行ったり、BCG膀胱内注入療法などを実施することがあります。

外科手術

TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)では、麻酔をしたうえで膀胱鏡を尿道から膀胱内に挿入し、内視鏡で内部を観察しながら先端に付けられた小さな切除ループでがんを切除します。この手術は「表在性膀胱がん」に対して実施されるのが一般的です。手術時間は約1~2時間がほとんどで手術後3日で退院できます。
膀胱全摘除術は筋層浸潤性がんと一部の筋層非浸潤性がんに有効な治療法です。膀胱を摘出し、男性では前立腺と精嚢を摘出します。またがんの状態によっては骨盤内のリンパ節の摘出も併せて実施します。この際、尿を体外に排出できるようにするのが尿路変向術です。腸管を使った代用膀胱造設術などの方法を用いて実施します。

放射線治療

膀胱全摘除術などの手術が難しい場合、放射線を使った膀胱温存療法を行うことがあります。ただし放射線治療を受けるには病期・転移の有無・腎臓機能などいくつかの適用条件があるので医師との相談が必須です。
またこの方法は、がんの進行による膀胱出血や、骨転移による痛みなどの緩和を目的に行われることもあります。

膀胱がんの予防法

膀胱がんの予防では、まず、喫煙者に対しては禁煙が推奨されることが多いようです。タバコ以外ではゴム・皮革・織物や色素工場で使用されるアニリン色素、ナフチラミンやベンチジンなどの染料も膀胱がんができる原因とされているのでこれらを避ける生活を心がけましょう。
また逆流性食道炎・慢性胃炎・大腸炎・胆のう炎・膀胱炎など炎症持病がある人がなりやすいともいわれています。このほか環境因子として挙げられているのは、アルコール・塩分の摂取過多、果物・野菜の摂取不足などです。

「膀胱がんの初期症状」についてよくある質問

ここまで膀胱がんの初期症状や早期発見のための検査法・治療法・予防法を紹介しました。ここでは「膀胱がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

初期症状がある場合は発症している確率が高いですか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

日本泌尿器学会によると代表的な初期症状である「血尿」の患者さんが、3年以内に尿路上皮がんに罹患する確率は男性が7.4%で、女性が3.4%です。これを考えると例えば血尿が出たからすぐに膀胱がんと判断するのは早計すぎるでしょう。しかし男女とも45歳ころから膀胱がんが増加し始め、さらに60 歳以上になると急に増えていくので、初期症状が出たら速やかに検査を受けたほうがいいでしょう。またその後に初期症状が治まっても定期的に検査を受けることをおすすめします。

早期発見できれば治療が可能ですか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

筋肉層には病変が達していない「表在性膀胱がん」であれば、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)によりすべてがんを取り除けるため短時間の治療により完治することも可能です。

編集部まとめ

膀胱がんは「転移する危険が少ない」といわれていることが多いようです。

しかし種類によっては転移するリスクが高いものや、進行するにつれて転移するリスクの高いがんに変わってしまうケースもあるので注意が必要です。

また一度罹患し、外科手術などで完治しても、再発するケースが高いので、再発防止のためのケアを継続していく必要があります。

いずれにしても膀胱がんのさまざまなリスクから自分を守るには、早期発見がカギになります。

早期発見には毎日の尿の色を観察することと、定期的な尿検査が重要です。

そして万が一、血尿が出た場合はすぐに医師の診察を受けてください。時間の経過とともに血尿が治まっても、決して放置せず速やかに検査を受けることをおすすめします。

※この記事はメディカルドックにて【「膀胱がんの予防法」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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