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歌手・門倉有希さんが乳がんで死去 「乳がんを疑うしこりの特徴」を医師が解説

 公開日:2024/06/07

1998年発表のヒット曲「ノラ」でも知られる歌手の門倉有希さんが、6月6日に乳がんのため亡くなったことを、所属事務所が明かしました。2019年にがんが発覚し、治療を続けていました。50歳でした。報じられているところによると、18年ごろには自身でも胸に異変を感じていたそうです。そこで、乳がんを疑うしこりの特徴・症状・予防法や早期発見するためのポイント・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

※この記事はMedical DOCにて【「乳がんを疑うしこりの特徴」はご存知ですか?できやすい場所も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

> 【イラスト解説】「乳がんの前兆となる4つの初期症状」

寺田 満雄

監修医師
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)

プロフィールをもっと見る
2013年名古屋市立大学医学部卒。2017年愛知県がんセンター乳腺科部を経て、2019年より名古屋市立大学乳腺外科および名古屋大学分子細胞免疫学に所属。2020年より、より正確でわかりやすい乳がん情報を発信するために、「一般社団法人BC Tube」の立ち上げに携わり、同法人の理事となる。SNSを中心に乳がんに関する動画情報発信や乳がん啓発活動を行う。日本外科学会専門医、乳腺専門医。

「乳がん」とは?

乳がんとは、乳汁(母乳)を作るための組織である「乳腺」にできるがんです。乳腺は乳汁を作る「小葉」と乳汁を乳頭まで運ぶ「乳管」の2つの組織からできていますが、乳がんの多くは後者の「乳管」から発生します。
乳がんは現在、日本において女性がかかるがんの1位となっており、40~60歳が好発年齢です。しかし、4段階に分けられた進行度合いの1段階目で発見し、適切な治療を受ければ10年生存率は約95%と、予後の良いがんとされています。一方で、発見が遅れ4段階目まで進んでしまうと、10年生存率は16%まで下がるため、早期発見・早期治療が大事です。

なお、本記事は乳がんでよくみられる症状の一つであるしこりについて解説しますが、乳房にできたしこりが乳がんかどうか自己判断することを促す記事ではありません。
乳がん診療で最も重要といわれていることは、ご自身の乳房の状態に日頃から関心をもって、乳房を意識して生活することであるということです。
日頃から乳房に意識を持っておくと、しこりに限らず何らかの乳房の変化に気がつくことがあるかもしれません。その早い段階でぜひ医療機関を受診してもらいたいと思っています。

乳がんを疑うしこりの特徴

乳房にしこりがあっても必ずしも乳がんとは限らず、良性腫瘍をはじめとした別の病気の可能性も大いにあります。セルフチェックをする際に、どのような変化に気を付けておくべきかを知っておくことは大切です。本章では乳がんのしこりにはどのような特徴があるのか解説します。

しこりが硬くてでこぼこしている

乳がんのしこりは触ったときに硬いのが特徴です。乳腺線維腺腫などの良性腫瘍の一部は、触るとゴムのような弾力性を感じるのに対し、乳がんのしこりは石のように固いとされています。
加えて、乳がんのしこりは形がでこぼこしています。このようなしこりの存在があればもちろん、何かしらの変化に気づいたら、早急に外科または乳腺外科を受診しましょう。

しこりが動かない

触っても動かないしこりは、乳がんを疑う特徴の一つです。がんが周りの皮膚や組織を巻き込み、固定されるために起こります。触れたときにしこりがころころと動く場合は、乳腺線維腺腫といった良性の病変であることも多いですがしこりが動くか否かだけで乳がんの判別はできないため、医療機関で検査を受けましょう。

痛くない

乳がんのしこりは痛みを伴わないことが典型的です。もちろん痛みを伴う場合はありますが、痛みの有無は乳がんか否かの判断材料にはなりません。痛みが生じる原因には、乳腺症や乳腺炎などの疾患もありますが、最終的には医療機関での検査を受けてください。

しこりが大きくなるスピードがゆっくり

乳がんのタイプによっても異なりますが、一般的に乳がんの進行速度は早くはありません。乳がんのしこりは何年もの時間を経て1センチの大きさになります。
しこりが急に大きくなる場合は葉状腫瘍の可能性も考えられます。ただし、葉状腫瘍はほとんどが良性ですが、まれに悪性の場合もあるので、大きくなるスピードに関わらず変化に気がついたら速やかに医療機関で検査を受けましょう。
これらは乳がんに典型的な特徴ですが、これに当てはまらない場合も多くあります。決して自己判断せず、変化に気がついたら医療機関を受診するようにしてください。

乳がんのしこり以外の代表的な症状

乳がんは発症しても自覚症状を伴わない場合が多くあります。そのため、定期的に乳がん検診を受けることが大切です。一方で、どのような変化に気をつけるべきかを知っておくことも非常に大切です。本章では、代表的な症状について解説します。

乳糖から分泌液が出る

乳がんの症状のひとつとして、乳頭からの分泌液があります。出産後の授乳期であれば、乳頭から乳汁が出るのは正常です。しかし、乳頭から血が混じったり、ピンク色の分泌液が見られたりする場合はご注意ください。
さらっとした水のような分泌液や乳汁のような分泌液であれば、乳腺症によるものなど乳がんではない確率も高いですが、判別のためには検査を受けてください。

乳房の皮膚のくぼみ

乳がんを発症していると、まるで頬のえくぼのように皮膚がへこむ「えくぼ症状」が見られる場合があります。がん細胞が皮下組織や皮膚に広がると、その部分が陥没するためです。
ただし、数カ月以内に乳房を打撲したといった心当たりがあれば、乳房の脂肪が壊死して皮膚がくぼむ可能性もあります。見た目では乳がんとの判別が難しいので、外科または乳腺外科にて医師の診察を受けましょう。

乳頭や乳輪がただれる

乳頭や乳輪がただれている場合は、「乳房パジェット病」の可能性があります。乳房バジェット病は乳管のがんが乳頭の皮膚に広がって生じ、その割合は乳がん全体の1~2%とされるめずらしい乳がんです。
乳房パジェット病はただれのみならず、乳頭や乳輪の皮膚がうろこ状になったり、乳頭から黄色い液体が分泌されたりすることもあります。

左右の乳房の形が非対称になる

乳がんを発症すると、左右の乳房が非対称になる場合があります。乳がんは片側に発症するケースが多く、乳房の内部にしこり等ができることによって左右の大きさに差が生じるからです。
とはいえ、乳房の左右非対称は炎症が生じていても見られる場合があるため、必ずしも乳がんとは限りません。しかし、左右の乳房の形が異なるようであれば、検査を受けて乳がんか否かを確認しましょう。

乳がんの早期発見するためのポイント

乳がんは早期発見・早期治療が非常に大切です。日頃から以下の習慣を取り入れることで、早期発見に繋げられる可能性があります。

定期的に乳がん検診を受ける

早期発見するうえで最も重要なのは、定期的に乳がん検診を受けることです。特に日本では40歳以上の女性に対して検診マンモグラフィが推奨されています。
乳がん検診は人間ドックなどの任意検診でも受けられますが、市町村が提供している乳がん検診であれば安価でチェック可能です。対象年齢や一部負担金は自治体によって異なるため、お住まいの市町村のホームページをご確認ください。

日ごろから自身の乳房をチェックする

検診以外にも、日ごろから自身の乳房を見たり触ったりしてチェックする習慣を心がけましょう。特に、40歳未満の方は勧められる検診方法がないため、セルフチェックが重要です。
自身の乳房の状態を意識し、感触に変化が見られたら早めに医療機関を受診してください。

「乳がんのしこり」についてよくある質問

ここまで乳がんのしこりなどを紹介しました。ここでは「乳がんのしこり」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんのしこりは乳房のどの辺りにできやすいですか?

寺田 満雄寺田 満雄 医師

乳がんのしこりができやすい場所は、乳頭を中心として乳房を十字に4等分した外側上部です。その他の場所も次の順番でできやすいとされています。
・ 外側上部 47.6%
・ 内側上部 23.5%
・ 外側下部 13.0%
・ 内側下部 6.8%
・ 乳輪部 6.1%

乳がんを疑うしこりに痛みはありますか?

寺田 満雄寺田 満雄 医師

がんが進行すると痛みを感じる場合はあるものの、早期の乳がんであれば痛みを伴うケースは少ないです。

乳房を触っても乳がんを疑うしこりがわからない場合はどのような検査を受ければよいでしょうか?

寺田 満雄寺田 満雄 医師

しこりなどの自覚症状がない乳がんも多くあります。そのために、乳がん検診があります。定期的に乳房専用のレントゲン写真であるマンモグラフィを受けましょう。検診の基本はマンモグラフィですが、あわせて乳房超音波検査を行うことも選択肢となります。

どれくらいのスピードで乳がんを疑うしこりは大きくなるのでしょうか?

寺田 満雄寺田 満雄 医師

乳がんのしこりは何年もの年月をかけて1センチの大きさになり、一般的には1年で2倍の大きさになるとされています。

編集部まとめ

乳房のしこりは良性腫瘍をはじめとした疾患でも発生しますが、乳がんとの判別には検査が必要です。仮に乳がんだった場合は、早期発見・早期治療が生存率を左右するため、しこりが見つかったら早めに外科・または乳腺外科を受診しましょう。
また、定期的な検診やセルフチェックも早期発見につながります。日ごろから自身の乳房を意識した生活を心がけてください。

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