「パーキンソン病の末期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!

パーキンソン病の症状とは?メディカルドック監修医が解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
※この記事はメディカルドックにて『「パーキンソン病の症状」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
目次 -INDEX-
「パーキンソン病」とは?
パーキンソン病とは、50-60歳代に多く発症する神経変性疾患です。
異常構造型のα-シニクレイン(アルファ-シヌクレイン)というタンパク質が脳や自律神経に蓄積して神経細胞が障害されることで発症すると考えられており、動作が遅くなったり、安静時に手が震えたり、小刻みな歩き方になったりします。日本での有病率は1000人に1~2人程度で、そのほとんどが50歳以上で発症します。加齢とともに発症しやすくなり、65歳以上では有病率は100人に1人程度となります。そのほとんどは、親族にパーキンソン病の方がいなくても発症します。
パーキンソン病は病気の進行とともに動きが緩慢になって、歩くことも困難になります。しかし、症状を抑える治療薬が数多く存在し、適切な診断・治療を受けることで普通の人と同じような生活ができることも少なくありません。パーキンソン病が心配な方は脳神経内科に受診しましょう。
パーキンソン病の末期症状
パーキンソン病は進行すると運動症状が悪化して歩行や日常生活動作が困難になるだけでなく、幻視や認知機能低下、不安などの非運動症状も出現します。
運動症状
代表的な症状で解説した無動・寡動、安静時振戦、固縮、姿勢反射障害が悪化し、細かい動作だけでなく、起き上がる、立ち上がるなどの動作も困難となります。また、体が傾いたら姿勢を戻せず、転倒を繰り返したり、嚥下や発声にかかわる筋の動きも悪くなることで嚥下障害や嗄声が出現したりします。
薬剤により症状は改善しますが、進行すると薬が効きすぎたり、すぐに効果がきれてしまったりと調整が困難となることもあります。薬を複数回に分けて服用することや、深部能刺激療法やデバイスを使用して薬剤を持続投与することなど侵襲性の高い治療が必要となることもあります。
幻視・認知機能低下・不安
運動症状だけでなく、精神症状や認知機能低下も問題となります。幻視は子供や知らない人の姿を見ることが多く、自宅内や庭などに知らない人が見えたりするようになります。認知機能低下が進行する前から症状が出現するため、本人が幻覚であると自覚していることも多いです。認知機能低下が進行するとその判断も困難となります。また病気の進行に伴って不安が強くなり、落ち込んで鬱状態となる、怒りっぽくなることも少なくありません。本人の訴えを否定せずに寄り添った対応をすることで、落ち着いた生活を送れることもありますが、家族と頻回に衝突するなど生活に支障がある場合には、脳神経内科、精神科、心療内科で相談しましょう。
パーキンソン病の進行度を示すホーン&ヤール分類とは?
パーキンソン病の重症度を表す評価手法にホーン・ヤール分類というものがあります。簡易に行える評価方法で、難病申請を行う際の重症度の指標にもなります。重症度がⅢ度以上であれば、難病申請を行うことができます。
Ⅰ度
左右のどちらかのみに安静時の震えや手足の動かしにくさがある状態です。細かい動作が難しい、動きに違和感があるなどの症状の自覚はあっても生活にほとんど支障がない程度の症状です。
Ⅱ度
両側に手足の動かしにくさなどの運動症状があるものの、姿勢反射障害はない状態です。全体的に動作が遅く、歩く際には小刻みな歩行となるなど、普段の生活に支障がでるようになり、可能な仕事の内容も限られるようになります。家事や買い物などの日常生活動作は大きな問題なく行うことができます。
Ⅲ度
体が傾いたら姿勢を戻せずに倒れてしまう、歩き出したら止まれないなどの姿勢反射障害はあるものの、自宅内での生活はなんとか一人で行える状態です。自宅内でも転びやすく、すべての動作に時間がかかり、外出が困難であるなど生活に大きな支障が生じます。
Ⅳ度
自力での生活は困難で食事やトイレなどに介助が必要となりますが、何とか一人で歩ける状態です。
Ⅴ度
立っていることも不可能となり、車いすやベッド上での生活を余儀なくされる状態です。
すぐに病院へ行くべき「パーキンソン病の症状」
ここまではパーキンソン病の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
前傾姿勢で小刻みな歩行をしている場合は、脳神経内科へ
パーキンソン病では首が下がったり、腰が曲がったりしやすく、歩行時に前傾姿勢になりがちです。また歩幅が小さくなり、小刻みな歩行となります。このような歩き方はパーキンソン病に特徴的なので、このような症状がある場合には脳神経内科に受診してください。
受診・予防の目安となる「パーキンソン病の症状」のセルフチェック法
- ・安静時に手や足にふるえがある場合
- ・歩く際に一歩目が出しにくいなど、動作の開始がしづらくなった場合
- ・方向転換時に足がすくんでしまう場合
「パーキンソン病の症状」についてよくある質問
ここまでパーキンソン病の症状などを紹介しました。ここでは「パーキンソン病の症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
パーキンソン病を発症した場合、どのような精神疾患が現れますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
パーキンソン病になると不安を感じやすくなり、うつ病を発症しやすくなります。不安により落ち着かなくなったり、気分が落ち込んでしまったり、何にも興味を示さず、楽しみも感じられなくなったりします。治療は抗うつ薬などによる薬物療法が中心となりますが、パーキンソン病に対しては、薬剤調整や認知行動療法などの非薬物的治療でも症状が改善することがあります。
編集部まとめ
パーキンソン病は、65歳以上では100人に1人の割合で患者がいると言われ、神経変性疾患の中では有病率の高い病気です。現時点で病気の進行を止めることはできませんが、症状を抑える治療への反応性は良好で、適切な治療により発症後も数年、長い方では10年を超えて、普通の人と変わらない生活ができることも少なくありません。初期症状は年のせいと思ってしまうようなものもありますが、安静時に手が震えたり、動きが遅くなったり、歩幅が小さくなったりした場合には脳神経内科に受診するようにしましょう。
「パーキンソン病の症状」と関連する病気
「パーキンソン病の症状」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
脳神経科の病気
- 本態性振戦
- 進行性核上性麻痺
- 多系統萎縮症
- 大脳基底核変性症
- 脳血管性パーキンソニズム
- 薬剤性パーキンソニズム
- レビー小体型認知症
- 正常圧水頭症
体の動きの悪化は加齢とともに徐々に悪化することもあるため、病的かどうかについては自己判断が難しい可能性があります。数ヶ月くらいの早い経過で症状が悪化する場合には、検査することをお勧めします。
「パーキンソン病の症状」と関連する症状
「パーキンソン病の症状」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
ふるえの症状をはじめとして体の動きに気になる場合だけではなく、便状や嗅覚の睡眠時の異常などが持続している場合には、早めに医療機関で相談することをお勧めします。
参考文献