血友病とは?遺伝する病気?症状・原因・診断・治療方法
血友病とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
血友病とは
血友病とは血が止まりにくい病気です。出血が起こったとき、通常は以下のような流れで止血が行われます。
- 血管が収縮する
- 血小板が出血部位に集まり止血する
- 血液凝固因子が出血部位を固め、さらにしっかり止血する
つまり、出血を止めるには血管、血小板、血液凝固因子という3つの要素が揃っている必要があります。しかし、先天的に血液凝固因子が不足しており、血が止まりにくい状態となっているのが血友病です。
血友病とは、出血した時に血を止める働きに必要な「凝固因子」の量が、生まれつき(先天性)少ないか、あるいは働きが悪い病気です。一旦出血が始まると、血液が固まりにくく、出血が止まりにくくなります。血友病には、血友病A(凝固第VIII(8)因子が不足している)と、血友病B(凝固第IX(9)因子が不足している)の2種類があります。血友病Aの方が多く、全体の80%程度を占めます。遺伝する病気であるため、患者さんの約70%はご家族も発症されていますが、残りの約30%はご家族が発症されておらず、突然変異による発症すると考えられています。
2019年の調査では、日本国内の血友病患者さんは約6,600人であると報告されています。
血友病の症状
血友病の主な症状は出血ですが、鼻血や皮膚からの出血というわかりやすいものよりは、体内でひっそりと起こる出血の方が多いです。血友病における出血として代表的なのは以下の通りです。
- 関節における出血
- 筋肉における出血
- 脳出血
- 口腔内出血
- 消化管出血
出血が続くと痛みが出るだけでなく、組織が破壊されることで炎症を起こしたり関節を動かしづらくなったりすることもあります。中には後遺症が残ったりショック症状が起こったりすることもあり、部位によっては緊急対応が必要になることも少なくありません。
学童期になると肘関節内、膝関節内出血の頻度が増えてきます。鼻出血、血尿を認める場合もあります。
血友病の原因
血友病は「血液凝固因子」の異常によって起こります。血液凝固因子は血液を固める働きを持つタンパク質で13種類あり、一部が欠乏していたり上手く機能していなかったりすると血が止まりにくくなります。
なお、血友病は大きく2つに分けられ、「血液凝固第8因子」が原因であるものを血友病A、「血液凝固第9因子」が原因であるものを血友病Bと呼びます。
血友病は遺伝性の病気ではありますが、例えば両親や兄弟・姉妹に血友病患者がいなくても突然変異により起こることもあります。
性染色体は、男性はXY、女性はXXの組み合わせを持っていますが、男性はX染色体が1つしかないので、遺伝子に異常があると血友病の症状が出ます。
一方で、女性はX染色体が2つあるため、どちらか片方が異常でも、もう一つが正常に働くために症状が出にくくなります。そのため、男性に多くみられる病気です。
血友病の検査法
血友病の診断には、以下3つの検査が行われます。
- 血小板の数
- プロトロンビン時間
- 活性化部分トロンボプラスチン時間
「プロトロンビン時間」と「活性化部分トロンボプラスチン時間」はいずれも、採血で得た血液が固まるまでの時間を測る検査です。「活性化部分トロンボプラスチン時間」において、正常より時間がかかっている場合に血友病が疑われます。
活性化部分トロンボプラスチン時間により血友病が疑われると、次に血液凝固因子がどの程度活動できているかの検査も行います。しっかり活動できていれば100%という結果が出ますが、血液凝固第8因子の活動が正常の40%未満だった場合、血友病Aと診断されます。また血液凝固第9因子の活動が正常の40%未満だった場合、血友病Bと診断されます。
血液検査で診断されます。血小板数やプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定し、APTTのみが延長していれば血友病が疑われます。
さらに、凝固因子活性(凝固第VIII因子または第IX因子活性)が低下(40%未満)していれば血友病と診断されます。
凝固因子活性値により重症度が決められており、1%未満が重症、1%以上5%未満が中等症、5%以上が軽症です。重症度を決定する場合には、複数回検査を行いその最低値で決めます。
血友病Aの場合は類縁疾患のフォンヴィレブランド病と鑑別する必要があります。遺伝子解析による診断も一部の専門施設で行われています。インヒビターと言われる凝固因子に対する抗体が作られる場合があり、必要時にはインヒビター検査を行います。
血友病の治療方法
血友病の方が出血した場合には、圧迫止血をしっかり行います。小さな傷でも傷口を清潔にしてからしっかり圧迫止血を行う必要があります。鼻血のように目に見える出血だけでなく体内で出血が起こっている可能性も大いにあるため、頭部などけがをした部位によっては緊急対応が必要になります。
なお出血が止まらないときには血液凝固第8因子や血液凝固第9因子といった、不足している血液凝固因子を補充するための注射を行います。
不足している第VIII、第IX因子を濃縮した製剤を注射して補う補充療法を行います。定期的に注射することで、出血しない様にする予防的治療が基本となります。
定期的な注射をしていても出血した場合には、出来るだけ速やかに凝固因子濃縮製剤を追加注射して止血する必要があります。インヒビターとは、血液凝固因子を中和して働きを悪くする物質のことですが、インヒビターができた場合は、第VIII因子、第IX因子濃縮製剤が効かなくなります。ほとんどが、初回輸注後6ヶ月~1年以内、または輸注回数20回以内に発生します。一旦発生しても、自然に消えてしまう場合もありますが、ずっと消えない場合もあります。
インヒビターを消すために、免疫寛容療法が行われる場合もあります。患者さん本人もしくは家族がこれらの治療薬を投与する家庭治療が認められているので、その技術を習得すれば出血のたびに病院を受診する必要はありません。
血友病の予防方法
出血の予防方法として、あらかじめ注射をする方法もあります。例えば、運動会や遠足への参加や、歯科における抜歯などを受けるときには、出血が予想されるため当日の朝などにあらかじめ注射をし、血液凝固因子の補充をしておきます。
その他出血時や予定に関係なく、定期的に注射を受ける方法もあります。定期的に注射をする場合、血友病Aでは週に3回、血友病Bでは週2回が目安です。注射部位は手の甲や肘などで、毎回病院へ行く必要はありません。医師から許可が出れば、自宅で行うことも可能です。